12.変身!赤の魔法少年の誕生
防犯ブザーだ。
なんの変哲もない、学校の帰りの会で「不審者に遭遇した時に鳴らなかったら困るのでみんな教室内で鳴らしましょう」と一斉に鳴らすあれだ。
学校の帰り道、鳴るか鳴らないかギリギリの強さで紐を引っ張ってドキドキしながら遊んだ(結局鳴らしてしまう)。
市販にあるようなデザインだけど、謎の丸箇所には蜘蛛マークがあり、赤かった。
──そして意思を持ったように言葉を発する。
変態アナンの発明品かとも思ったけど、その声には聞き覚えがあったし、レンが魔法少年に変身する際に使ったアイテムに酷似していた。
『ずっとだんまり決め込んでカケルきゅんのお尻マシュマロを堪能しておきたかったそうはいかなかったみたいだねー』
「──……
『んー違うよー。私は妖精アララ。カケル君を魔法少年にするため妖精の国からやってきためろん。そのうちマスコット版とか登場しちゃうかもー。可愛がってね。きゃ』
この意味わからなさ、アイツだ。
間違いない。
「──っ、お前はなんだ? いや、変身アイテムは
体勢を立て直したマンマリーが防犯ブザーを睨みつける。
『なに疑問持ってひとりで解消してんだよ。自家発電して気持ちよくなってんじゃねぇよザコが』
「……典型的な
マンマリーが怪人態、
握りつぶそうと手を伸ばすが防犯ブザーは避ける。
そして僕の目の前に。
『カケル君。強くなりたいっていったよね? なら私を使って。お姉さんからぶら下がってる紐を引っ張るの。ぬぽんと。勢いよくね、ほら、ぐっと』
なんか息遣い荒いなコイツ。
すっっっごくイヤだ。
──でも僕もレンみたく魔法少年になれるなら。
いや、コイツは僕の友達を皆奪っていった怪人だ。
ただ自分の欲望の為に生き抜いた。
そんな奴の力を借りるなんてゼッタイにイヤだ。
『マコトさんの隣にいたいんでしょー? だったら
両手は縛られているから使えなかった。
だから防犯ブザーの紐を噛み、ひっこぬく。
防犯ブザーから放送出来ないような声が鳴る。
僕を縛る縄が切れ、身体が光り出す。
赤い輝き。
服を着ていたはずだが身体のラインがしっかり分かる光。
〝ぽむっぽむっ〟という交換音と共に装飾が増えていく。
靴から始まり、ソックス、スカート、ドレス、エプロン、メイドブリムと。
それから武器としてチェンソー。
いつも使っているものに蜘蛛みたいな装飾がある。
魔法少年衣装というよりもメイド服だった。
ふりふりで、下半身がすーすーする。
『きたきたきたきた! ついにカケルきゅんにメイド服を着させることが叶いましたー。ふーん、えっちじゃん。ご奉仕してしてー。たまらんのです』
このチェンソーはどこから?
『私がごっくんしておいたよ』
「魔法少年になったからといってなにも変わりはしない。レン君のように魔法少年は
『誰にもの言ってんだ。
〝魔法少年は
なら僕の能力は【支配】。
──でもどうしてだろう。
変身してから身体が重い。
糸に全身引っ張られているような。
「……カケル君、可哀想に。君は適正者ではなかった。変身アイテムに操られてしまうようでは」
『あはは、もうこのSSRランクショタは私の物。話すのも、動くのも、よがるのだって私が操作できる。支配するのってキモチイイ。エクスタシー感じちゃってる私』
ああ、そういうことか。
体中に糸が張り巡らされているような感覚。
まるで
しかし焦りはない。
赤の魔法少年、つまり【支配】は僕の能力になったんだから。
この糸は僕が自由に操れるはずなんだ。
深呼吸をひとつ。
『え、なんで』
この身体は僕だけのものだ。
誰の好きにもさせてはやらない。
「お前は僕の所有物だ。命令には従え」
『……はい。
チェンソーのエンジンをかける。
爆音、重圧、この場を支配しているような高揚感。
脳内になにかよくないものがどばっと出たような気がする。
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