第3話 初動捜査
受動喫煙防止法が制定されて、すでに2年が経っていた。
ちょうど同じ頃に、第一回目の、
「世界的なパンデミック」
によっての、
「緊急事態宣言」
が発令された時期でもあった。
もし、これがなければ、児童喫煙防止法が大いに話題になっていたことだろう。そして、これを話題にするのは、パチンコ屋などではないかということは、容易に想像できたのであった。
というのも、受動喫煙防止法によって、一番影響を受けるのが、
「禁煙対策を取っていなかったところ」
だと言えるだろう。
この法律ができるまでも、結構禁煙という風潮は起こってきていて、飲食店などのほとんどは、禁煙のところが多く、もし、禁煙でなくとも、喫煙室を作って、禁煙車とは、一線を画していたのだ。
だから、そんなお店は、法律が制定されようが、
「今までと、一切変わらない」
ということで、意識すらしていないかも知れない。
しかし、分煙対策をまったくしていないところ、例えば、パチンコ屋であったり、居酒屋などというところは、かなりの影響を受ける。
ただ、禁煙者にとってはありがたいことだった。それまでは、タバコの煙を煙たそうにすると、タバコを吸っているやつが、我が者顔で、
「ここではタバコが吸えるんだ」
と言って、却って、禁煙者を恫喝してくる。
こんなことがあっていいものか?
昭和の時代じゃあるまいし、何をいまさら、時代を30年以上も遡らなければいけないというのか、実に嘆かわしいことである。
しかし、法律ができると、もちろん、パチンコ台の前で吸うことは許されない。喫煙所というスペースを設けて、国で定めた基準に合格した換気を伴っていなければ、その場所を、
「喫煙所」
として認識することはできず。そこではいくら喫煙所と書いてあっても、そこでは吸ってはいけないということになる。
そういう意味で、パチンコ屋も居酒屋も、喫煙者を客としてこれからも来てもらいたいと思うのであれば、かなりの設備投資をして、喫煙室を作る必要があるのだ。
だから、法律が決まってから、施行までの間に、喫煙室を作るか、あるいは、
「喫煙者、お断り」
ということにしてしまうかのどちらかを迫られることになる。
個人商店の居酒屋などは、設備投資できなくても仕方がないだろうが、パチンコ屋は、設備投資をしてでも、何とかと思うだろう。
ただ、実際には、喫煙室は元からあったところも多く、問題は、
「本当のヘビースモーカーの連中が、もう来てくれなくなるのではないか?」
ということが大きかったのだ。
しかし、実際に、それ以上の問題は、ちょうど同じ頃に起こった、
「世界的なパンデミック」
だったのだ。
受動喫煙では、それほど問題にならなかったパチンコ屋であったが、
「緊急事態宣言中」
に、店を開けているところがあり、それが世間で、大きな問題となり、
「社会問題」
に発展した。
「自粛警察」
なる連中が出てきて、
「パチンコ屋が、休業要請に逆らって、店を開けているのは、けしからん」
ということであった。
どうして問題になったかというと、ほとんどのパチンコ屋は閉まっているわけだから、
「ギャンブル依存症」
のパチンコ狂いの連中が、開いている店に、殺到したからだ。
そんな店を自粛警察は、かなり攻撃する。さらに民衆に煽られるという形で、マスゴミも攻撃することになる。
そうなると、行政も何とかしなければいけなくなり、
「休業要請にしたがわないと、店名を公表する」
と言い出した。
しかし、これは逆効果だった。
というのも、店名を公開したことで、今度は、
「ギャンブル依存症」
の連中に、
「この店は開いていますよ」
ということを教えることになり、却って、人の集中を招くことになるのだった。
確かに、皆休業しているのに、開けている店は、攻撃されても仕方がないのかも知れないが、実際に、一日店を閉めただけで、休業どころか、廃業に追い込まれるのは分かっているのだ。
支出から考えれば、日々の収入が、数百万から、数千万なければ、やっていけないという自転車操業のようなパチンコ屋は、本当に死活問題であった。
それを果たして、自粛警察のように、頭ごなしに、
「店を開けるのはけしからん」
などと一刀両断とできるだろうか?
