第7話 嵐の予兆



赤髪の男がしがみつく僕を引き剥がそうと拳を何度も振り下ろしてくる。


頭に拳を振り下ろされても顔があざだらけになっても僕はその手を離そうとしなかった。


赤髪の男はさらに苛立った様子で、僕の首を両手で締めてきた。


苦しい。


死にたくないなら諦めろと言わんばかりに本気だった。


あかねは寄ってくる輩にキッと睨みを効かせて、あかねをやらしい目で見てくる巨漢の男の股間を思いっきり蹴り上げた。


「ーーーーーーーっ!!」


声も出せない程の壮絶な痛みだったようで、男は股間を抑えて地面に崩れ落ちた。


続いてもう一人のパーカーを被ったひ弱そうな男を睨む。


次はお前だというように。


男はひっと、小さく悲鳴を上げてその場に硬直する。


あかねはその隙を狙って、誠一の元へと走った。


僕は、苦しもがきながらも必死に耐えた。


相手の体を掴んでいた両腕を離し、今度は相手の両肩を掴んだ。


そして、力の限り渾身のづつきをくらわせた。


その途端に首絞めから解放され、地面に倒れる。


呼吸が荒々しいけど楽になった。


早く、、、早く、あかねのところに向かわないと‼︎


赤髪の男は額を抑えて何かをブツブツ言っている。


意識が朦朧としながらもフラフラと立ち上がり、前へと進み出そうと歩を進めた時、体に力が入らなくて、倒れそうになった。


地面に倒れると思った。


その時、柔らかな感触と聞き覚えのある声が聞こえた。


「誠一!」


あかねが倒れそうになった僕を受け止めてくれたんだ。


あかねの顔を見るとふいに涙が出そうになった。


でも、まだ安心は出来ない。


あの男がいる。


「もぅ、我慢できねぇ。あいつの命令だったから手加減していたが、やめだ。ぶっ殺す。」


額から薄っすらと血を滲ませながら、赤髪の男は言った。


さっきとまでとは違う目つきで、血走った狂気じみた目つきだ。


じりじりと一歩、、、また一歩と近づいてくる。


あかねを守らないとと思ったが、これ以上は踏ん張っても力が出ない。


それを分かってか、あかねが僕を守るように抱きしめて、相手に睨み効かせる。


赤髪の男が僕達の正面に来た。


僕らは、ぎゅっと目を瞑り強く手を握り合った。


その時だった。



「警備員さんーーー‼︎こっちです‼︎」



なんと、絶体絶命の状況でこはるが警備員を呼んでくれたのだ。


数名の警備員の姿を見た赤髪の男は舌打ちをし、唾を吐いて、仲間を連れてその場を去って行った。


こはるは僕達の姿をみて、また、泣いてしまったが、全員無事で良かった。


サークル巡りをしたかったけど、この状態じゃ、出来ないから大人しく自宅に帰ることにした。


今回は残念だったけど、また、イベントは開催されるし、その時に行けばいい。


それより気がかりなのは、あの赤髪の男が言っていたあいつの命令って?


誰かに言われてここに来たのだろう?


だったら、最初の事を考えると狙いはあかね?


なぜ、ここまでして、あかねを狙っているんだろう?


こはるが疲れたのか、僕の肩に寄り添いながら寝息を立てて、静かに寝ている。


あかねは真剣な眼差しで、電車の窓の外をじっと見つめていた。


これから嵐が来るのを予兆していたのかもしれない。































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