第9話 傷つけたとしても



生徒会長と会ってから、数日が過ぎた。


僕の中では覚悟が決まっている。


問題はこの思いをどう伝えるかだ。


考えているうちに数日が過ぎてしまった。


僕の部屋で、こはるは小さなこたつ台の上に教科書やノートを広げて、迫る期末テストに向けて必死に勉強に励んでいた。


元々、勉強は得意ではなく、運動の方が好きだったみたいで、サボり気味だったらしい。


でも、あかねに学ぶ事を教えてもらうにつれて、やる気が出たとか。


意外に真面目なところがあるんだなと感心する。


僕はというと、自分の机で勉強している。


成績も運動も中間なところだ。


そんな、僕の情報はどうでもいいとして、静かに深呼吸をする。


そして、机から離れて、こはるのそばに座る。


「こはるにちゃんと伝えないといけない事がある。」


そう聞くと、こはるはピタッとペンを持つ手を止めて、僕の真剣な顔を見ると、何かを察知したようだ。


「実は、生徒会長に会った。強引に車に乗せられて、あかねから身を引けって、言われたよ。」


「やっぱりそうなんだ。あの黒塗りの車を見て、そうかなって予想してた。」


いつものこはるらしくない静かさだった。


でも、伝えたいのはこんな事じゃない。


「僕は、あんな心がない人にあかねを引き渡すつもりもない。だって、あかねは僕の大事な人だから。」


大事な人と聞いて、ズキリとこはるの胸が痛む。


「今まで、幼馴染だからって、あかねに甘え続けてだけど、もぅ、辞めたい。変わりたい。強くなりたい。守りたい。僕にとって、あかねはそれぐらい大きな存在なんだよ。」


だんだんとこはるの目から涙が溢れ出てくる。


そして、僕の方へ向き合うと、声を震わせながら僕の服を掴む。


「でも、、、!私だって、あかね姉に負けないぐらい誠一兄の事が好きだよ!どんな誠一兄でも受け入れるし、ずっと一緒にいたいと思ってる。」


僕は、気持ちを落ち着かせながら、こはるの手を取り言った。


「こはるの気持ちは十分に分かってる。気持ちは凄く嬉しい。でも、僕にとって、こはるは仲のいい従兄妹であり、可愛い妹みたいな存在なんだ。」


それを聞いて、こはるは溢れる涙を流しながら小さく泣いた。


「僕が好きなのはあかねだ。随分と遠回りして気付いた。これが、僕の答えだ。」


涙を拭いながらこはるは僕のことを良い意味で変わったねと言ってくれた。


そして、精一杯の笑顔で言った。


「絶対に生徒会長に負けないでね!」


そう言って、部屋を出て行ってしまった。

当然と言えば、当然だろう。


でも、これが僕の本心なんだ。





























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