第15話 中層入り
私達が転移した階層はやはり31層だった。
武蔵さん達の後を着いて行って、30層に上がる階段を見た時は、心底安堵した。
「ここでちょっと待っててくれ。上層行きの転移陣を探してくるから」
「この階段を上がって帰っちゃダメなんですか?」
「ここから上は山フィールドだぜ?上層探索者じゃ体力的にキツいだろ。それに、転移陣ってのは行きと帰りがセットであるもんだ。あんたらが転移してきた辺りを探せば帰りの転移陣もすぐに見つかるはずだ」
ということで、私達は階段で待機。
彼らに転移してきた場所を教えて、その周辺を探ってもらった。
そして、数十分後には上層行きの転移陣が見つかった。
それを踏んで転移してみると、やはり4層の林に戻った。
「助けていただいてありがとうございます」
「いいってことよ!実はな、俺らも31層行き転移陣は探してたんだ。毎回山越えして雪フィールドまで行くのがもう大変で大変で…」
『百鬼夜行』の人達は皆んな親切で、特に救助費用を請求されたりもしなかった。
全員で1階受付まで戻って、受付嬢さんに発見した転移陣の位置を伝えたら、それで解散となった。
未発見転移罠を発見した報酬とかも特に無かったけれど、まあ無事に帰ってこれただけで良しとしよう。
インテリジェンスソードとレアドロップと未発見転移罠の発見で、私達の幸運は底を着いたらしかった。
その後も毎日のようにダンジョン探索を行ったが、特筆するようなイベントは何も起こらず、ひたすら魔物を倒しては魔石を売って地道に引越し資金を稼いでいった。
「もう10層まで到達したんですね!」
探索を終えて受付に魔石を持っていくと、馴染みの受付嬢さんからそう言われた。
私達が探索者になってから約2ヶ月が経過していた。
「結構早い方ですか?」
「まあまあです!」
「まあまあかあ」
結構なペースで進んできたつもりだったが、まだまだ上には上がいるらしい。
「でも、10層まで行けるってことは探索者の才能があるってことですよ!才能無い人は絶対そこまで続きませんから」
「まあ、魔石安いですしね」
熊のような大きさの魔物を命懸けで倒しても、魔石の買取価格は1000円前後。
とてもじゃないが割に合っていない。
才能が無いと続かないというのは、まあそうだろう。
「あはは…前はもう少し高かったんですけどね…」
探索が進んで、魔石の流通量が増えると、上層の低品質な魔石はどうしても安くなってしまうらしい。
「あ、でも、流石に今より下がることはないと思いますので…」
「今より値下げされたら専業探索者なんかできなくなりますよ」
「そうしたら、魔物が溢れて日本崩壊か?」
「あ、あはは…相場決めてる偉い人達がまともな頭持ってるといいですよね…」
翌日もダンジョン入りし、10層で魔物を狩った。
そして、『ゴブリンシャーマン』を倒したところでレベルが上がった。
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名 前:ライ
レベル:15(+1)
体 力:34
攻撃力:34
防御力:34
素早さ:33
魔 力:0/0
運 :10
S P :7(+7)
スキル:剛力、破壊、雷弾
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:セイラ
レベル:15(+1)
体 力:28
攻撃力:25
防御力:40
素早さ:29
魔 力:5/10
運 :15
S P :7(+7)
スキル:テイム、バリア、ヒール
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:ガル
レベル:15(+1)
体 力:35(+3)
攻撃力:33(+3)
防御力:20
素早さ:40
魔 力:0/0
運 :5
S P :0(-6)
スキル:爪撃、鋼の牙、身体強化
ーーーーーーーーーーーーー
「よし、これで11層に行けるな!」
「新しいスキルも覚えてるね」
ライの新スキルは中・遠距離用の雷魔法攻撃。
私は回復魔法。
ガルの『身体強化』は自分の体力と攻撃力と防御力と素早さが+3されるバフスキルだった。
「ついに、俺も魔力にSPを振る時が来た!」
念願叶って魔法系スキルを獲得したライは大層喜んでいた。
「全部魔力に振っちゃお!」
「私も魔力優先かな。回復魔法は使う機会多そう」
