第10話 思いよ届け
それから、僕は、すぐに行動に出た。
善は急げと言うものだ。
また、うじうじする前に僕の素直な気持ちをあかねに伝えたいんだ。
自宅を出て、隣のあかねの自宅を訪れる。
インターホンを押すと明るい元気なあかねの声が聞こえてきた。
「僕だけど、直接あかねに話したい事があるんだ。時間あるかな?」
心臓の脈が早くなり、手に汗を握る。
しばらくすると、玄関の扉が開き、普段着のあかねが出て来た。
いつもの光景なのにドキドキしてしまう。
「誠一から話って珍しいね!家の中で話す?」
「いや。ここで十分だよ。」
不器用でもかっこ悪くてもいい。とにかく精一杯思いを伝えるんだ‼︎
「あっ、、、えっと、その、、、。」
あかねが不思議そうな顔をする。
「あかねが好きだ!イタズラっぽいところも思いやりがあるところも全部好きだ!」
顔を真っ赤にして、必死に告白した。
本当は伝えたいところはもっとたくさんあるけど、伝えきれないのが悔しい。
しばしの沈黙の後、あかねは、突然な事に驚いた表情をして、口元に手を当てて、嬉しい?表情をしたような気がしたが、急に悲しそうな顔をした。
「誠一、ごめん。その気持ちには答えられないよ。」
「えっ⁉︎」
僕が理由を聞く間もなく、玄関の扉は閉じられてしまった。
「あかね!お願い!理由を教えてよ!僕、何かあかねに悪い事した?だったら謝るから!」
扉の向こうにいるあかねに問いかけたが、返事はなかった。
その時、あかねは扉を背に泣いていた。
声を押し殺しながら涙を流し、最愛の人と思いが通じ合ったというのにその気持ちに答えられない辛さに涙が止まらなかった。
これで、いい。そう、自分に何度も言い聞かせた。
守るべき大切な人の為に。
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