23.パーティ参加


 リーダーのフェルナンド、サブリーダーのリディア、マチアス、アーロン、エリザの5人。

 それにフレデリカとレオも自己紹介し、合わせて7人のパーティとなった。

 既に顔見知りで、何度も言葉を交わした間柄なので挨拶もそこそこに今後の予定を打ち合わせする。


 ランクとパーティの人数的にそれなりに規模の大きなCランク相当のクエストも受けられるようになり、もっと大きなクエストを受ける予定らしい。


 その前にまずはお互いの実力を知る為にDランク相当のクエストから始める事となった。


 受付にて手頃なクエストを探すとオークの中集団の討伐依頼がフェルナンドの目につく。

 オークが村の近くに出没し、調査を行うとオーク十数体程度の集団が村の近くの森を住処としていて、それの討伐依頼となる。

 受付で依頼を受ける事を報告し、パーティメンバーへ告げる。


「出発は明日で良いな?待ち合わせ場所は此処、冒険者ギルドで明朝8時だ、馬で移動する。レオ達は馬を、……そうだな、マチアス、2人に予算内で出来るだけ良い馬を探してくれ」


「おう、任された、2人はこの後空けとけよ」


「とうとう馬か……お金足りるかな?」


「2人なら足りるだろ、散財はして無い……はず」


「よし、残りは解散だ、今日中に準備して英気を養っておけよ!」


 その後、フレデリカとレオ、マチアスの3人に何故かリディアも加わって馬購入するために歩き出した。


「ねえ、馬は何頭買うつもり?2頭?1頭?」


 リディアに尋ねられたフレデリカとレオは即答する。


「1頭で良いと思う」

「1頭で良いだろ、勿体ないし」


「だよねー」


 リディアの嬉しそうな顔を見てゲンナリするマチアス、一応2人に注意を促しておく。


「念の為に言っておくと、2頭購入がお勧めだ、まず第一に軽い方が馬の疲労が少なくて済む事、そして行動の制限が少なくなるし、万が一の時に片方を食料に出来るしな」


 レオはそれを聞いてなるほどと頷く。

 しかしフレデリカはあっさりしたものだった。


「アドバイスさんきゅーなマチアス、だけど1頭で良い、確かに重量はあるかも知れないけど幸いな事に俺もレオも装備は軽いし二人一組のメリットの方が大きいと思う」


「……そうか、納得して買うなら良いんだけどよ」


 馬厩舎に付き、予算に収まる範囲でマチアスが馬を見定め、2人は納得して購入した。


◇◆◇


 今拠点としている宿には厩が無く、宿を変える必要があった。チェックアウトを済ませた2人はリディアと同じ宿を選び、ツインの部屋をとった。


 フレデリカは口では節約だと言っているが当然それだけが理由ではない。

 今度はレオも反対しなかった、今ならその理由が分かっているからだ。


 フレデリカは2人で活動したEランクの3カ月間、相変わらずレオが居る場所で平然と着替えをしていた、レオも視線を逸らしたり、背中を向けたりはするのだが始めの頃のように部屋を出たり距離を取ったりはしない。


 2人がそのように考える事になったのは理由があった、特にレオは考え方をあらためさせられた。


 2人で活動し始めた頃、クエスト帰りに休憩でフレデリカが水浴びをしている時に賊に襲われた事がある。その時のレオは恥ずかしがって距離を取って見張りをしていたので賊の接近に気付けなかったのだ。

 結果的には事なきを得たが、フレデリカには攻撃するスキルが無く、また物理的な攻撃力も無いに等しい、フレデリカの助けを求める声を聞いたレオが駆けつけるまで【白の防壁】で時間を稼ぐ事しか出来ないでいた。


 それ以来、フレデリカ自身も着替えや食事など無防備になる事はレオのそばですべきだと思っているし、元々レオになら裸を見られても気にならないと思っている。

 それは別にレオを舐めているだとか男として見ていないだとかでは無く、冒険者として活動する内に単独行動の危険さを理解するようになり、親友のレオのそばにいた方が安全であると理解したからだ。

 何か起きてもレオならなんとかしてくれる、全幅の信頼を寄せるから自分の無防備な姿を晒せる。

 レオもフレデリカが無防備な時は出来るだけフレデリカから離れないようにしていた。


 馬購入にしても口にはしないが理由の一つがそれだった。


 そんな事がありフレデリカはこの3ヶ月間で更にレオへの信頼を深め、無意識の内にレオに依存するようになっていた。

 

