13.ゾンビとメイドにはチェンソーがよく似合う
チェンソーのエンジンの音が不思議と心地よかった。
まるで音楽だ。
あ、いけない。
『
メロディーが耳にこびりついて離れてくれない。
♪戦えオックス(マン×3) 命ある限り(バン×3)♪
♪黒鉄の
♪決心の覚悟を背負い 突撃進行♪
♪抗えオックス(マン×3) 愛ある限り(バン×3)♪
〈主演俳優〉『おのれ! 悪の組織〔シュタイン〕。必ず俺の手で滅ぼしてやる!!(ひどい大根演技)』
ぶろんぶろんぶろろろろ。
「雲──〝アララ〟。お前の力でなにが出来るのかな?」
『分かりやすいところだと子蜘蛛を脳に寄生させて操る、かなー。でも
「そもそも気持ち悪いから却下」
『えー! 私の能力を気持ち悪いなんて言わないでー。泣いちゃうよ?』
どうぞ、ご勝手に。
どうせウソ泣きだ。
「他には?」
『蜘蛛の糸が出せる。どばどばっとー』
「そっちのほうが分かりやすくて良いや」
『でも気をつけるんだよー。大いなる力には大いなる──あ、この場合の代償ってマコトさんの命って展開ワンチャンある? だったら無責任にお使い下さい。どうぞどうぞー』
なにを言っているのか、さっぱり。
流石はアナンの妹。
「カケル君。いい加減、危険だからそれを渡しなさい。私が処理しておく」
手をこちらに差し出す
認めたくないが正しい。
この赤い防犯ブザーは確かに魔法少年に変身することが出来るが、悪行の数々を行ってきた怪人の魂が宿っている。
呪いの一品と言っても差し支えない。
実際、「はい」と渡して握りつぶして欲しい気持ちもある。
「僕、思うんだけど……マンマリーにはまだ善意が残ってる。だったら僕等の脳みそは諦めて欲しいんだ。そしたら僕等はもうここには現れないし、戦おうとも思わない。出来るかな?」
「それはアトムスの完成を諦めろ、と?」
「……うん」
「未完成のまま、あの子に回路が焼き切れるまで機能し続けろ、と?」
「アトムスが壊れそうになった時、本当に焦ってたよね。完成しなくたってふたりはもう親子──」
──────っ!?
僕の足元に向かって液体が飛んでくる。
とっさのことで驚いたけど、壁に向かって蜘蛛の糸を飛ばし避ける。
──……チェンソーから蜘蛛の糸出るんだけど。
液体が付着した床はどろどろと溶けていく。
当たっていれば両足を失っていた。
『──このババア! 御主人様が世間知らずムーブかましてる時に攻撃たぁ良い度胸だなオイ! わからせ
「黙っていろ
命に価値ってなんだよ。
死んだら終わりだ、お前が奪った。
その子供たちに救いなんてない。
止まらないなら、僕が終わらせないと。
チェンソーから蜘蛛の糸を発射し、マンマリーの身体に巻きつく。
はらおうと動くが余計に巻きついていく。
僕は釣りの容量でチェンソーを引く。
引っ張ると、マンマリーは一歩ずつこちらへと近づいてくる。
死刑台を一歩ずつ登っていく罪人のように。
「離せっ! このままでは終われない!!」
『ねえ、御主人様。なんでアイツがあんなに惨めったらしく足掻いてるか分かるかなー? 人間てのは自分が生きた証をこの地球っていう退屈で中身のない球体になにかしら残したいの。だから子作りしたり、絵を描いたり、詩を読んでみたりするの。生きるって
そっか。
確かにこれは
するとしても善悪をひたすら迷って拳を振るうんだろう。
もしかしたら見逃してしまうかもしれない。
「これが正義の行いじゃないなら、それでもいい。マコトが出来ないことなら僕が見極めて
その前提を忘れてはいけない。
手の震えは気にするな。
「博士。勝手ニモード変更シテシマイ、ゴメンナサイ」
綱引きのように蜘蛛の糸を引かれ、怪力でぶちぶちと引き裂かれる。
──これが鉄人。
誰かさんの面影が重なったような気がする。
「──……アトムス」
「ナンデ、メイド服?」
「あ、わかんない!」
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