第2話 (恋のライバル⁉︎)
その日の夕方。
あかねは、いつものように僕の部屋に来て、珍しく必死に勉強をしていた。
あかねが僕の部屋で勉強って珍しいなぁ。
僕は、感心しながら静かにみこりんの雑誌を見ながら静かに見守る事にした、、、のだが。
「没収。」
いつの間にかあかねは僕の目の前に立ち、僕から雑誌を取り上げた。
「なっ、何するんだよ!」
「もうすぐ、期末テストだよ!誠一もみこりんにばっかり夢中になってないで、将来のこと考えたら?」
「分かってるよ!どちらにしろ、農家の両親の後を継ぐんだし、勉強したってっ、、痛ったーーー‼︎」
パコーン‼︎と、痛快な音が部屋に響き、あかねはみこりんの雑誌を丸めて、僕の頭を叩いた。
僕の大事なみこりんの雑誌がーーー‼︎
「バカ‼︎だから勉強するんじゃない。ちゃんとやってないと後で後悔するのは自分なんだよ。」
「分かりました。」
情けない姿で、机から教材などを出し、あかねと一緒にテーブルに向かい合う。
すると、一階からガラガラと玄関の扉を開ける音がして、しばらくした後、一階から二階へと階段を登る木の板が軋む音が聞こえた。
そして、襖がスッーと開いた。
襖を開けたのは、僕の母、池田安子だった。
両手にはお盆に2人分のコップに麦茶が注がれている。
「あら?あかねちゃん来てたの。勉強なんて偉いわね。ボロ屋だけど、ゆっくりしていってね。」
そう言いながら、母さんは麦茶が入ったコップを僕達の前に置いていく。
「母さん!用がある時は声を掛けてから、襖を開けてって!」
「安子おばさん。いつもお世話になっています。今日は、誠一君と期末テストの為にお邪魔させて頂きました。少し騒がしいと思いますが、誠一君と勉強を頑張りますね。」
今までとは別人の如く、あかねは僕の母さんに向き直り丁寧に挨拶をした。
なっ!
「まぁ、そんなかしこまらなくていいのよ。誠一。幼馴染だからって、未来のお嫁さんに手を出したらダメなんだからね!」
「うっ!うるさい!」
バタンッと、息を切らして、襖を閉めた。
母さんが続けて何かを言いたげだったが、遮断した。
諦めたのか、一階に降りていく足音が聞こえる。
ふぅと、ため息を吐くと何やら背後から嫌な予感がした。
「誠一の未来のお嫁さん♡」
「‼︎」
振り返るとそこにはさっきの真面目なあかねは何処へやら。
妄想を膨らませ、両手を頬に目をうっとりさせているあかねがいた。
すぐに危険を察知した僕は慌てて、窓から逃げようと、窓近くの机がある方へと走ったが、、、
「だーめ。」
「うぐっ。」
日頃から運動をしていないせいかあっさり捕まってしまった。
僕は机に両手を置いて、背後からあかねに抱きつかれる。
あかねの大きな胸が背中に当たって感触がというか、、、柔らかい。
それだけで、ドキドキして顔が赤くなって熱ってしまう。
「誠一。」
きゅっと、頭を擦り寄せながら、フッと、僕の首筋に吐息を掛け呟く。
「もし、私が誠一のお嫁さんだったら、どう思う?」
「どうっ、、、って?」
ドクンドクン。
目がぐるぐる回る。
こんな状況で考えられるかー‼︎
僕の心拍数は爆発寸前だ。
その時だった。
入り口の襖をぶち壊すかの勢いで、誰かが僕の部屋に乱入して来た。
「この変態‼︎乳牛女‼︎あんたにだけには誠一兄は渡さないから‼︎」
「は?」
「は?」
その場が一瞬、固まった。
目の前に現れたのは、つり目気味、茶髪のハーフツインテールに赤いリボンの小柄なミディアムヘアの少女。
僕達と同じ制服を着ている。
「誠一。誰?この子。ってか、人の事を乳牛女って、失礼じゃない?」
あわわわ‼︎
謎の少女とあかねの間で、火花が飛び交う。
「誠一兄!私の事、忘れたの?従兄妹の池田こはるだよ。」
「こはる⁉︎こはるって、あのチビのこはるがなんで、痛ってー‼︎」
チビと言った途端に誠一の筆箱が誠一の顔にクリーンヒットした。
こはるとは、見た目は幼女のようだけど、同い年で遠い親戚なはずだが、なんでここに?
「あらあら、どうしたの?喧嘩でもしたの?」
するとすぐ様、こはるは僕の方を指差して、母(安子)に誠一兄があのお姉さんに手を出そうとしてたと嘘を言った。
すると、母さんは穏やかな顔から般若の顔へと変わり。
「言ったそばから!誠一‼︎」
「誤解だーーーーーー‼︎」
「で、なんでこはるがここにいるんだ。」
僕は大きく頭に膨らんだ痛むたん瘤を摩りながら言った。
こはるはむすっとムスッと頬を膨らませながら、小さくうずくまって黙っていた。
「黙っていちゃわからないでしょ。」
追い討ちをかけるあかね。
その言葉にさらにムッとするこはる。
こはるは、昔、従兄妹でもこはるの母が再婚した連れ子だった。
つまり、僕とこはるには従兄妹でも血の繋がりのない。
でも、僕には可愛い妹の様な存在だった。
一時的に幼少期にここに連れてこられたこはるだったが、人見知りで、人に懐かない性格ゆえか、従兄妹達の中でも孤立していたのを覚えている。
しばらく、だんまりを決め込んでいたこはるだったが、何か覚悟を決めたのか、一呼吸をすると。
「家出した。」
小さくボソッと呟いた。
「はーーーーーーーーっ!」
僕とあかねは同時に叫んだ。
「だって、仕方ないじゃない!やっと、誠一兄と同じ高校に入学したのに誠一兄は、全然私に気付いてくれないし。それどころか、この幼馴染の美野あかねとイチャついてるし。こうでもしないと、気付いてもらえないでしょ!」
イチャついてるっていうのは、、、。
あーと、納得するあかね。
「家にいてもお父さんもお母さんも共働きで、寂しくて、新しい弟には馴染めないし。独りぼっちで、小さい頃にここを思い出して、叔母さんに連絡したら一緒に住んでもいいって言ってくれたから、、、。」
「こはる。」
「とにかく、誠一兄のお嫁さんになるのは私だから!あんたには負けない!」
ビシッとあかねに宣戦布告したこはる。
「へぇ。私に宣戦布告なんていい度胸じゃない。私だって、誠一を思う気持ちなら負けないんだから。」
なっ、何がどうなってるんだー??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます