第12話 ライバルの出現⁉︎




体の痛みが癒えた一週間後。

僕は、あかねがいるクラス。

1年2組の扉の前に立っていた。


一年は同じ階に3組までしかクラスがない。

僕は1組で、隣のクラスだ。


僕は、勇気を振り絞って、2組の扉の取手に手をかけ、扉を開けた。


「⁉︎」


そこには、ちょうど、移動教室だった、あかねが音楽の教科書などを腕に抱えて、立っていた。


「あっ、、、。」


いきなり、あかねが出て来て、声が籠ってしまった。


僕を見たあかねは、驚いた顔をしていた。


何故、ここに僕がいるのかと?



すると、あかねの横から不思議そうに友人であろう人物が、顔を出した。


「どうしたの?あかね?」


あかねは、はっ!と、して、何もなかった様に僕の横を通り抜けて行った。


「あかね‼︎」


ピタッと、あかねの足が止まる。



「おっ、、、。おはよう。」



たった、一言だったけど、僕からの精一杯の言葉だった。




「おはよう!誠一!」




あかねは、先程とは違う。


学校では見せない。


満面の笑みで振り返りながら、返事をくれた。



その光景をポカーンと、見るあかねの友人。


友人だけじゃない。


陰キャオタクと学校一の美少女が苗字ではなく、お互いの名前で呼び合い挨拶をした。


それは、瞬く間に学校中に噂になった。




僕は、自分のクラスに戻り、昼休みを過ごす。


いつもは、1人でお弁当を食べた後、寝たふりをするか、図書室に逃亡するのだがーーー、、、。


この日は違った。


「誠一。あーん♡」


あかねが僕がいる1組にやって来て、僕の向かい側の席に座り、自分のお弁当の卵焼きの一切れを箸に取って、僕に口にする様に向けた。


教室の視線は一気に僕達に集中し、驚愕する者もいれば、コソコソと噂をする者、悔しそうに恨めしそうにする者もいる。


「やめろよ!こんな人前で!」


「いいじゃん!私と誠一は友達なんだから。」


「友達同士はこんな事しないだろ!」


照れ隠しで、僕は顔を背けて、自分のお弁当を頬張る。


むすっと、頬を膨らませ、あかねは卵焼きを自分の口の中に入れた。


「恥ずかしがる事ないのにー。」







僕達の間に少しの沈黙が流れる。






僕は、とにかく周りの視線からこの場を離れたかったが、覚悟はしていた。


みんなは接点の無かった僕とあかねが、急に仲良くなって、2人でお弁当を食べているのが、不思議で堪らないのだろう。


今まで、僕があかねに学校では絶対に僕に関わらない様に!と、口止めしていたから、、、。


他人の様だった2人が、急に変わってしまったのだから。


僕は水筒のお茶を口に含みながら、窓の外の校庭を眺めた。



そこにはーーー。



「池田誠一君ーーー‼︎」




僕は校庭のど真ん中で、僕の名を叫んでいる人物を見て、思いっきりお茶を吹き出してしまった。


「ちょっと!何してるの!」


あかねが、驚いて、僕と同じ様に窓の外の校庭の方を見た。


「会いに来たよ!誠一君!」


「あれは、あの時の⁉︎」


僕は、窓から顔を出して、その人物を凝視する。


あかねも、どうしてここにと、不思議そうな顔をする。




「魔法少女みこりん⁉︎」




僕とあかねは、同時に同じ言葉を発していた。






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