第6話

 私が『洗礼』を終えた翌日。我が家にはいつもと変わらぬ日々が訪れていた。


 ユグル兄様は父上と剣の訓練。バン兄様は家庭教師の方と座学の勉強に勤しんでいる。そして私はというと、メイドのエリスと共に裏庭に居た。


 理由は勿論、昨日父上に宣言していた通り、私が所有しているスキルの検証をするためである。


「よし。ではやるぞ」


 エリスにそう告げると、私は一つ目のスキルを発動させた。


「『分析アナライズ』」


 目の前にいるエリスを対象に『分析』スキルを発動させる。するとエリスの体の前に少し白みがかった縦長の板のような物が出現した。そしてその板には黒い文字が刻まれている。私はその文字を食い入るように見始めた。


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【名前】 エリス

【種族】 人間

【性別】 女

【職業】 魔術使い


【Lv】 10

【HP 】 1000/1000

【魔力】 800/800

【攻撃力】 E

【防御力】 E-

【敏捷性】 E+

【知力】  C-

【運】 D-


【スキル】

火魔法

水魔法

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「素晴らしい!!素晴らしいぞこれは!!」


 私は思わず大声で叫んだ。なんと、目の前に現れた文字はエリスのステータスを記載していたのだ。だがこれが正確な情報だとは言いきれない。


 私は矢継ぎ早にエリスへ頼んで、彼女にステータスカードを出現させて貰った。


 ステータスカードとはこの世界に存在する不思議の一つでもある。『洗礼』を受けた者が神から頂戴したとされる、自身のステータスを映し出す物体のことなのだ。


「我の姿を映し出せ」


 エリスがそう唱えると胸の辺りからカードが現れた。そのカードを渡してもらい、『分析』で出現させた文字と見比べる。私の予想通り、エリスのステータスカードに記載されていた内容と、『分析』で出現させた文字は全箇所一致していた。


「凄いな!人間を対象にするとステータスを見ることが出来るのか!しかし、まだエリスの場合のみの話だ。検証数を増やしてみないと正しいスキル内容とは言えないな」


 私は次に自分自身を鑑定してみることにした。


 下を向き自分の胸付近を見つめながら『分析』スキルを発動させる。すると先程のエリスと同じように、私の目の前に白みがかった板が現れた。そこには私自身のステータスが記載されている。私はステータスカードを出現させ、見比べ始めた。


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【名前】 アレックス・グローリー

【種族】 人間

【性別】 男

【職業】 知識者


【Lv】 1

【HP 】 250/250

【魔力】 280/300

【攻撃力】 F-

【防御力】 F-

【敏捷性】 F-

【知力】  S+

【運】 A+


【スキル】


【エクストラスキル】

分析

再構築Lv1

知識枠Lv1(0/5)


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「寸分違わず私のステータスを現している。やはり人間を対象にすると対象とした人間のステータスを表示させることが出来るのだな」


 ステータスを確認していた私はあることに気付く。一つ目は魔力量が二十減っている事だ。私が発動したスキルは『分析』スキルのみで、ステータスオープンは魔力を消費しない。つまり『分析』スキルは一回の発動につき十の魔力を消費するという事か。


 二つ目に気付いたのは『エクストラスキル』という文字。これは確か限られた職業のみが持っているスキルだったはず。私の三つのスキルはどうやらすべてがエクストラスキルに属するらしい。


 そして三つ目は『再構築』『知識枠』のスキルにレベルの概念があったことだ。私の知識では生命体にレベルの概念はあるものの、スキル自体にレベルの概念があるという情報は無かった。


 さらに『知識枠』に関しては(0/5)という数字も記載されている。単純に考えれば五分のゼロ、スキル名と合わせて推測すると、知識の枠が五個ありそのうちゼロ個埋まっているといったものか。


「ひとまずこれについては後で検証するとしよう。次は、物体に対して発動させるか」


 こうして、私は着々と検証を進めていき、夕日が落ちる頃には概ね検証が終わった。


 まず『分析』スキルについての検証結果を述べていこう。検証の結果から『分析』スキルの効果は、生命体と物体に対して発動することが出来ると分かった。人間に対して発動した場合は、その対象のステータスを表示することができ、物体に対してはその物体がもつ役目や材質、効果を表示してくれた。


 さらに驚くべきことに、『分析』スキルは自分や他人が取得しているスキルに対しても発動することが出来た。そのため『再構築』『知識枠』の効果や使用方法は直ぐに理解できたのである。


 まず『知識枠』に関してだが、以下の内容が表示された。


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エクストラスキル『知識枠』Lv1

 自身が知識として得たスキルをセットすることが出来る。レベルが上がるごとに枠の数は増えていく。

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 『分析』によって表示された内容は大雑把なものであったが、私は直ぐに理解出来た。知識として得たスキルという部分が曖昧であったが、どうやら本を読んでスキルの知識を得るだけではだめらしい。


 何故そう断言できたのかというと、現状で私がセットできるスキルが、「火魔法」「水魔法」「剣術」の三つだけであったからだ。数多くの書物を読んでおり、他のスキルについても知っている私が、何故この三つだけしか選択できないのか。


 恐らくだが、スキルの発動を目にする必要があると推測している。魔法についてはエリスが発動した瞬間を目にしているし、剣術については言わずもがなだ。


 そして最後に『再構築』のスキルに関してだが、このスキルの内容を理解するのには少しばかり時間を要した。なぜなら『分析』スキルによって表示された内容が、意味不明だったからである。


 その内容がこれだ。


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エクストラスキル『再構築』Lv1

 自身が所持しているスキル、又は魔法式で構築されたモノを再構築することが出来る。再構築可能項数は<1>。

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 これだけを見ても何を言っているのかさっぱり分からない。


 しかし、この文章を注視すれば『再構築』スキルの使用方法は見えてくる。私は自身の知識枠にセットしていた火魔法に向けて『分析』スキルを発動させた。その結果を用いることで『再構築』スキルの使用方法を説明しよう。以下が火魔法の代表的な魔法の分析結果である。


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【火魔法】

『火球』=<火の玉を><敵に向かって><真直ぐに放つ>

『火矢』=<火の矢を><敵に向かって><真直ぐに放つ>

『炎槍』=<炎の槍を><敵に向かって><真直ぐに放つ>

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 簡単に言ってしまえば『火球』=<火の玉を><敵に向かって><真直ぐに放つ>という式が魔法式であり<火の玉を>の部分が項に当たる。つまり『再構築』スキルは一つの魔法式に対し一つの項の中身を自由に変更することが可能なスキルということだ。


 まだまだ検証したいことは山ほどあったが、夕食の時間になってしまったため今日の検証はこれまでとなった。



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