第7話 キラキラネーム

1階受付で説明を受けた後、奥の部屋の武器売り場で武器を買った。

セイは180cmくらいの長さの棒を購入。

そして、俺は大ぶりな両手斧を買った。


「剣にするんじゃなかったの?」

「セイは一目惚れって信じるか?」

「浮気性?」


浮気ではない。

実際に見たら斧の方がかっこよかっただけだ。




武器を買ったら、いよいよダンジョンに降りていく。


「おー!本当に草原が広がってんだな!」


『品川ダンジョン』地下1層は草原フィールド。

地面は緑一色、頭上には青い空と白い雲が流れていた。


「地下に降りてきたのにこの景色ってのは、確かに結構衝撃的だな」

「それに暖かいね。外は2月の真冬日なのに」

「コートだとちょっと暑いな…」


ダンジョン内は気候固定。

『品川ダンジョン』の地下1層は24時間365日【朝、晴れ、20℃】で変わらない。

って、さっき貰ったパンフレットに書いてあった。


「実は上の受付から温風が流れてきてるだけだったりしてね」

「んなわけ…ちょっと移動してみるか?」

「先にステータスを確認しよう」

「だな。ステータス!」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:大野おおの 雷太サンダー

レベル:1

体 力:15

攻撃力:18

防御力:14

素早さ:14

魔 力:0/0

 運 :9

S P :0

スキル:


●装備

・両手斧:攻撃力+3

・赤い柄シャツ:防御力+0

・白いチノパン:防御力+0

ーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:大浪おおなみ 清良セーラ

レベル:1

体 力:8

攻撃力:7

防御力:7

素早さ:9

魔 力:0/0

 運 :15

S P :0

スキル:


●装備

・6尺棒:攻撃力+1

・黒ブラウス:防御力+0

・青ジーンズ:防御力+0

ーーーーーーーーーーーーー


「うわ、ご丁寧に名前に読み仮名が振ってある!」

「私達のキラキラネームがバレちゃうね…」


雷太と書いて『サンダー』。

清良と書いて『セーラ』。

どちらもキラキラネームだが、セーラはまだマシな方だと思っている。

発音上は『セイラ』に聞こえるからな。

サンダーはもうどうしようもないぞ…。


「『ライタ』ならまだ良かった。『サンダー』はもう…人に付ける名前じゃないだろ…」

「外国人なら稀にいるかも?ってレベルだよね」


正直、何度も改名しようと思った。

しかし、改名したら親が泣くから変えられないんだよな…。


「あ、名前のところを触ったら入力画面みたいなボックスが出てきた」

「表示名変更できるのか!」


俺もセイも速攻で表示名を変えた。

俺は『ライ』、セイは『セイラ』に変更。

ちなみに、他のステータスや年齢なども隠したければ非公開設定にできるらしい。

セイは体重を非公開にしていた。


「ライの能力値高いね」

「平均10だっけ?セイ、全部平均値以下じゃん」

「運だけは15ありますー」

「俺は運だけ9だ。言われてみれば、地味に運の悪い人生を送ってきた気がする…」

「でも、この『運』は幸運も不運も込み込みらしいから、10以上にはしない方がいいらしいよ」

「あー。セイの家、裕福だけど大変そうだったもんな」

「言わないで」




ステータスチェックもそこそこに、俺達はダンジョン探索を開始した。


「あの動いてる影が魔物かな?」


前方、40mくらい先に子供サイズの影が見えた。

ダンジョンは18歳以上でなければ入れないので、あの大きさなら多分魔物だろう。

近付いてみると全身緑色の小鬼がいた。

『ゴブリン』だ。


「GOBU!」

「俺から行っていい?」

「気をつけて」

「よっしゃ!」


ゴブリンに向かって歩いて行くと、ゴブリンの方もこちらへ走ってきた。

俺は肩に担いでいた剥き身の斧を両手で握った。


「おらっ!」

「GOBU!?」


斧はゴブリンの頭に突き刺さり、その一撃でゴブリンは絶命した。

すぐに灰になって消え、後には紫色の魔石だけが残った。


「よえー」

「グロ…くはないね?あんまり」


死体も、飛び散った血もすぐに消えたので、視覚的なグロさはそれほどでもなかった。


「お、レベル上がった!」

「もう?早いね」

「SPは6ポイントか。とりあえず運を10に上げて、残りは?」

「ステータスは全体的に上げた方が良いらしいよ」

「魔力は?」

「魔法使えない間は要らないんじゃない?」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ライ

レベル:2(+1)

体 力:16(+1)

攻撃力:18

防御力:16(+2)

素早さ:16(+2)

魔 力:0/0

 運 :10(+1)

S P :0(-6)

スキル:

