第3話 斧が折れた。オーノー!

俺の名はライ。

雷魔法と大斧を操るダンジョン探索者だ。




「ああああ!?俺の斧が折れた!オーノー!!」


『品川ダンジョン』39層のボス『泥棲鯉ドスコイ』との白熱のバトルの結果、俺の斧は刃の部分から真っ二つに折れた。


「あ、レベル上がったよ」


あと、レベルも上がった。


ーーーーーーーーーーーーー

名 前:ライ

レベル:45(+1)

体 力:77

攻撃力:77

防御力:77

素早さ:77

魔 力:13/47

 運 :10

S P :7(+7)

スキル:剛力、破壊、雷弾、呼吸、投擲、帯電、放電、乱打、修復


●装備

・両手斧:攻撃力+5


年齢:21歳

性別:男

髪型:天パ

髪色:金色

身長:180cm

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ーーーーーーーーーーーーーー

名 前:セイラ

レベル:45(+1)

体 力:70

攻撃力:30

防御力:100

素早さ:60

魔 力:30/80

 運 :15

S P :7(+7)

スキル:テイム、バリア、ヒール、転送、不動心、指揮、進化、騎乗、浄化


●装備

・伸縮式警護警棒:攻撃力+1


年齢:21歳

性別:女

髪型:ストレートロング

髪色:金色

身長:170cm

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ーーーーーーーーーーーーーー

名 前:ガル

レベル:45(+1)

体 力:90(+3)

攻撃力:80(+1)

防御力:60(+1)

素早さ:97(+2)

魔 力:7/40

 運 :20

S P :0(-7)

スキル:爪撃、鋼の牙、身体強化、風除け、柔軟、危機感知、進化、水操り、水流砲

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ダンジョンでは自分の能力を数値で見ることができる。

ステータス!と唱えることで空中に半透明の『窓』が出てきて、そこに全部書いてあるのだ。

なお、原理は不明。

ダンジョン内限定の不思議現象の1つである。


「お、俺の斧が…大事な相棒が…」

「元気出して。ほら、ライの方、新しいスキルがあるよ」

「修復…って、もしかして俺の斧直せるのか!?」


魔物を倒すとレベルが上がり、大体5レベアップごとにスキルを1つ覚える。

セイとガルは先んじて9個目のスキルを取得していたので、今回スキルを覚えたのは俺だけだった。

俺の新スキルは『修復』。

もしや折れてしまった愛斧が直せるのかと思い、早速使ってみた。


「修復!」


すると、斧は買ったばかりの頃のようにピッカピカになった!

…が、折れた部分がくっ付いたり、欠けた刃が生えてきたりはしなかった。

何の意味も無え!


