22.Eランク冒険者
フレデリカとレオ、2人だけでのEランク冒険者としての活動が再開された。
宿を1部屋借りて、そこを拠点とした。
レオは2部屋に分けようと提案したのだがフレデリカが節約のためとツインの部屋を強引に借りた。
2人でEランククエストをこなす日々、日帰りや1泊野宿する程度のクエストが大半ではあったがクエスト外での討伐も多く、EランクPTとして目立つようになっていった。
特にフレデリカはその美しい金髪と美貌で男性冒険者達には早々と認知される存在となり、"金髪のフレデリカ"と呼ばれるようになった。
次第にレオと合わせて実力も持ち合わせている事も知られ、Eランクでは2人セットで一目置かれる存在となる。
傍から見れば2人の距離感は付き合ってるようにしか見えず、常に傍らに居るレオへの嫉妬が少なからずあった。
一部レオの存在をものともしない男達が堂々とレオの前でフレデリカに声を掛け、クエストや食事の誘いを掛けてくる、当然にべもなく断られるのだが、諦めの悪い男達は何度も声を掛けてきて断られる事に興奮する者もいるとか。
フレデリカは人の性格をよく見ているようで、しっかりした者であれば態度が軟化し、それなりに仲良く会話が出来るようになった幸せ者もいるとか。
中には力ずくでフレデリカを奪おうと考える者も居ないではないがフレデリカ人気が想像以上にあり、レオの出番無くギャラリーにボコられたりする事もあるという。
フレデリカのカラッとした性格や、男心を理解出来る部分が好まれていてレオが居るにも関わらず男性人気が上昇中のようだ。
とはいえフレデリカはレオしか見ておらず、話しかける相手は基本的にレオ、心を許す相手もレオだけ、という話だ。
そしてレオはというとフレデリカの指導もあって着実に剣の腕を上げていた。
その上達ぶりは凄まじく、Cランクとなったリディアと互角、場合によっては打ち勝つ、というほどまでとなった。
フレデリカは男だった時の自分を越えたと思っているがレオはそう思っておらず、まだまだ追いつけていない、と修練を欠かさなかった。
その姿勢こそがフレデリカには男の時から眩しく見えて好ましい一面だった、女となった今でも基本的には変わらないつもりだが、今の感情の意味は男の時と変わりつつあり、それをまだ自覚するまででは無かった。
レオの実力は冒険者達も認めるところにあって、それに加え茶色の天パと可愛らしいマスクに物腰の柔らかさから一部の女性から人気が出始めているとか。
◇◆◇
フレデリカとレオは今まで距離感は近いが身体的接触が少なかった、それがある時期から2人に変化が起こった。
2人が手を繋ぐようになったのだ。
ある者は街へ入ってくる2人を見て、声を上げた。
手を繋いで歩く2人、それは一部の冒険者にとっては絶望的な光景だった、とうとう一線を越えたのかと、騒ぎにもなったほどだ。
流石にギルド内で手を繋ぐ事は無いようだが、それも時間の問題かもしれない、と。
大っぴらに見せつけられたら脳が破壊される者が出る可能性を危惧されるほどだった。
当然、一線を越えたとかそういう事が理由では無い。
2人は相変わらず感情はともかくその関係に進展は無い、では何故手を繋ぐようになったのか。
それはゴブリン討伐のクエストで大量のゴブリンに囲まれた時の事だった。
ゴブリンはフレデリカを見ると興奮し、邪悪な眼差しがより邪な表情になる。
それはフレデリカには怖くも感じるし、全て殺したくなる感情が生まれる。
なので1匹残らずの精神で深追いし、結果的に藪をつついて蛇を出す事になったのだ。
興奮し、下卑た表情のゴブリンに囲まれて、いくらレオとフレデリカでもかなり危険な状況だった。
フレデリカは自分とレオの身を守るように【白の防壁】を展開し、【身体強化】で強化する。
【白の防壁】のカウンター効果は魔物の突進など全身でぶつかって来る相手には非常に有効だが、武器で攻撃してくる相手には効果が薄い事が判明した。
