第27話 好きの種類(ギャルside)

 今日はいよいよ、文化祭当日だ。

 いつもより早く学校へ到着した。


 部屋の飾り付けはもう終わっているし、後は着替えるだけ。

 ドリンクやフードの準備は、スタッフ班がやってくれている。


 私のシフトは、今日の午前と明日の午後。

 委員長と全く同じシフトになったのは、もちろん偶然なんかじゃない。


 着替えを持ってきて更衣室へ向かう。

 更衣室は、文化祭の影響でかなり混雑していた。


「あ」


 委員長がいる。

 私はなんとか人の隙間をぬって、委員長の隣にいった。


「おはよう、委員長!」

「おはようございます、天野さん」


 委員長もまだきたばかりなのか、制服姿だ。

 でも、メイクは終わっている。


 委員長、手先器用だな……。


 前に、私がしてあげた通りのメイクだ。

 慣れていないだろうに、完璧である。


「委員長、メイクいい感じだね」

「天野さんも、可愛い」


 ふふっ、と委員長は優しく微笑んだ。


 その笑い方、ちょっと狡いって……。


 なんとなく目を逸らして着替えを始める。更衣室は混雑しているから、あまり長居はできない。


 今日は、コスプレ用にいつもとは違うメイクをしてきた。

 いちごの時とは髪色も違うし、カラコンも違う。


 でも、めちゃくちゃ甘くて可愛い顔を作ったつもり。


 天野翼らしくない、なんてからかってくる人もいるかもしれない。

 でも、大丈夫だ。

 委員長が、私のことを可愛いって褒めてくれるだろうから。





「天野さん、天才過ぎない?」

「何の?」

「可愛いの天才」


 あ、これオタクモードに入った委員長だ……と一瞬で分かるくらいには早口だ。

 着替えが終わった私を見て、委員長は口元をおさえながらにやついた。


 嬉しい……けど、ちょっと残念な気もするな。

 せっかくとびきり格好いいのに、にやにやしてるんだもん。


 私と委員長は、天使と悪魔のコスプレだ。


 私は真っ白なワンピースに、大きな白い羽根が生えたもの。

 それっぽく見えるように、天使の輪っかのカチューシャもつけてみた。


 髪は地毛のまま。

 金髪っていうのが、かなり天使のイメージには合う気がする。


 委員長は、私と正反対に真っ黒の服だ。

 スーツのような服で、袖口にだけアクセントのように紫の刺繍が入っている。

 そしてもちろん背中には、大きな真っ黒の羽根。


「しゃ、写真撮っていい?」

「いいけど、ここじゃだめ」


 ここは更衣室だ。他の人が着替えているところが写り込んでしまうかもしれない。

 委員長がそんなことを忘れるくらい興奮してくれたのは、やっぱり嬉しい。


 可愛い子が好きって言ってるけど、その好きって、どういう好きなんだろう。


 アイドルが好き! っていうのと同じ感覚? それとも、恋愛的に好きってこと?


 そもそも私の好きだって、どういう好きなのかまだ曖昧だ。

 委員長のことが好き。その事実には気づいてしまったけれど、今はまだ、好きの種類が明確なわけじゃない。


「天野さん?」

「ごめん、ぼーっとしちゃって。更衣室出よっか」


 慌てて荷物をまとめ、更衣室を出る。


 今はとりあえず、文化祭に集中しなきゃ。

 文化祭実行委員として、なんやかんや頑張ってきたわけだし。


 好きの種類についてはまた、文化祭が終わった後にゆっくり考えよう。


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