「うーん、ライの武器が壊れてるんじゃ、今日は引き返した方が良いね」

「ごめん…」

「まだ昼過ぎだし、地上へ戻ったら武器を新調しに行こうか」

「行く…」




というわけで、俺達は地上へ戻り、『BUKIYA』というダンジョン装備専門店にやってきた。

なお、ガルは入店できないし、店の外で待たせていたら多分通報されるので、家に置いてきた。


「おお、内装めちゃめちゃファンタジー感あるな!」

「本当だね。木製のたるとかディスティニーランドでしか見たことないよ」


店に入ると、まず西洋甲冑がお出迎え。

短い赤い絨毯はすぐに無くなって、石作りっぽいタイルの床が現れる。

木製の壁には剣だの槍だの多種多様な武器が掛けられていて、マネキンに着せられている服もよく見ればマントやローブや革鎧やチェーンメイルだ。

陳列されている商品全てがダンジョン探索者向けのアイテムである。


「お、向こうの壁に斧っぽい物が掛かってる!見に行こうぜ!」


●バスターアックス:攻撃力+9。750万円


「高っ!?」

「買う?」

「いや、750万は流石に無理だろ…」

「頑張れば出せるよ」

「マジで!?」


俺達のパーティーの財布の紐は完全にセイが握っている。

いや俺も下層探索始めた頃から金回り良くなったなーとは思ってた。

でも、まさか武器1つに750万をポンと出せるほどとは思わなかった。


「うちの主戦力のメイン武器だし、ケチケチするところじゃないよ」

「うーん…いや、やっぱり他のも見てから決めるわ…」


高いし…。


「それもそうだね。色々見るのも楽しいしね」

「せっかくだし、セイの装備も新調しようぜ。高級武具店に来る機会なんてそうそうないんだしさ」

「私は別に、今の装備で不満ないけど…」

「何言ってんだ。うちのパーティーのメイン盾だろ。ケチケチするところじゃないって!」




いっそのこと装備全部更新するか!ということになり、まずは防具から見ていくことにした。

防具といっても重装備にする気はないので、とりあえずシャツからだ。


「問題はここに柄シャツがあるか、どうかだ」

「たまには違う服着れば?」

「俺…柄シャツ以外の服を着ると死ぬんだよね…」

「部屋着スウェットでしょ」

「あ、柄シャツあった!」


白地に黒で蔦の模様が入った良い感じの柄シャツを発見。

生地もしっかりしていて、肌触りも良い。

いきなり当たりだ。

安かったらこれにしよう。

そう思って値札を見たら、


「うお、8万だって!どこの有名ブランドだよ!?」


確認のために値札を裏返したが、知らないロゴが入っていた。

有名ブランドでは無さそうだ。


「他のも大体そのくらいみたい」

「マジ?ぼったくってないか?」

「どの服も防御力+1が付いてるから、それで高いんじゃない?」


ああ、なるほど?

確かに着るだけで防御力+1されるなら凄いのかもしれない。


「しかし、8万か…」


高え…。

しかも、ダンジョン探索用の服なので、ある程度の汚れやダメージは覚悟しなければならない。


「いや…セイが『浄化』でキレイにできるし、破けたりしても『修復』で直せそうな気もするから、その辺は大丈夫か?」

「気に入ったなら買っちゃおう」

「…買っちゃうか!」


高いっちゃ高いけど、750万の斧と比べたら全然安いしな!

その後、コートに靴、バッグなども見て、俺の買い物は武器以外全て終了した。


●白黒蔦柄シャツ:防御力+1。80,000円

●黒ストレートパンツ:防御力+1。75,000円

●黒ロングコート:防御力+1。100,000円

●黒革靴:素早さ+1。50,000円

●レザーショルダーバッグ:容量10L。20,000円


計325,000円。


「30万越えは結構いったなあ…」

「いったねえ」


いやでも、750万の斧と比べるとそうでもないのか…?

ダメだ、750万の斧のせいで金銭感覚が完全に狂っている。




次はセイの装備を見に、レディース売り場へ行った。


「何か、男物より品揃え良くね?」

「これは…私もテンション上がっちゃうかも」


明らかにメンズ売り場よりも広いレディース売り場には、色から種類まで様々な女性向け装備が並んでいた。


「探索者なんて男の方が多いだろうに…不思議だ」

「値段も高いし、ファッション意識高い女性客の方が多いのかもね?」

「このピンクの服とかダンジョンで着たら絶対目立つだろ」

「上に何か羽織れば大丈夫じゃない?」


なるほど?


「うーん、可愛い服も結構ある…」

「良いじゃん。可愛いやつ買えば?」

「でも、私って可愛い服似合わないんだよね…」

「そう?」

「残念ながら…」


言われてみれば、セイはいつも落ち着いた色合いの服を着ている気がする。

今も白ブラウスに青ジーンズだ。

パンツルックはまあダンジョン帰りだから仕方ないとして…。


「てか、普通にスカートも置いてあるんだな。スカートで戦闘ってどうなんだ?」


丈短いとパンツ見えそう。

長い場合も足に絡まって邪魔そうだ。

あ、エグめのスリットが入ったロングスカートがある。

あれなら多少は動きやすい…のか?