それが、大きな問題だったのだ。
それを考えると、受動喫煙防止法は、悪い法律ではないし、緊急事態宣言も、致し方のないことであったのだろうが。
「すべてがうまくいく」
などということはない。
特に、日本という国は、
「平和ボケ」
をしている国の最先端なので、パニックが起こった時、バカげた政策は多いのは仕方がないのかも知れないが、それにしても、あまりにもひどかった。
「○○マスク」
などと言われた、バカげた政策もあった。
しかも、そこに政治家の利権が絡んでいるというのだから、開いた口がふさがらない。
さらには、補償問題として、
「自治体の要請にこたえて、感染対策を徹底している店や、時短営業をきいてくれた店などには、補助金を出す」
ということであったが、実際に補助金が出たのは、半年後だったりと、下手をすれば、
「2,3カ月ともたない」
という店が多い中で、補助金が出ることもなく、廃業に追い込まれた店も相当あっただろう。
さらに、自治体が出すという補助金など、店が抱えた負債から見れば、
「鼻糞にもならない」
と言われるほどしかないのだから、実にひどいものだ。
それを考えると、パチンコ屋のように、
「勇気を出して、営業した方がよかった」
と思って、潰れていく店も多かったことだろう。
もちろん、
「人の命を守る」
という意味でいけば、休業要請も、時短要請も当たり前のことであり、仕方のないことなのかも知れない。
だが、実際に本当にそれが正しかったのであろうか?
いまだに収まることをしらない、
「パンデミック」
ウイルスは、変異に変異を重ね、どんどん、感染者は増えてくる。
本当は受動喫煙どころではないのだろうが、最近は、感染者が増えても、政府も国民もあまり気にしなくなっていた。
「経済も一緒に回さないといけない」
という政府の方針からか、
「諸外国もやっている」
ということで、ただの、
「右倣え」
ではないだろうか。
「表ではマスクもしなくていい」
などという、ふざけたことを言い出して、政府は、
「国民の命を守る」
という仕事を、放棄したかのようだった。
要するに、政府は国民に対して、
「政府は何もしないから、後は、自分の命は自分で守れ」
と言っているのと同じではないだろうか。
実際に、医療はひっ迫し、
「助かる命が助からない」
という現状を見て見ぬふりをしているのか、
「これが政府の本当の姿だ」
ということを思うと、もう、どうしようもないことなのであった。
それを思うと。
「本当に政府は、国民がどうなろうと、自分がよければそれでいい」
ということなのだろう。
「国破れて山河あり」
まさに、敗戦国の姿がそのままではないだろうか?
少し話が大げさになってしまったが、この会社ビルも、受動喫煙と言いながらも、非常階段でタバコを吸っている人が多いというのが実情だった。
だから、どうしても、非常階段を閉め忘れて帰っているところも少なくない。だから、犯人たちも非常階段を使った犯行を考えていたのだ。
犯行は、思わぬ形で露呈した。
泥棒の計画がどのようなものであったか、すぐには分からなかったが、泥棒の計画がどうであったのか分からないが、ロビーで、人が刺されたことで、そお人は、そのまま即死だったようだ。
犯人は、最初から、その人を殺すつもりはなかったのだろう。犯人は気が動転してしまい、その場を急いで立ち去ったようだ。
しかも、被害者は、その場所に倒れこんでしまい、そのまま誰にも発見されずに、一晩が過ぎ、翌朝、最初に出社してきた人間が、そこに倒れている人を見て。
「殺人事件だ」
ということで、すぐに警察に連絡を入れた。
他のビルの人たちは、ほとんどがリモートワークだったこともあって、一部の社員しか出社してこないので、それほど大きな事件として目立ったわけではないが、少なくとも人が殺されているのである。ビルはある意味、しばらくの間、隔離されることになった。
どうしても、出社の必要がある会社があれば、管理会社から警察に依頼し、警察警護の下での出社は許された。
それでも、ほとんどの会社が、一日一度は誰かが来なければいけない状態だったので、