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:ライ
レベル:15
体 力:34
攻撃力:34
防御力:34
素早さ:33
魔 力:7/7(+7)
運 :10
S P :0(-7)
スキル:剛力、破壊、雷弾
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:セイラ
レベル:15
体 力:30(+2)
攻撃力:25
防御力:40
素早さ:30(+1)
魔 力:9/14(+4)
運 :15
S P :0(-7)
スキル:テイム、バリア、ヒール
ーーーーーーーーーーーーー
ステ振り後、私達は11層行きの階段を降りた。
11層は景色がガラリと変わって、荒野フィールドとなっていた。
赤茶色の地面がどこまでも続き、背の低い木がポツポツと生えている。
低めの岩山なんかもあるけれど、基本的には平坦なフィールドで、見通しはいい。
「ここからは中層か」
「気を引き締めていこうね」
「おお!」
荒野を進んでいくと、遠くに真っ黒い馬が見えた。
「あれは…」
「目を合わせちゃダメ!ナイトメアだよ!」
「な、何だあの魔物!?こ、怖ええ!?」
『ナイトメア』は真っ黒い馬の魔物で、精神攻撃を得意としている。
目を合わせるだけで相手の恐怖心を刺激し、パニック状態にすることができるという。
「ライ、落ち着いて!目を見ちゃダメ!精神攻撃が…」
「精神攻撃!?マジかよ!あんな怖いのに更に精神攻撃まで使うのかよ!か、勝てるわけねえ!逃げよう!」
ダメか…。
静止が間に合わず目を見てしまったライは、完全に心を折られていた。
しかし、こんなこともあろうかと、事前に対処法は調べておいた。
正気に戻す方法はいくつかあるが、とりあえず1番穏当な方法から試すことにする。
「ライ、落ち着いて。大丈夫だから」
「セ、セイ!?」
「…精神攻撃、解けた?」
「え?ああ…何か、落ち着いたわ…」
強めに抱きしめたら、ライは正気に戻った。
よし、この方法は効くようだ。
(頭からポーションを浴びせるのが1番効くらしいけど、流石に勿体無い。ハグで済むなら、精神攻撃対策は基本的にこれでよさそうかな?)
ライを落ち着かせている間も、ナイトメアに動きはなかった。
私達全員に精神攻撃をかけてから動き出すつもりなのかもしれない。
「GARU…」
「ガル、大丈夫?」
声をかけると、ガルは弱々しい声で鳴いた。
今度はガルが精神攻撃を受けてしまったようだ。
ライ同様、ガルも抱きしめて落ち着かせる。
「よしよし、良い子良い子」
「精神攻撃か、厄介だな。こうなったら、俺の新技で遠距離から倒すしかないな!」
ライはウッキウキで腕を前に突き出して、『雷弾』を放つ構えをとった。
「あ、やべえ!また目見ちゃった!」
「ええ?また?」
「超怖ええ!どうしよう!?」
「仕方ないなあ…」
そう言って、私は6尺棒を振りかぶった。
「ライ、歯を食いしばって!」
「え?」
スッパーン!
「いってえ!?」
「正気に戻った?」
「も、戻ったけど…何故にケツバット…」
「引っ叩いても正気に戻る、ってネットで見たから」
「いや、実験かよ…」
「実際にやってみないと本当かどうか分からないし?」
中層からは精神攻撃持ちの魔物が増えるという。
早い段階で2パターンの検証ができたのは中々の収穫だ。
ナイトメアをどうにか倒したら、次は『低級悪魔』と遭遇した。
巨大な眼球が宙にフワフワと浮かんで寄ってくる。
「あいつも目を合わせたらダメだよ!」
「無理じゃね!?だって、あいつ全身目玉野郎じゃん!」
「ガル、いける?」
「GARU!」
ガルは頭を下げたまま、匂いで敵の位置を把握して攻撃に向かった。
大回りで低級悪魔の背後に近付き、前足を振るって『爪撃』を放つ。
低級悪魔は空中で回転して避けると、目玉はガルの方を向き、私達には背面側が向いた。
「目玉が向こう向きになった!」
「後ろ側は見ても大丈夫そうだね。今のうちに攻撃しよう」
「おお!」
前後から挟んで攻撃すれば、低級悪魔は比較的簡単に倒せた。
「低級悪魔の魔石ゲット!」
そんな感じで中層探索も順調に進んでいった。
16階層の砂漠フィールドに着くまでは…。
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