万引き

 

第1話

◯スーパーの事務所


   店員と万引きをした女が向かい合って

   座っている。


店員「どうして万引きなんてしたんですか?」


女「……家にお金が全然なくて仕方なかった

  んです。お願いします。警察にだけは通報

  しないで下さい」


店員「じゃあ、通報しない代わりにその指

   輪を僕にくれませんか?」


女「……これは私の夫の大事な形見なん

  です。それに、これは露店で500円で夫

  に買ってもらったものなんですよ。私が

  万引きした額にも及びません」


店員「それでもいいですよ。でも、あなたが

   それをどうしても渡したくないって言

   うのなら、話は別です」


女「わかりました」


   女は指輪を外すと、店員の前に置い

   た。


店員「ありがとうございます。それでは、もう

   帰って結構ですよ。でも、万引きした

   という事実は消えないので、今後一切

   このスーパーには来ないで下さい」


   女は俯きながら事務所から出て行っ 

   た。店員はそれを確認すると、指輪を

   触りながら独り言を呟いた。


店員「まさか、賢者の石がこんなところで見

   つかるだなんて。でも良かった。これ

   で彼女の病気を治すことが出来る」

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万引き   @hanashiro_himeka

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