「基本的には、午前中だけは、会社への入室を許可します」
ということを警察が言ってくれたので、出社できるようになった。
だが、鑑識が、捜査を終えるまでは、ロープが張られ、入室は、勝手にできないようになっている。
「殺人事件なので、仕方がないといえば、仕方がない」
ということになるだろう。
そう思うと、警察もなかなか難しい選択に迫られているようだった。
何と言っても、事件の概要がなかなかつかめなかったのだ。
「犯人は、泥棒で、出会い頭に出会ってしまった被害者を、衝動的に刺し殺してしまったのではないか?」
というのが、大方の見方であったのだ。
通報したのは、朝出勤してきて、被害者を見つけた男だった。時間的には、早朝の七時くらいだっただろうか? それから、十数分ほどで、警察がやってきた。
鑑識がせわしなく、そして、冷静沈着に行動する。カメラ班も予断なく、あたりを、パシャパシャ撮影している。
白い手袋をした刑事が後から入ってきて、現状をゆっくりと見渡していた。発見者の男は、少し離れたところで、制服警官から、事情を聴かれているというところであろうか。
刑事は二人だった。
一人の刑事が、
「これは、正面から刺されているようですね。この血の付き具合や、凶器をそのまま抜き取らなかったところを見ると、出会いがしらで、刺したんだろうな」
と言った。
そして、それを聴いたもう一人が、
「そうかも知れませんね。でも、犯人は、ナイフなんか持っていたんでしょうね。凶器をそのままにして逃げたということは、相当慌てていたのか、それとも、自分の指紋が出ないと分かっていたからなのか、どっちなんでしょうね?」
と聞いた。
「そうだな、どちらともいえないが、出会いがしらで刺したのだとすれば、犯人は、ここに誰かがいるとは思っていなかったのか、それとも、何かこちらに入ってくる理由があったのかということなのかも知れないな」
と言った。
「そうですね。まずは、この被害者の身元と、目撃者を当たってみることにしましょうか? それには、まず、犯行時刻の大体を分かっていないとダメですよね?」
ということであった。
「それは、そうだ。鑑識に、そのあたりを確認してみよう」
ということで、二人の刑事は、鑑識の長の人に聞きに行った。
「ご苦労様です。鑑識さんとしては、初見としては、どんな感じなんでしょうか?」
と刑事に聞かれて、
「まあ、ここでは、ハッキリしたことはいえませんが、死因はやはり、胸を刺されても出血多量でのショック死というところでしょうか? ただ、刺し方はプロの仕業というわけではなく、刺し傷としては、素人の仕業ですね。たまたま刺したところが、致命傷に至る場所だったということで、言い方は悪いですが、被害者も苦しむことはなかったと思います」
というので、
「ほぼ、即死状態だといってもいいと?」
「そうですね。その通りですね」
と、鑑識は答えた。
「即死状態というと、これは、どうなんでしょう? 出会いがしらという感じにも見えるんですが?」
と刑事がいうと、
「私も、出会いがしらは結構可能性が高いと思いますね。ただ、凶器をどうして持っていたのかということになると思います。もし、出会いがしらだったとすれば、最初から手にナイフは握られていたと思ってもいいでしょうからね。ナイフを突き刺したまま、その場を立ち去ったのも、出会いがしらだとすれば、分からなくもないです。ひょっとすると犯人は、ナイフを抜き取ろうとしたのかも知れない。でも、もう一度ナイフを触った瞬間、気付いたのかも知れないですね」
というと、刑事が、
「何をですか?」
と聞かれて、
「ナイフを今抜き取ると、血がまわりに飛び散ってしまうということです。そして、自分が返り血を浴びてしまうということ。それを恐れてではないでしょうか? そうなると、このあたりはオフィス街ということもあり、早い時間だったら、人通りも多い。返り血を見られるとまずいというのもあったかも知れない。犯人は、着替えなど持っていなかった可能性もありますね」
ということだった。
「ということは、この殺人は、怨恨で死んだ人を恨んでいたので、刺し殺したというよりも、出会い頭に何かを見られたことで、刺し殺したということでしょうか?」
