過去の夢




キレイな小川が流れる横に立つ、古びた小さな教会。


窓からは、暖かい太陽の日差しが差し込み、教会内を明るく照らしていた。


前方の中央、十字架の前で神にお祈りをするケープを纏った、白いワンピースに銀色のウェーブがかったロングヘアーの女性。


その顔は、穏やかで優しさと温もりに溢れていた。


その女の隣には長身で全身黒尽くめの男性が不釣り合いに立っていた。


「死が怖くないのか?神に祈ったところで、お前の病は治らない。なのに、何故、神への祈りを辞めない?」


男性は女性に問いかけた。


女性は男性ににっこりと微笑むと再び、お祈りをする仕草を取りながら、その問いに答えた。


「怖くないと言ったら嘘になります。でも、こうして、太陽の温もりを感じて、空や花の美しさをこの目で見れて、人の優しさに触れる事が出来て、私は幸せ者です。」


「幸せ者だと?」


男性は、当たり前の事が幸せだと言う、この女性の言う事が理解出来なかった。


女性は男性へ向き直り。


「私は、不治の病であっても神様に感謝しているのです。」


「!?」


「この世界に生まれてきて良かったと。」




そう答えた女性は、輝かしい、汚れのない笑顔で答えた。



その瞬間ーーーーー。


男性の冷えた氷のような心は、眩しい太陽の光に照らされた様に、衝撃を受けた。


自ら死を受け入れ、死の運命を変えようとしないのか?


それどころか、神に感謝しているだと⁉︎


男性は、そんな、人間に出会った事が無かった。


誰もが生に執着し、運命に抗い、死を恐れ、慄いた。


しかし、この女性は違った。


「、、、名は、なんと言う?」


女性は笑みを浮かべ”ミラ”と自らの名を言った。


「もし、願いが叶うならば何を願う?」


女性、、、。ミラは、しばらく考えた後に言った。


「願いが叶うのであれば、、、この命と引き換えになっても世界を見たいです。

窓越しや本で見る世界ではなく、本物の世界を。」


「ならば、共に行こう。ミラ、お前の願いは俺が叶えよう。」


それを聞いて、ミラは目を大きく見開いた。


そして、二人は手を繋ぎ、教会を出た。






















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