夢の終わり




美しい自然、街のパレード、海の夕焼け、地域によって変わる食べ物。


どれもが、ミラには新鮮で新しい発見だった。


旅をしていく中で、二人は打ち解けていき、いつの間にか笑い合っていた。


このまま、夢の様な時間が続けばいいと思った。


だが、男性が家に戻るとミラは吐血し、倒れていた。


男性は、必死にミラの名を呼びかけ、起こそうとする。


すると、目を覚ましたミラは力無い声で、ありがとうと小さく呟く様に言うと、二度と目を覚ます事はなかった。


男性は、声が枯れる程に泣き叫んだ。



その後、雨が降り頻る中、傘も差さずにミラの墓跡の前に立つ。


人はいつか命が尽きる。


ミラの様な人間は見た事が無かった。


まるで、太陽の様な女性だった。


オレの凍てついた氷の心は、ミラの暖かな温もりによって、溶かされてしまった。


もぅ、ミラはこの世にいない。


すると、教会の方で、男女が騒ぐのが見えた。


「いーやーだ‼︎」


「一度でいいからお願い!ここでお祈りすると願い事が叶うって噂なの!」


少年は少女に腕を引っ張られて、必死に抵抗する。

 

「お願いって、うわっ‼︎」


少女が雨水に足を取られて、滑って転んでしまう。


それを見て、少年は手を差し伸ばすも大笑いする。


笑わないでよと少女は笑顔で、その手を取り去って行った。



再び、墓石に向き直り立ち去ろうとした時だった。


ミラの墓石の上に全身が真っ黒で顔も見えない、人の形をした何かがオレに言った。


小瓶に赤い液体が入った物を差し出しながら。


「お前の願いは、俺が叶えてやるよ。」







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