武器で攻撃された場合は武器に跳ね返るのだ、だから手が痺れる程度で済んでしまう、また全身での突進と違って威力も足りない。
以上の事からあくまで防壁は身を守る物という認識に改めている。
結果的には無事にゴブリンを殲滅させて事なきを得るのだが、30分以上の絶え間ない戦闘が終わった瞬間、フレデリカは疲労でしゃがみ込み、動けないでいた。
それは【治癒】を使った時ほどでは無いにせよ、スキルでの消耗に間違いなかった。
その時にレオが取った行動がフレデリカの手を取り励ます事だった。
そこはゴブリンの巣の近くであり、長居する事は危険だった。
だからレオはフレデリカを背負い移動しようと思ってフレデリカの手を取ったのだった。
フレデリカの手と取った時、つまり"手を繋いだ時"、それは起こった。
フレデリカの疲労が、消耗が、回復していくのを感じた。
それを感じたフレデリカはそのまま両手でレオの手を握るとハッキリと回復していくのを感じた。
そのままレオにお姫様抱っこで抱えて貰い、そのレオの手を握りしめたのだった。
それ以後は戦闘後に手を繋ぐようになったが、ある時に、普段も繋いでいるとフレデリカの元気や身体の調子が良くなる事に気付き、段々と普段から手を繋ぐ事が普通となっていったのだった。
ちなみにそれでレオは僅かながらも消耗しているのだが、フレデリカと手を繋いでいる嬉しさと充足感で消耗している以上に精神的に回復出来ていて気にならなかった。
また、軽度の【治癒】なら殆ど消耗しないが、それなりの損傷を治す場合は手を繋ぐ事で少し時間は掛かるものの回復する事が出来た。
2人クエストでそこまでの損傷を負うを事は結果的には一度しか無かったのだが。
◇◆◇
2人の冒険者としての活動を始めて約3ヶ月が経った。
リディアが心配していたような事は幸いな事に起きず、結果から見れば平穏無事にクエストを難なくこなしたように見えた。
当然、レオの必死の修練やフレデリカのスキル練度の向上などがあったのは言うまでも無いが。
リディアとマチアスは3ヶ月前のソーンバッファロー討伐後にCランク昇格試験を受け、無事にCランク冒険者へとなっていた。
そして今日、フレデリカとレオの2人はDランク昇格試験を受ける条件を満たした。
早くても半年、概ね1年以上はEランクでもがくものだが、既にCランク相当の腕前を持つレオとスキル効果が強いフレデリカはそれに加え、毎日のようにクエストをこなし、さらに文字の読み書き、簡単な算術もこなせるとあれば早々にランクが上がると見ていた人が大半だった。
レオは2人きりでもっとゆっくりEランクに居ても良いという思いはあったがフレデリカの為にも早くランクを上げたい気持ちもあり、無理をしない程度に毎日のようにクエストをこなしていた。
2人は冒険者ギルドに行き、受付のジーナに声を掛け昇格試験を受ける旨を伝えると奥の部屋へ通される。
その時、冒険者達が座るテーブルからは頑張れよ、待ってるぞ、などの声援があった。
座って待っていると試験官としてCランク冒険者のアントニオが入ってくる。
まずは読み書きの筆記テストから始まり、余裕で2人は満点に近い回答だった。
次にクエスト達成数やクエストの評価、クエスト以外での討伐評価が行われた。
結果としては余裕の合格、文句無しの内容であった。
こうして晴れて3ヶ月というこの街での最速記録をもってDランク昇格を果たした。
それもたった2人で、というオマケ付き。
冒険者の証をDランクの物へと交換が終わり、部屋を出ると、そこにはリディアとマチアス、そしてそのパーティの面々が待ち構えていた。
「Dランクおめでとう、レオ!フレデリカ!これで今日から一緒のパーティだね!」
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