ーーーーーーーーーーーーーー




「次はセイだな」

「頑張る」


少し歩くと、草原に座り込んでいるゴブリンを発見。


「1匹だ。後ろ向いてるな。こっそり近付いたら、楽に倒せるんじゃないか?」

「何か…罪悪感が凄いんだけど…」


そう言いつつ、セイはしっかり足音を殺して近付いていき、ゴブリンの後頭部へ思いっきり棒を叩きつけた。


「GOBU!?」


今回もゴブリンは一撃で死んだ。

どうやら小学生並みの戦闘力というのは本当らしい。


「ナイスー!初勝利の感想は?」

「手が痛い」

「まあ、硬い頭を棒でぶっ叩いてるわけだしな…」


刃物で斬り付けるよりも反動は大きいだろう。

そう考えると、棒もあんまり初心者向けじゃないかもしれない。


「人を殴ると自分も痛いんだね…」

「人じゃなくて魔物だけどな」


セイも2レベに上がり、獲得SPは10だった。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:セイラ

レベル:2(+1)

体 力:10(+2)

攻撃力:10(+3)

防御力:11(+4)

素早さ:10(+1)

魔 力:0/0

 運 :15

S P :0(-10)

スキル:

ーーーーーーーーーーーーーー




更に少し歩いたところで、またゴブリンと遭遇。


「GOBU!」

「GOBU!」

「今度は2体か!」


1匹は手ブラだが、もう1匹は右手に棒切れを持っている。


「兄弟かな…」

「いや、ゴブリンに感情移入すんなよ」


ゴブリンにも家族はいるだろう。

両親もいれば弟や妹だっているかもしれない。

…みたいなことを考えていたら戦えなくなるので、意識的に考えないようにして斧を握りしめた。


「恋人かも…」


やめろやめろ!


「棒持ってる奴は俺がやる。セイは左のゴブリンを任せた!」

「分かった」


先に俺が突っ込んでいく。

途中でゴブリン共に気付かれたが、お構いなしに走り寄って棒持ちゴブリンを蹴り飛ばす。


「おらっ!」


ゴブリン2体の距離が離れたら、二手に分かれて1対1だ。


「くらえ!」


転がっているゴブリンに斧を振り下ろす。


「GOBU!」


しかし、ゴブリンは持っていた棒を突き出して、斧の側面を叩いてきた。

斧は軌道を逸らされて地面に突き刺さった。


「うおっ!?」

「GOBU!!」


攻撃のターンが相手に移る。

ゴブリンは持っていた棒で俺の頭をぶっ叩いてきた。


「ぐっ…効くかそんなもん!」

「GOBU!?」


実際は結構痛かったが、我慢してカウンターパンチを顔面にお見舞い。

ゴブリンは再び地面に転がった。

その丸い頭にサッカーボールキック!

相手は死ぬ!


「いってえ〜!クソ!ちょっと血出たぞ…!」

「大丈夫?」


殴られた頭を押さえていたら、セイが問題なくゴブリンを処理してやってきた。


「ぜ、全然大丈夫…」

「嘘じゃん。頭から血出てるよ。応急セット持ってきてるから、傷見せて」

「いいよ、これくらい。ちょっと切っただけだし」

「ダメ。大人しくしてて」

「はい…」




その後もゴブリンやスライムを狩り続け、数時間後には3レベに上がった。


「またSP+6か。しけてんなあ」

「私またSP+10」

「マジ?何か不公平じゃない?」

「何でだろうね?初期能力値高いとSP少な目になるとか?」


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ライ

レベル:3(+1)

体 力:18(+2)

攻撃力:18

防御力:18(+2)

素早さ:18(+2)

魔 力:0/0

 運 :10

S P :0(-6)

スキル:

ーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:セイラ

レベル:3(+1)

体 力:12(+2)

攻撃力:13(+3)

防御力:13(+2)

素早さ:13(+3)

魔 力:0/0

 運 :15

S P :0(-10)

スキル:

ーーーーーーーーーーーーー


「今は…12時半か」


朝10時スタートで、途中休憩を挟みながら2時間半が経過した。

魔石はゴブリンとスライムを合わせて11個。

1層の魔物の魔石は全て1個100円らしいから…。


「2時間で1,100円かよ…渋過ぎる…」

「時給550円だね」

「ブラックバイトかよ…」


しかも、2人でこれだから1人分なら時給275円だ。

1層は魔物も弱いし、2人でやる意味ないなこれ。


「早く1層抜け出さないとジリ貧だね」

「もう2層行っちゃうか?」

「2層は5レベになってから行った方がいいらしいよ。2層のボス魔物が5レベ相当だから」

「マジか…じゃあ、しばらくはカップ麺生活だな」

「私結構カップ麺好きだよ」

「いやあ…たまに食うならいいけど、毎日食うには辛いよアレ」


うちはシングルマザーだったからカップ麺よく食ってたけど、正直週3が限界だと思います。

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