第2話 誘拐
「・・・るんだろうな?」
「たぶんだ」
「これ間違っていたらやばいぞ。命がいくつあってもたりねえ。」
少しずつ意識が浮上する。
(わたしは人さらいにあったのね・・何人かいるみたいだしまだ寝たふりしといた方がよさそうね。)
などと考えていると
「とりあえず、仮拠点だし、はやく移動してしまおう。」
「いや、ボスに連絡が先だ。」
「まてまて、女がおきて身元確認が先だろう?」
どうやら、仮拠点にいる誘拐犯は4人くらいで、仲間割れをしている様子だ。
誘拐の目的はわからないが、本拠点に連れていかれては、さらに身に危険が及ぶだろう。
(仕掛けるなら、いましかない。でも反撃の手立てがない。どうしよう。)
ずっと脳みそを回していると
「喧嘩している場合ではないだろう。お前ら、能力はなんだ。もし本当に姫ならば、正当防衛で能力をつかわれるかもしれない」
(能力??)
「自分は索敵系で戦闘タイプじゃねえ」
「俺もだ・・・」
「おれも。」
「やっぱりな。ボスは、自分に歯向かわれるのが怖いから、あえて強い戦闘タイプを雇わなかったんだ。」
「となると、姫を刺激しないほうがいい。もしくは人質を。」
「ああ。」
これらの話を聞いているうちに、だいたいの様子は把握できた。この話を聞く限り、私の能力で、現状を打破するのが手っ取り早いな。ボスの正体はわからないが、臆病者ならば問題ない。
わたしの体は、ソファのようなところに寝かされており、特に拘束されていたわけではなっかたから、一気におきあがった。
「ここはどこだ。」
できるだけ強気にでる。
「お目覚めみたいだぜ。」
「ああ。すまないがここの場所は教えられない。今から場所を移動するから、俺たちについてきてもらおう。」
「知らない人、ましてや誘拐犯についていくわけなんてないわ。」
「ふん。強情だな。だが、おめえさんはついてくる以外の選択肢がない。」
「そう。なら何をしたって正当防衛よね?」
「はあ?なにするつもりだ?」
立ち上がり、誘拐犯の顔をみてにこりとする。
しかし、心中は穏やかでない。
(やばいやばいやばい)
こうやって強気に出たものの、私は肝心なことを忘れていた。
そう、自分の能力についてだ。
不思議なことに自分の能力についての記憶がなにもないのだ。使い方もわからないから、試す方法もない。
(どうしよう、でももう引き返せないし、賭けに出るしかない。)
先ほどの会話で、犯人らは、ひどくわたしがの能力を使い、抵抗することを恐れていた。それを利用するしかないと思い賭けに出る。
「能力よ、あなたがたご存じでないの?」
そういうと、4人組の顔が青ざめた。
そして仲間内でぶつぶつ話し出した。
「おい、まずいぞ。」
「誰だよ、姫は温厚な性格だと言ったやつは。こんなのライオンじゃねえか。」
「だけど、このままでは・・・」
「ああ。ボスは納得いかないし、なによりも家族が・・・」
(ライオンですって?失礼な。)
とツッコミたくなるくらいには、余裕ある状況に、視野も広くなる。
犯人の話を聞いていくうちに、むこうは人質を取られているようなので、これもチャンスだと思い、また博打。
「あなたがた、脅されて誘拐しているのですか?」
「は?なんのことだ。おめえさんには関係ねえ。」
「そんなこと言わずに、」
「うるせえ!おとなしくついてこいよ!」
「お、おい。落ち着け。」
すごく焦っている様子で、うまく話しを持っていけるかわからない。
突然訪れた、緊迫した雰囲気に飲み込まれそうになる。
でも、私は、この状況を打開するしかないし、王家として、反逆者を見逃すわけにはいかない。誘拐されている身でありながら、二重の意味でのチャンスを逃さないように必死に考える。
「このまま言い合っていても、平行線だし、無理やり連れていかれるようなら、能力を使ってあなた方を、警備隊につきだすわよ。だから、あなたたちの状況を教えて。」
脅すような言い方に、胸が苦しくなるが、仕方ない。
これですぐに話をしてくれるならいいだろう。
「おい、もう話そう。」
「だが・・」
「俺も話した方がいいとおもうぞ」
「実はだな・・・・・」
誘拐犯の話を要約すると、
・家族が人質
・ボスはこの王国のものではないらしい
・戦闘能力もちはいない
・誘拐後の目的はわからない
なんてありきたりな展開なんだと頭を抱える。
そもそも、この国は鎖国状態だから、異国の者が介入してくるのはおかしいのだ。
(でも、本当に異国の人で、我々が勝てば、国にとってのメリットが大きい。おまけに、こちらが優位な条約を結べれば、この王国を救えるかもしれない!)
思い立ったが吉日なのだ!
「ねえ、やっぱり、あなた方についていくわ。」
「ほ、ほんとうか?!」
「だけど条件がある。」
「条件ってなんだ。」
「簡単なことよ!わたしに力をかして!仲間になって!」
「は?おめえ、頭がいかれたか?現実が受け入れられなくて、いかれちまったのか?」
「失礼な!私は、まともよ!私には、国民を守る義務があると思う。そして、国を立て直したい。私につくかは、作戦が決まってからでもいい。力を貸して。」
手を差し出す。
「・・・」
固唾をのむ音が聞こえる。
「はあ、わかったよ。あんたの熱量に負けた。この国の未来のリーダーがあんたなら安心だな」
そう言いながら握手する。
「そうと決まれば作戦会議ね!」
明るく言えば、涙を流して、喜び合っていた。
(ここからが、大変なのに)
と思ったが、4人とも思いつめた顔から、とてもいい表情になったから、わたしもつられて笑った。
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