と刑事がいうと、
「その可能性は高いのではないかと思います。そう考えると、理屈も合うのではないですか?」
ということになれば、犯人は、何かの目的があって、このビルに侵入した。そこで、ナイフを見られたか何かで、怪しまれたのではないか。
「ひょっとすれば、取っ組み合いくらいになったかも知れない。そこで、思わず刺してしまったともいえるかも知れないですね」
と刑事がいうと、
「その可能性は低いかも?」
と鑑識がいう。
「どうしてですか?」
「争った跡がないような気がするんですよ。もし、相手がナイフを持っていたのだとすれば、刺された方は、もう少し身を守ろうとするはずですが、そんな感じはこの死体からは見受けられない。やはり犯人は、何か見られてはいけないものを見られたことで、とっさに刺してしまったのかも知れない。その場で騒がれても困ると思ったんでしょうね。ぼやぼやしていると、相手が冷静になって、大声を出して、人を呼ぶかも知れない。それも犯人にとって、許容できることではなかったんでしょうね」
と鑑識は言った。
「さすが、鑑識さん、するどいですよね。我々もそれを衝動捜査の状況判断ということで、大いに参考にさせていただきましょう」
というと、
「はい、私も大きく間違ってはいないと思っています。その裏付けを、もう少ししてみようと思いますね」
と言った。
刑事とすれば、
「これは、出会いがしらでの犯行で、殺意があったわけではない、ただ、犯人は見られては困る何かがあって、殺すしかなかった状況だったということなのだろう。決めつけはいけないが、初動捜査としてが、これで、裏付けを取ってみようと思う」
ということであった。
「一体、この男は何をしようとしていたんでしょうね?」
と一人の刑事がいうと、
「うーん、一番考えられるのは、空き巣ということではないだろうか? 特に今の時代は先般からの、パンデミックの問題があって、失業者が増え、さらに、行動制限から、オフィスビルが空き巣に狙われる可能性が大きいからな。この犯人もそれが狙いだったんじゃないだろうか?」
ということであった。
「空き巣ですか? 確かに最近は多いといわれていますね。ところでここのビルの警備はどうなっているんでしょうね?」
というので、
「どちらにしても、ビルの管理会社や、他のテナントの会社に話を聞いてみないといけないだろうね」
と言った。
少なくとも一人殺害された。この人は背広を着ていたので、このビルのテナントの中の人なのだろうが、まずは見元を知る必要がある。
「財布や、カバンなど、見当たりませんね」
と、いうので、
「犯人が持っていったということか? そこに何の意味があるというのだろう?」
と、刑事は頭を傾げていたが、ここに、確かに何か事件に重要なことがあったのだが、その時は誰も分かっていなかったのだ。
「だけど、おかしいですよね? この人がこのビルの関係者だったのなら、何も身元を隠すようなことをしなくてもいいはずなのに、わざわざ持っていくというのは、やはり、盗人の本能のようなものなんでしょうかね?」
というと、
「そうでもないかも知れないぞ。いくら何でも、人殺しまでしているんだ。本当に被害者の身元を隠す意思が働いているのだとすれば、持っていっても無理もないが、そうではないということになると、少し事情が変わってくる。もしそうなると、犯人と被害者は、顔見知りだったということも考えられるんじゃないかな?」
「ああ、そうか、その可能性は大きいかも知れませんね。顔見知りだから、殺す必要があったということかも知れない」
「それも一つの考え方だが、まずは、被害者の身元が分からないとどうにもならない。その捜査と、付近の聞き込み、そして、実際に犯人が、空き巣だったとすれば、被害の有無についても、調べる必要があるだろうな」
といい、とりあえず、この場で分かっていることは、出揃った感じだった。
捜査の道筋は初動としては、固まったといってもいいだろう。
捜査本部は、いずれできるだろうが、まずは、この事件の概要を捉える意味で、この建物の構造に、一人の刑事は興味を持った。
