第3話我慢できない
一階の玄関の方からガラガラと扉を開ける音が聞こえた。
しばらくすると、軋む音と共に階段を登る音がして、僕の部屋の襖の扉が、声を掛けることなく開かれた。
「あら!やっぱり、あかねちゃんが来てたのね!」
僕の母。池田安子は、にっこり顔をほころばせながら、さっき、台所で注いできたであろう湯呑みに入ったお茶と茶菓子をお盆に乗せて持って、部屋に入って来た。
「母さん!部屋を開ける時はいつも声を掛けてって言っ、、、」
言葉を続けようとした時、あかねによって遮られてしまった。
「安子お母様。いつも農作業、ご苦労様です。誠一と学習をしようと思って、お家にお邪魔させて頂きました。」
あかねは、僕の母さんに向き直ると、さっきとは別人の如く、礼儀正しく頭を下げて言葉を述べた。
「まぁ、まぁ、そんなにかしこまらなくていいのよ。ボロ屋だけど、実家だと思ってゆっくりしていってね。」
そして、母さんは誠一に向き直ると釘を刺した。
「まだ、高校生なんだから、未来のお嫁さんに手を出しちゃダメよ。分かってる?誠一!」
「余計なお世話だよ!」
逆に襲われる‼︎
僕は母さんからお茶や茶菓子が乗ったお盆を受け取ると、強引に部屋から追い出して襖を勢いよく閉じた。
「-ったく、うちの母さんは。」
頭を抱えつつ、再び元の位置に戻ろうとしたその時、あかねの表情を見て僕は固まった。
「誠一のお嫁さん♡」
頬に両手を添えてうっとりするあかね。
やばい。
この状況は非常にやばい。
とりあえず、お盆を近くの机に置いて、あかねから距離を取ろうとしたその時だった。
背後から突然抱きつかれて、直接あかねの手が僕の素肌に触れる。
そういえば、シャツのボタンを止めてなかったー!
全開状態のまま。
すすすっと、柔らかい手の平が胸やお腹をつたい、時にはスーッと人差し指で焦らす様に首と鎖骨あたりを撫でて来る。
その度に固まってた体が、フルフルと震えて、触れられる度に感じた事のない感覚に自然と声が漏れそうになる。
体は熱く、緊張は絶頂に達しているのに抱きつかれている事で、あかねの大きな胸が背中に押しつけられて、、、、
色んな意味で、絶体絶命!
すると、あかねが僕の首筋をぺろっと舐めて艶っぽく呟いた。
その途端に僕の体はビクンと反応した。
「しよ♡」
有無を言わさず、背を向けられた状態のまま、僕の腰の横から顔を出しながら、ベルトに手を掛け外していく。
抵抗しようにも体に力が入らなくて動けない。
僕の秘部にズボンの上から手を当てながら、あかねは微笑み言った。
「気持ちは別でも体は正直なんだね。誠一のエッチ。」
その言葉に顔がさらに真っ赤になる。
僕だって男だ!
そりゃあ、女の子からこんな事されたら堪らないよ。
「誠一。私の方を向いて。」
沈黙が続く。
僕はどうしたらいい⁉︎
このまま、あかねを受け入れるべきなのだろうか?
それとも、、、
いろいろな考えが頭の中をぐるぐると巡って行く。
「私の事が嫌?」
「えっ⁉︎」
予想外の言葉に思わず振り返った。
その時のあかねの表情は真剣そのものだった。
少し目尻には涙を潤ませてはいたが、僕の目を真っ直ぐ見ていた。
いつも、嘘、偽りのない、真っ直ぐな美しい瞳だ。
ただ、違うのは笑顔がない。
いつも悪ふざけしながら、僕を揶揄うのに。
「あかね。僕は、君の事は好きだけど、それは、それは、、、、」
-----それは何だ?
僕にとって、あかねはどんな存在なんだ?
ただの幼馴染?それとも、、、
「なーんてね!冗談!」
あかねは、また、いつもの笑顔になって、僕に笑いかけた。
「私は諦めないから。覚悟してね!」
そう言って、再び僕に抱きついた。
けど、何だかモヤモヤする。
すると、再び襖の扉が突然開かれて、そこには様子を見に来た母さんが立っていた。
「誠一!あんたって子は!言った側から!」
「違う!誤解だー!」
こうして、この日の僕の貞操は守られた。
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