殺し絵
無名乃(活動停止)
作品
「これが僕からのプレゼントだよ。君に対する気持ち受け取ってくれたかな?」
部屋中に白い紙を張り付け、至るところに赤く跳ね飛び散った赤い絵の具。天井には切断した画材を確定位置に吊り下げる、正面から見ればバラバラ。しかし、ある一定の場所から見ると組合わさる。視角を使った
一つ目は繋がりのないバラバラ。
二つ目は繋がりの本来の形を取り戻す。
三つ目は画材を使って気持ちを伝える。
胴体で『l』。
足で『o』。
手で『v』。
『e』は背景になっている紙についた君の血。
「最高だね。僕の絵になれた君は幸せ者だ。ダメになるのが早いから目に焼き付けて置かないと。あぁ、記念にレトロカメラで写真でも撮ろうかな。いつも僕を追って苦戦してる刑事に見せてあげないと」
僕の作品は他の人とは違う。見た目も捉え方も賛否両論。幼い頃から普通の子とは何か違った。
喜ぶ顔が憎たらしく、痛み泣き叫ぶ姿が愛くるしい。特にニュースの殺人報道や映画の残酷描写を見るのが好きだった。見れば見るほどインシュピレーションが湧く。こうありたい、という自分の美的センスに。
元々はマンションに住んでいたが悪臭騒動に森にログハウスのアトリエを建てた。しかし、毎日汚れ、掃除をしても何しても綺麗になる気配がない。絵の具の臭いは独特で皆は『腐敗』と言うが僕にはいい香りがした。絵の具は鮮度が命。時間が立てばすぐ固まり変色。筆もそうだ。市販と違って自作のせいか物によって太さや固さが違い、描きにくい時がある。
「あっ…やだ。絵の具が固まった。これ前のだから速く新しいの調達しないと駄目か。あれ、保存してた臓器絞って代用できないかな……えっと何処に置いたかな」
部屋の端にイーゼルに立て掛けている真っ赤なキャンパス。何種類もの赤を重ねた一作品。塗り初めは真っ赤だが、乾けば少しずつ色や代わり、異物が浮かび凹凸が生まれる。正義の味方や市民の間では理解されない作品だが一部の人からは良い意味で指示を得る。
僕の【殺し】は芸術――だと。
殺し絵 無名乃(活動停止) @yagen-h
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