第11話 戸惑い
僕は、教室で項垂れながらため息をついた。
女子と戯れる蒼太を見て、窓から見える澄んだ青空を見てはため息をつく。
それを見た蒼太が呆れたように僕の元へとやって来て、向かい側の席に座った。
「あかねちゃんに振られたって、本当だったんだな。」
グサリとその言葉が胸に刺さる。
「ここで、新情報だ。聞くか?」
「いいよ。今は、何も考えたくないんだ。」
喪失感に撃ちしがれる僕とは違って、嬉々として、ニヤリとする蒼太。
「残念だなぁ。あかねちゃんについての情報なのに。」
あかね!その名を聞いて、がばっと起き上がった。
「実はな、生徒会長とあかねちゃんが付き合う事になったらしい。」
「そんなの嘘だ!あかねは、あんな自己中心的な人間が一番苦手なんだ。」
僕が叫んだせいで、何事かと教室がざわめく。
「落ち着けって。もちろん条件付きだ。お前の未来の為にだ。潰されたくないなら、俺のモノにってな。」
それで、あかねは生徒会長、、、東堂圭介を。
「そんな、僕の未来の為なんかに!」
悔しくて手をぎゅっと握る。どうする事も出来ない現実に無力感を感じる。
「それでも、僕はあかねを諦めきれない。未来がどうよりもあかねの本心が知りたい。東堂圭介に負けたくない。」
「だったら、ここで暇していないで、さっさとあかねちゃんを奪いに行けよ!」
蒼太に後押しされて、気合いの入ったまま、あかねのいる隣の教室へと向かった。
隣の教室に行くと、ちょうど黒板消しをしているあかねの姿があった。
「あかね!」
僕が、あかねに声を掛けると、あかねは少し後退りをし、目を晒すと、その場から去ろうとした。
でも、僕は、そのまま教室に入り、あかねの手を握って廊下に出ると、人気のない階段下までやって来た。
「事情は聞いた。でも、それって、あかねの本心?僕は、あかねの本心が知りたい。本当の事を言って欲しい。」
静まり返る中。あかねは悩んだ末に言った。
「私の本心は、、、誠一が好き。でも、誠一じゃ、東堂圭介には敵わない。あの人は、とても執念深いもの。残酷で非道よ。優しさだけじゃどうにもならない事だってあるの」
それを聞いて、気持ちが思いが溢れかえったようにあかねを抱きしめた。
「僕の事は心配しないで。自己犠牲は許さないから。あかねは僕が守る。どんな苦難だって、乗り越えてみせる。」
それを聞いたあかねは涙を流し、こくりと頷いた。
けどーーー。
「ごめんなさい。」
そう言って、涙ながら僕から離れると、あかねは僕の前から立ち去って行った。
その後、僕の考えは想像以上に甘かった事に後で思い知らされる事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます