第2話 駄菓子屋にて2
楓蓮はチラリと駄菓子屋の様子を確認し、インカムの指示を待つ。しばらくして再度駄菓子屋の様子を覗きこむ。
ふう。と深呼吸し、次にやるべきことを脳内でリハーサルをしながら、「なんでこんなことで緊張してんのよ」と自嘲気味に苦笑した。
普段はハートが強く、人生で緊張したのはピアノの発表会くらいなものだったが、このサークルでの活動は良い意味で緊張感があり、それを楓蓮は楽しんでいた。
そんなことを考えていると黒崎からインカムで鋭い指示が飛んできた。
「よし、今だ!」
指示が飛んだと同時に素早く楓蓮は駄菓子屋に向かい、10円ガムの箱をを入れ替える、、という算段だったがここで予期せぬ事態が発生した。
なんと奥に行ったはずのお婆さんが想定より早く戻ってきたのだ。
一瞬動揺したが、素早く身を隠し頭を整理する。
「一乃瀬の時間稼ぎが足りなかった…?」
本来は一乃瀬がチャイムを押し、適当な世間話でもして時間を稼ぐ間にガムを入れ替えるはずだった。それが失敗したとなると一乃瀬は何をしにきたというのだ。一乃瀬の役立たず。
そんな悪態をつきながらもリカバリーできる策を考えようとするがお婆さんの距離を離す手段はないように思えた。
既にお婆さんと凛空は当たりとガムの交換のやり取りをしており、入れ替えは間に合わない。
そんな時インカムで黒崎からいつも通りの落ち着いた声が届いてきた。
「楓蓮、まだ策はある。当たりのガムは少年にプレゼントしよう。もう1回当たりを引かせた上で一乃瀬、お前が当たり券を少年と交渉して回収するんだ。」
その作戦を聞いた瞬間、一緒に聞いていた一乃瀬は苦笑していた。
当たり券(10円相当)を交渉して子供から手に入れるなんてどんな大人でもやらないだろう。
「ガムの箱は後でゆっくり交換できる。だが今は厳しい。当たり券を回収しないと無限に当たり続けてお店に迷惑がかかるかもしれない。そして少年も当たりすぎてパチンコ中毒者のようにガム中毒者になる可能性がある。そうなる前に当たり券の回収だ」
黒崎が真面目なトーンで話す分、冗談を言ってるのか分からない。どちらにしても回収を急がないといけないのは事実だった。
一乃瀬は気合いを入れる様子で屈伸運動をしていた。
元々自分の引きつけが甘かったせいだが、こうなったらやるしかない。
子供に交渉するのだ。そして当たり券を回収し元の世界にそっと戻す。
「よっしゃあ、いくぜ!」
まだガムは開封されてないかもしれない。そんな期待もしながらゆっくりと凛空に近づき、ノープランのまま声をかけた。
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