第4章【26層】2年後
第16話 ナンパ
3月末、未発見の転移罠を踏んだが特に問題なく生還。
4月、中層入り。
5月、懐に余裕ができたのでペット可の家に引っ越す。
8月〜翌年12月、16層からの砂漠フィールドでガルが大苦戦!
1月、ようやく砂漠越えを果たす。
色々やっているうちに、探索者になってから2年の月日が流れた。
そして、3年目の3月の今日。
「お姉さん、1人っすかあ?」
「よかったら俺らとパーティー組みません?」
『品川ダンジョン』管理センター1階受付で、私はナンパをされていた。
「…それ、私に言ってる?」
「お姉さん以外にいるわけないじゃないっすか!」
「お姉さん面白いっすね」
「珍しい…めったにナンパされないのに」
「えー!マジっすか!?」
「嘘でしょ?めちゃめちゃ美人なのに!」
ナンパ男は2人組で、私よりも若そうだった。
2人とも高校生くらいに見える。
今年に入ってからダンジョンに入れる年齢が引き下げられ、18歳未満立入禁止から15歳未満立入禁止となった。
それにより学生の探索者は一気に増えた。
「悪いけど、もう別のパーティーに入っているから」
「まじかー!残念だなあ!」
「でも、今は1人なんじゃないすか?暇なら俺らとどうすか?」
「今も1人じゃないけど?」
「え?またまた〜、どう見ても1人じゃ〜ん」
「もしかして、不思議系キャラすか〜?」
「ガル、起きて」
私は足元で寝ていたガルを起こした。
「GARURURU…!」
ガルは休んでいるところを起こされ、不機嫌そうに唸った。
「うお、ま、魔物!?」
「ひえっ!?」
私がナンパされない理由その①。
大体いつも
今回はガルに気付かずに声をかけてきたようだ。
「おい、俺の連れに何か用かよ」
「「ひえっ!?」」
更に、ライがトイレから戻ってきた。
私がナンパされない理由その②。
大斧を担いだ柄シャツ金髪高身長男といつも一緒にいるため、大抵の人はビビって近寄ってこない。
ライは不機嫌そうな顔でナンパ少年達を睨んでいる。
「「す、すんませんしたあ!」」
ナンパ少年達は怯えて逃げていった。
「全く…俺がちょっとトイレに行ってる間に…油断も隙もねえな」
「そんなに脅かさなくてもいいのに」
「ガル!お前、ちゃんと番犬やってろよな!」
ライがそう言うと、ガルは大きくあくびをした。
「この犬…」
「はいはい、喧嘩してないでダンジョン行くよー」
『品川ダンジョン』地下3層から転移陣を踏んで21層に出る。
21層から先は洞窟フィールドだ。
「お、偽石だ。倒していくか」
『偽石』は無数の石の集合体のような魔物だ。
普段は地面でじっとしているが、探索者が近付くとウゾウゾと動いて起き上がる。
複数の魔物のように見えるが、全部まとめて1体ということになっている。
推奨討伐レベルは23。
「ライ、任せていい?」
「任せろ!剛力!呼吸!」
ライは『呼吸』というスキルで大きく息を吸い、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアッ!!」
大斧による無呼吸ラッシュで偽石の体を全て粉砕した。
次に遭遇したのは『ポイズンスライム』だった。
「上から来るぞ!」
「バリア!バリア!」
紫色のスライムが洞窟の天井から奇襲攻撃を仕掛けてきた。
体液に毒性があるので、咄嗟にバリアを張って防いだ。
(うっ、2枚のバリアの隙間から毒液が漏れてくる!)
ポイズンスライムのゲル状の身体が平らなバリアの表面に広がっていく。
これはちょっと、相性が悪いか。
「散開!」
バリアの傘を捨てて全員その場から飛び退く。
「ライ!瓦礫を作って!」
「破壊!」
「転送!」
ライが『破壊』で洞窟の壁を割って瓦礫を作り、それを私が『転送』でポイズンスライムの頭上に飛ばした。
『転送』は40kgまでの無機物を5m以内の見える場所に瞬間移動させることができるスキルだ。
魔力消費は3。
「潰れて!」
狙い通り、『転送』させた瓦礫のいずれかが急所である核を潰し、ポイズンスライムは消滅した。
更に進んでいくと、空中で明滅する光を見つけた。
「まずい!ヒカリバエだ!」
私達が気付くのとほぼ同時に『ヒカリバエ』は閃光を発した。
「くっ!」
「目が…!」
薄暗い洞窟の中で強烈な光を出し、相手の目を眩ませて襲いかかるのがヒカリバエの基本戦術。
私達はそれにまんまと引っかかってしまった。
だが、
「GARU!!」
視覚よりも嗅覚や聴覚が発達しているガルは閃光後すぐに体勢を立て直し、向かってきた光る巨大蠅を鋭い爪で切り裂いた。
(※なお、視力を奪われていたため戦闘後の状況からの推測を多分に含むものとする)
「ありがとう、ガル!」
ガルは私達の視力が戻るのをおすわりをして待っていた。
足元にはヒカリバエの魔石も置いてある。
「ライ、どうしよう!うちの子が偉過ぎる!」
「よかったネ」
私はガルを思いっきり撫でて褒めた。
よーしよしよしよし!