「スカートは無理あるよねえ。特にうちはガルに乗って移動したりするし」

「横向きに座れば…落ちるか」

「スカート使えないとなると、やっぱり可愛い系は無理かなあ」

「あのロングスカートは?」

「どれ?あれ?…ライって、ああいうのが好きなの?」


いや、別にそういうことじゃなくて…。


「脚フェチ?」


そういうことじゃなくて…。




それから30分くらいが経過し、


「どうしよう、全然決まらない!」


セイの服選びは難航していた。


「待たせてごめんね。今日はライの斧を買いに来たのに…」

「いいよいいよ」


30分待ちくらいは想定内だ。

それにここは初めて入った店だし、特殊な店だから、商品を眺めているだけでも結構時間は潰せる。

見ろよ、あそこの西洋甲冑。

一式で100万円だって。

高え〜。

誰が買うんだあれ。


「うーん…」


セイはさっきからウンウン唸っている。


「何かお悩みかな?」

「悩みっていうか…」

「当てて進ぜよう。このピンクのVネックニットが気になっておるのじゃな?」

「何故お爺さん口調…」


セイはさっきからこのピンクのニットを取っては戻し、取っては戻しを繰り返していた。


「気に入ったんなら買っちゃえ買っちゃえ」

「でも…ダンジョンで着るには派手じゃない?」

「上から何か羽織ればいいってさっき言ってたじゃん」

「う…」


察するに、ピンクの服が自分に合うかで悩んでいるんだろう。


「とりあえず、試着してみれば?合えば買う、合わなきゃ買わない。それで良いんじゃね?」

「…そうだね、ちょっと試着してみる」


で、試着してみた結果…。


「良いじゃん!可愛い可愛い!」

「やっぱり別のにする」

「えー!似合ってるのに!」

「やっぱり、ちょっと…違った…」


セイは結局、同じ服の色違い(水色)を買った。


●水色Vネックニット:防御力+1。75,000円

●黒キャミソール:防御力+0。8,000円

●黒ロングコート:防御力+1。100,000円

●黒防刃タイツ:防御力+1。8,000円

●濃紺ショートパンツ:防御力+1。70,000円

●黒ロングブーツ:素早さ+1。100,000円

●黒レザーショルダーバッグ:容量6.5L。80,000円


計441,000円。


「44万はいったなあ!」

「私の方が12万円分くらい多くなっちゃったね…」

「なあに、俺はまだ武器購入を残しているからな。最終的には俺の方が高くなるよ」

「750万の斧いっとく?」

「いや、750万はちょっと…」




最後に武器売り場をもう一度物色。


「攻撃力+7の斧で200万か…」

「攻撃力+6なら50万円くらいだね」

「今までと同じ攻撃力+5の斧なら30万円…やっぱりこの辺が手頃じゃないか?壊れてもそんなに惜しくないし」

「でも、下層探索も進んできたし、今までより良い性能の武器にした方がいいと思う」

「なら、50万か」

「750万でもいいんだよ?」

「いやあ…」


間をとって攻撃力+7の200万の斧を購入することに決めた。

200万か…。

大事に使おう。


「これで全部か?」

「あ、あとガルに着けるくらが欲しい」

「おー、ついでにガルのバッグも新調するか」


●馬用の鞍一式:100,000円

●大容量ボストンバッグ:70L。10,000円


本日のお会計2,876,000円。


「ほぼ俺の斧代とはいえ、300万弱はやばいな…」

「元を取れるように、明日からもダンジョン探索頑張らないとね」

「だな!」

「レベルも45に上がったし、40層のボス戦いっちゃう?」

「いっちゃうか!ジメジメした沼フィールドもいい加減うんざりだしな!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回、ボス戦!

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