第9話 スタートダッシュ
― pi、 pi、 pi、…… ―
コクピットのモニターに流れる時計が一秒毎に
〚……スタート予定時刻まで一分を切りました。御二方とも準備はよろしいですかな?〛
今夜の鉱山には……運営のトレーラーから放たれた“照明と撮影を兼ねたドローン”が所狭しと飛び回り、主なコースに使われる部分以外にも必要十分な照明を供給している。
「ああ……問題ねえ」
俺は狭いコクピットで
― バッ……バッ…バッババババババババ!! ―
コクピットの背後に位置するジェネレーターパックから重い始動音が響き、駆動軸がゆっくりと加速を始める。そのまま暫く……やっと自発回転を始めた。
『ちっ……分かっちゃいたが
運営のアナウンスの後……機体の状態をモニタリングしている錠太郎の声が、ヘッドセットから聞こえてきた。エンジンノイズが心配だったが無線の調子は問題なさそうだ。
「仕方ねぇよ。
(それにしても……)
奴等はこっち以上に燃費が苦しい筈なのに……昼間の
(アレが出来りゃあ油圧回路の温度がより早く
だが……奴らのマシンは元々燃費に不安がある
『そうだな……だが、奴らは絶対に何処かで燃料の
「ああ……マジでスタートはガッツリ決めてやる! “
それに続いて……ヘッドセットから
〚……スタートまで15秒……10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0!!!!〛
瞬間……俺は“転倒する?”と錯覚する程マシンを前傾させ駆動脚に装備されてる“
― ガリガリガリガリガリガリッ ―
足元から凄まじい擦過音が響く。
「クソッ! ミスった!!」
ほんの少し……気が逸って駆動力の配分を多くしてしまった。機体の重量が軽い分、駆動力が過大だとスリップする事は百も承知だったのに……
― ドンっ ―
その瞬間……俺の視界の隅に真赤な四脚のマシンがスタートするのが映った。
「ちっ……!」
かろうじて前傾でバランスしていた機体の
『焦るなテツオ! 奴らのマシン、思ったよりダッシュは鋭くねぇ。まだ十分に最初のコーンは
錠太郎の言う通り……俺の視界には何故か先行した筈の赤いマシンがぐんぐん迫って来ていた。
(なんだ……?)
その光景に感じる強烈な違和感……だが現実に思考が追いつく前に、俺のマシンは奴等をパスし、最初の“
『あっ!! クソッ……奴等……クソ!! テツオ!!
俺の耳元に爆発した声に、錠太郎本気の焦りが伝わる。俺は最大加速から急ブレーキを掛け、次のコーンに向かおうとして……
「なっ???」
やっと姉御達の思惑を理解した。
赤い四脚のマシンは……設置された
『やられた……これで俺達は残った
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