◇◆◇


 翌日、パーティ全員が冒険者ギルドに揃い、オーク討伐に出発した。

 行きは休憩を挟みつつ馬で駆け、翌日夜に村へ到着した。


 フェルナンドとマチアスの2人で村長への面通しや打ち合わせを行い、フレデリカやリディア達は酒場で食事をとりながらゆっくりしていた。


「そういやアーロンは?姿が見えないけど」


 フレデリカが辺りをキョロキョロと見回す、さっきまで同じテーブルにいたはずのアーロンがいつの間にか居ない事に気付いたのだ。

 リディアがため息を吐きつつそれに応える


「あいつは多分そこらへんで女の子にでも声かけてんでしょ、相変わらずね」


「本当にアーロンさんには困りますね、村の女性に迷惑をかけなければ良いんですけど」


 エリザが頬に手を当てつつアーロンのターゲットになった人を心配する。

 しかしリディアはそれによって自分達パーティの評判が下がる事の方が心配のようだ。


「アーロンが言うにはトラブルが起きない相手かちゃんと見極めてるって言ってるけど怪しいもんよね、パーティの評判を下げなきゃ良いけど」


「アーロンは外でも相変わらずなんだな、少し安心したと言うかなんというか」


「クエストの最中は止めて欲しい所だけどね、レオはああなっちゃダメだからね、……って心配するまでもないか」


「し、しませんよそんな事!」


 急に話を振られたレオは慌てて否定しチラリとフレデリカを見る、揶揄ったリディアも慌てるレオとフレデリカを交互に見る。

 しかし視線を受けたフレデリカはキョトンとし、慌てて見当違いな反論をした。


「え?いやいや俺だってそんな事しないぞ!女に声を掛けるなんて!」


 リディアは、噂に聞くような進展はしてなさそうだなー、と少しガッカリし、これから進展すると考え、楽しみとした。


 しかしこのやり取りを不思議に思う者がいた、エリザである、エリザはリディアと違い他の人達と同じ情報しか持ってない、つまりレオとフレデリカという期待の若手である2人の冒険者が付き合ってる、という誤った情報である。


「何言ってるのリディアは、2人は恋人同士なんだから、そんな事を言ったらレオくんとフレデリカちゃんに悪いよ」


 エリザの認識としては、レオは可愛らしい見た目で優しい物腰柔らかな男の子で、フレデリカは綺麗な金髪と美貌を持つ口は悪いけど真っ直ぐな女の子で、お似合いのカップル、である。

 街の冒険者達は概ねこの認識となっていた。


「え!ぼ、僕らは付き合ってないよ!ね、フレデリカ」


「え?……あー、んー、………想像にお任せする」


「え!?」


「え!?フレデリカ?」


「良いんだよ!今はこれで!」


 レオははっきりと否定し、フレデリカは曖昧に返事をした。

 レオはその返事に驚き、フレデリカはそれで良いと返して終わらせた。

 エリザはしっくりこない感じを受けたが、それより大きな反応を示したのはリディアである、そのフレデリカの反応は明らかに以前とは違う物だった。


 もしかして、もしかして!?そう思うリディアであるが実は違う。


 これにもちゃんと理由があって、街でそれ目的でフレデリカに声を掛けられる事にうんざりし、更にレオは恋人じゃないと否定すると余計に絡んでくるようになる、という事だ。

 それならいっそ恋人同士という事にしておけばそこで終わらせられるのではないかと、そう思ったのだった。

 とはいえ、そこまで考えた頃にはレオと手を繋ぐようになり、それからは以前ほど絡まれなくなってきたので、それをレオに話す事も無く、そう言う事をする必要も余り無かったのである。


 そして恋人同士と言う事は嘘であってもいざ口にしようとするとそれは恥ずかしく、想像以上に勇気が必要で、男としての尊厳を捨てる必要があり、まだ吹っ切れていないフレデリカはあのような曖昧な答えになってしまったのである。


「うーん、なんだかよく分からないけど、困った事があったらなんでも相談してね」


 優しく言うエリザに、やはり曖昧な笑顔で返す事しか出来ないフレデリカであった。

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