探索を続け、22層で『シャドウ』という影のような魔物を倒したところで、23層行きの階段にたどり着いた。
そこで一旦休憩を挟む。
「今日は面倒な魔物が多かったな」
「洞窟フィールドは変わり種が多めだよね」
「ボスの
『オーガ』も『アイアンゴーレム』も近接物理型の魔物。
絡め手を使うタイプではない。
「でも、オーガも油断できないけどね」
「まあな。もう中層も終盤だしな」
中層は11層から25層まで。
21層から25層の洞窟フィールドは中層のラストステージだ。
出てくる魔物は一癖ある魔物ばかり。
「いっそのこと、15層辺りまで戻っちゃおうか?」
中層の魔石はそこそこの値段になる。
15層の魔石でも1個2,000円前後で売れるので、今の私達なら安全にそこそこの収入が手に入る。
1日10個集めれば2万円の収入。
1ヶ月のうち20日間ダンジョンに潜れば月収40万円になる。
これは一般企業の係長くらいの収入だ。
「でも、ここまできたら下層も見たくね?」
「まあ、そうだね」
現在の私達のレベルは29。
あと1レベで30になり、25層のボスである『ワイバーン』の推奨討伐レベルに到達する。
25層は『ボス部屋』という特殊な階層。
25層にはボスであるワイバーンが1体いるだけ。
そのワイバーンに勝てば26層へ降りて行ける。
つまり、私達は『下層』到達目前の状態なのだ。
「下層の魔石っていくらくらいだ?」
「26層で1個5,000円くらい」
「魔石1個5,000円はデカいなあ」
「そうだねえ」
先ほどの計算に当てはめれば月収100万円。
医者やパイロット並みの収入になる。
「まあ、何にしても30レベになってからだけどね」
などと言っているうちに、レベルが上がった。
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:ライ
レベル:30(+1)
体 力:59
攻撃力:59
防御力:59
素早さ:58
魔 力:15/15
運 :10
S P :7(+7)
スキル:剛力、破壊、雷弾、投擲、呼吸、帯電
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:セイラ
レベル:30(+1)
体 力:46
攻撃力:30
防御力:70
素早さ:47
魔 力:35/50
運 :15
S P :7(+7)
スキル:テイム、バリア、ヒール、転送、不動心、指揮
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
名 前:ガル
レベル:30(+1)
体 力:60
攻撃力:60
防御力:25
素早さ:68(+6)
魔 力:0/0
運 :10
S P :0(-6)
スキル:爪撃、鋼の牙、身体強化、風除け、柔軟、危機感知
ーーーーーーーーーーーーー
「到達しちゃったな、レベル30」
「しちゃったね」
しかも、現在地は24層。
25層はすぐそこだ。
「とりあえず、新スキルの確認をしようか」
『帯電』…攻撃力+2、防御力+5。魔力消費1
『指揮』…自分以外の味方全員の防御力と素早さ+1。魔力消費+1
『危機感知』…離れていても危険を察知できる
「俺のはまた単純な
「私の方は全体バフか…うーん…」
正直、微妙だ。
私達が10人くらいのパーティーだったら合計+20近いバフになって、破格の性能のスキルだったかもしれないが、うちは3人パーティーだ。
3人パーティーで、自分には効果無しとなると、バフ合計は+4。
「気休め程度かな…」
微妙なスキルに当たってやや気落ちする私に、ガルが頭を擦り付けてきた。
励ましてくれているのかもしれない。
「まあ、ハズレスキルってわけでもないし、今後パーティーメンバーが増えたら活躍するかもしれないぜ」
「メンバー増やす予定あるの?」
「ない」
ライは言い切った。
当面、この3人でやっていく予定らしい。
「で、どうする?セイは魔力足りそうか?」
「多分。1度の戦闘で魔力30使うこと中々ないし」
「じゃあ、行くか!」
「そうだね」
そうして、私達は25層ボス部屋への階段を降りていった。
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