第3話 何気ない放課後

 放課後、帰り支度をしていたら、ジャージに着替えた雄大がやったきた。


「菓子くれ」

「おやつを強請りにくるのやめな?」


 言われたままにお菓子袋からチョコレートを取りだして手渡す。手慣れたように大きな手が受け取った。個梱包なので封を開けて食べている。


「これから部活なのに食べていいの?」

「今日は体育館つかえねーの」

「部活ないってこと?」

「ロードワークとか、そんな感じ」


 なおさらチョコ食べてていいのかと不思議に思う。あの厳格な監督や顧問が許すとは思えない。


「部活に戻った方がいいんじゃない?」

「まだ部活開始の時間じゃねぇよ」


 さようでございますか。

 なんとなく様子を見ていると、次々とお菓子袋から個梱包のチョコを取り出している。流石に10個目になると食べすぎだとも思う。手を掴んで止めると、まじまじと眺められた。


「ちっせぇ手」

「お黙り?!」


 男女の差もあるし、相手は男子バレー部だ。こちとら手袋のサイズはSという最小サイズ。サイズの差なんて、比べるべくもない。失礼なことを言う奴にやるお菓子はないと、お菓子袋を取り上げて鞄をしまう。


「私はそろそろ放送室行くから、雄大も部活行きなよ」

「へいへい」


 めんどそうな顔である。部活推薦なのにそんな感じでいいのか。真面目に部活しないと、ただでさえ授業中に寝たりして内心悪いのに。大丈夫か。


「それじゃ、また明日ね」

「ん。じゃあな」


 のっそりと鞄を持ち、雄大も部活に行くようだ。私はさっさと鞄を持って放送室へと向かった。

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