お金が欲しくて、物書きになったら、小説の世界に転生してしまいまして。。。

九条もなか

第1話 こんなことになるならば

こんなことになるなら、もっと・・・などと後悔してももう遅い。



リリー様、お目覚めの時間でございます。


そんな声が聞こえた気がして、目を覚ました。

何かがおかしいと思った。いや、何かではすまない。

すべておかしかったのだ。


私の名前はリリーではないし、こんなに広い部屋に住んでもいないし、シャンデリアもない、ましてや召使などいるわけがない。

夢か現実かわからない中、必死に頭を回す。


昨日まで、借金に追われ、少しでもお金を得るために死に物狂いで生きてきたはずだった。だから、なんでもよかったのだ。あの地獄のような生活から抜け出せたのだと。死んだのか、転生なのかよくわからないが、とりあえずこの人生を全うしようとなにも考えられない寝起きの頭で考えていると


コンコン


とノックの音が聞こえた。


「どうぞ」


と声をかける。

泣きそうな顔をした、メイドが部屋にはいってくる。


「おはようございます、リリーお嬢様。お体の方はいかがでしょうか?」


「特に、問題ないわ。今日のスケジュールは?」


「なんと!本日はマナーシャ王国、建国記念日でございますわ。街中お祭りモードですわ。夜に、王家として、登壇する必要がございますが、それまで自由にお過ごしくださいませ。」


「わかったわ!ありがとう。午前中はゆっくり部屋ですごすわ。」


そう伝えると、メイドは部屋から出て行った。


なんなんだ、マナーシャ帝国どこかで聞いたことがある。違和感しかない。

そうおもったが、今までリリーとして過ごしてきた記憶を整理する方が大切だと思い、そちらを優先することにした。


国:マナーシャ帝国

名前:リリー(王家)

年齢:19

☆みんながなにかしらの、異能をもっている


こんなことを紙に書きだしているうちに、午前中はおわった。


ふと、朝に会った、メイドの顔が思い浮かぶ。

たぶん私は、しばらく寝込んでいたのだ。だから彼女はあんなに泣きそうで、心配そうな顔をしていたのだと、勝手に解釈した。

申し訳ない気持ちと同時に、建国記念日のはなしをおもいだして、頭がいたくなる。


「転生して初日、建国記念日はハードル高いな」


とついボヤいてしまうが、そんなこと言っていてもしょうがない!と喝をいれ、お祭りを楽しむ準備をはじめた。




午後になり、城下町を歩いていると、それはもうお祭り騒ぎだった。

お忍びで来ているから、目立った行動はできないが、屋台のように連なっているお店を見て回ったり、ショーをみたりとずいぶん満喫した。


少し疲れたから、りんご飴のようなものを買って、広場で休んでいると、ここからそう遠くないところに絶景スポットがあるという話を入手した。

(これを食べ終わったら、いこう・・・)


しばらくしてから、目的地に行くために丘をのぼっていると、それは突然現れた。


そう、一面に広がるお花畑が!なんとお花が歌っているのだ。

あたりにはだれもおらず、私だけを歓迎していると錯覚してしまう。


はっとした。風景の美しさに見とれている場合ではない。

これは、私が、書いた小説の世界に似ている。

いや、似ているどころではない、私が書き始めた世界なのだ。


「な、な、な、なんでえええええええええ」


これほど自分を恨んだことはない。

なぜなら、ここはいつ反乱がおこってもおかしくないほどの弱小国であり、この国はなにか行動しなければ未来がないのだ。


「それならば、しょうがない!この国をわたしが立て直す!」


そう意気込んだ瞬間、うしろに人の気配がした。

誰だろうと思い、振り返ろうとするが、口元をハンカチで抑えられたため、身動きがとれなかった。息を吸おうと、もがいていると、だんだん意識が遠のいてゆく。


(くそっ・・誰かと一緒にこうどうすればよかった)


そんなことを思ってももう遅い。


暗転する。



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