第10話 溢れる思い





その瞬間だった。




金色の閃光。

バキッと、鈍い音と共に赤髪の男は、金髪短髪少年の右拳一発を顔面に受けて吹っ飛んでしまった。





「大丈夫⁉︎」




崩れる様に倒れる僕を抱き止めたのは。


よく、見慣れた、、、、、。





金髪にツインテール、青色の大きな瞳が印象的な、、、



魔法少女みこりん?



えっ?



これは、夢なの?

殴られたせいで、夢と現実がごちゃ混ぜになっているのか?



「間に合って良かった。」



金髪短髪の少年が、急いで走って来たのか、息を切らしながら言った。


そして、少年は道の端で伸びてしまった、赤髪の男を一目見て、残りの輩である二人組を睨み付ける。


「こうなりたくなかったら、こいつを連れてさっさと去れ!」


二人組は一瞬にして縮こまり、あかねを即座に解放して、赤髪の男を抱えて、そそくさに少年の言う通りに逃げる様に去っていた。




「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


すぐに僕の元へ駆け寄って来たあかねは、泣きながら必死に僕に謝っている。


その涙は、僕の腫れ上がった瞼や頬にポタポタと落ちて来る。


「大丈夫。大丈夫だから。泣かないで。あかねは悪く無いから。」


「でもっ、、、私のせいで、誠一を怪我させて、、、」


言葉を詰まらせながら、謝罪の言葉を紡ぐ。


「悪いのは、あいつらだから。あかねは悪く無い。自分を責めないで。それより、あかねは大丈夫なの?」


僕がそう言うと、あかねは自分の唇を強く噛み締めて、ボロボロの僕を優しく抱きしめた。


「本当にギリギリセーフで良かった!」


魔法少女みこりんにそっくりの少女が、ひょっこりと、僕とあかねの間に割って入って来た。


「極稀にこういうイベントに乗じて、マナー違反者が紛れる事があるから、君の声が聞こえて、駆けつけて来て良かったよ。」


あかねの方を見て、金髪の少年は言った。


「お兄ちゃんは、護身の為に空手を習ってるから、役に立って良かったね!」


「あぁ、今日は、妹が魔法少女みこりんのイベントに行きたいって言って、連れ添いで来たけど、来て良かったよ。」


「助けて下さって、ありがとうございます。」


力なく、僕は金髪兄妹の方を向いて、お礼を言った。


すると、みこりんそっくりの妹であろう、少女の方が、にっこりと笑顔で言った。


その姿はリアル魔法少女みこりんそのもののよう笑顔だった。


「どう致しまして!2人とも無事で嬉しい!」


そう言いながら、金髪の少女はバックの中から、可愛らしいデザインの絆創膏を取り出して、僕達に差し出した。


「良かったら使ってね!」


「それでは、失礼します。」


金髪の少年が一礼して、妹の手を引きイベント会場側へと向かって行った。


その際、少女が誠一の方へ振り向いて、パチっとウィンクしたのは気のせいだろうか?



少年達が去った後、僕がフラフラと立ち上がると、あかねが心配そうに寄り添う。


何も言わないが、言えないのだろう。


「安心して。イベントはこれからだから。これからが、本番だから。一緒に楽しもう!」


再び、あかねの瞳から涙が溢れる。


僕は指で、あかねの涙を拭う。


「また、泣いて。本当に泣き虫なんだから。本当に考えるより、行動が先で、昔から心配ばかりかけて、、、」


子供のように泣きじゃくるあかねをあやす。


エロくて、思いやりのある素直な子だけど、泣き虫な幼馴染。

でも、誰かが支えてあげないと壊れてしまいそうな危なっかしいそんな子。





「誠一の友達になる!」


「えっ?」


きよっとんとする僕を真剣な顔で見つめるあかね。


そして、右手でぐいっと涙を拭って、笑顔で言った。




「誠一の一番目の友達になって、一番の友達になる!」






あかね、、、。




涙でぐちゃぐちゃになっても美しい顔は変わらない。

眩しいくらいの笑顔。



「そして、誠一の日本一のお嫁さんになる!」


「それは、気が早過ぎ。」



嬉しい。嬉しい。



今まで、一度も友達が出来た事が無かった。


陰キャだとか、オタクだとか気持ち悪いって、言われて、ずっと、1人だったけど、あかねが居たからこそ耐えられたんだ。


「ーーーーーーーーうっ!」


「どうしたの⁉︎誠一‼︎どこが痛い?言って‼︎」


急に泣き出した僕を心配して、あかねは慌てふためく。


「違う。あかねの気持ちが嬉しくて、、、。僕には友達なんて、出来ないって、、、思ってたから、、、。初めての友達があかねで嬉しくて。あかねが居たからこそ、今まで、僕、耐えれたんだって。」




「誠一、、、、、。好きーーーーー!!」





途端にあかねから強くギュッと、抱きしめられた。


「痛たたたたたたた‼︎傷が‼︎ヤバイ。」







それから、僕達は、しばらく休憩した後に会場側に戻りサークル巡りをして、たくさんのグッズを購入して、大満足だった。


僕がスケブをお願いする時、しどろもどろになっていると、あかねがすぐに僕の代わりにサークル側さんにお願いして、描いて貰えた。


あかねには感謝で一杯だ。






地元の田舎の歩道道、、、、。



お互いの家の前の近くにたどり着く。


僕は、ポケットから取り出して、所々へこんだ、小さなシルバーの文字の装飾がされた黒い箱を開けてあかねに渡す。


「これ、、、殴られた時に箱がへこんじゃったけど、、、ネックレス。」


それは、あかねの為に用意した誕生日プレゼントだった。

あかねのラッキーカラーである赤色のパワーストーンがはめられたシルバーのネックレスだ。


「今日は、あかねのおかげで楽しかったよ。こんなだけど、受け取ってくれるかな?」


「もちろん。」


夜空で肌寒い中、あかねの白い頬が薄っすらと赤く染まる。


僕は荷物を下ろして、向かい合わせでネックレスをあかねの首に付ける。


「誠一。ありがとう。」
















「じゃぁ、またね。」



あかねは赤く染まる顔を隠しながら、自宅の門を開けて、すぐに家に入って行った。






誕生日プレゼントのネックレスを付けた時。



柔らかなふんわりとした、温かな感触が、自分の唇に触れた。



何が、起こったのか分からなかった。



キスした?



あかねが?




僕にキスをした?









僕は、冬の冷たい風が吹く中、立ったまま思考が停止していた。









その頃、金髪兄妹は洋風の豪邸に居た。


「そう言えばさ、あの時の男の子って、あの地域の子なのかな?」


金髪の少女が紅茶を飲みながら、魔法少女みこりんのぬいぐるみを抱いて、今日のコミックイベントの戦利品を眺めながら呟いた。


「さぁな?気になるのか。」


誠一の事を思い出しながら少女は言った。



「私、あの男の子に会いたい!」










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