そもそも、三階にロビーがあるということに大いに興味を持ち、階下には、駐車場だけではなく、歯医者があるということが面白かった。
一級河川の皮を利用したマンションには、こういう建築方法も多いということは聞いたことがあったが、そんなに多いものだということは、正直聴いたことがあったわけではなかった。
だが、実際に見てみると、実に興味深い。
「仕事でなければ、ゆっくり見物してみたい」
と感じるほどであった。
彼が中学時代、友達が住んでいたマンションも、こんなところだったと記憶している。まだ中学時代だったので、何にでも興味を示す時期で、ちょうどその頃、推理小説が好きでよく読んでいたので、
「このマンションの構造を、何かのトリックに使えないものだろうか?」
と思ったほどだった。
実際に、その頃、自分でも小説を書いてみようと思っていろいろやってみたが、結論として、
「続かなかった」
というのが一番の理由だった。
いろいろなことに興味を持ってしまい、まるで、末広がりのように広がっていく興味は、抱いては消え、抱いては消え状態の中で、どうしていいのか分からないということになってしまったのだ。
そんな中において、推理小説だけは、ずっと読んでいた。読みながら、
「俺だってこれくらい書ける」
と、思いながら読むのだが、実際に書いてみようとすると、数行書いただけで、先に進まないのだ。
「考えすぎるからいけないのかな?」
と感じたが、まさにその通りだった。
「何も考えずに、ただひたすら書いていけば、それでいいんだ」
ということになるのだが、結局、いつも余計なことを考えていて、話が、あっちこっちに行ってしまい、支離滅裂になってしまうのだった。
だが、友達のマンションの構造に関しては。
「もう少しで閃くことができるんだけどな」
という思いを残しつつ、それでいて、意外とあっという間に、考えることを辞めてしまったことを友達に話すと、
「お前らしいな」
と言われたのだった。
その時は、笑い話として終わってしまったが、彼の頭の中で、その時の後悔が残ってしまっていた。
「あそこまで考えていたのに、どうしてアッサリと考えるのをやめてしまったのだろう?」
という思いであった。
考えるのをやめたというよりも、それ以上余計なことを考えて、考えが袋小路に嵌ってしまうのが嫌だったといってもいいだろう。
「これ以上考えてしまうと、また振出しに戻ってしまいそうだ」
という結界のようなところが、彼には分かるようだ。
だからいつも、
「途中までは、素早く頭が回っているくせに、急にそこから先、まるで忘れてしまったかのように、一気にトーンダウンしてしまうのだけど、どうしてなんだ?」
と言われるのだった。
自分でもよく分からない。
分かっているつもりで話をしたり、それ以上を考えようとするのだが、睡魔に襲われてしまったり、急に記憶がなくなったかのような感覚に襲われてしまったりとで、何も考えないという考えに至ってしまうのだった。
今回の事件で、犯人が起こした不可解な行動。それらを考えていると、
「まるで、犯人が自分だったら、似たようなことをしたかも知れないな」
と考えたかも知れない。
だから、今回の事件も、中学時代のマンションの構造の酷似点、さらに、途中まで回っていた頭が急に立ち止まり、これ以上進むと、元に戻ってしまうという錯覚にも似た感覚がよみがえってくるということを感じるのではないだろうか?
「俺って、いつもそうなんだよな」
警察に入ってからも、結局、名推理と言えるところまでは行くのだが、度胸がないからなのか、最期は真実をいつも見失ってしまう。
他の人が見つけた推理を、本来なら自分が見つけるはずだったと思うくせに、
「やっぱり、俺には不可能なんだ」
という、限界を、いつも感じているのには、何かわけがあるのではないだろうか。
それを考えると、今回の事件、
「俺が解決するなんて、どうせ、できないんだろうな」
と考えるのだった。
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