5.ドタバタ!先行き不安な逃走劇
思っていた旅とは違う。
大抵ゾンビものの鉄則と言えば見付らないように道を選び進んでいくものじゃないのか。
だって言うのに道は植物が伸びきって足場が悪く、ちょっとでも道をそれれば肉食動物が襲ってきそうな深い森。
そして相変わらず真後ろでは
少しでも止まろうものなら、骨になるまで食い荒らされる。
先に食べられるのは僕の方かな。身長高い分、お肉が付いているし。
「グギャァァァアアアッ!!」
とびっきり足の速い
ライオンはゾンビ肉は食えないと言わんばかりに頭を噛みちぎり、ぽいと捨てた。
「守ってくれた、ってわけじゃなさそうですね」
「骨が剥き出しだ。お腹が減って、必死なんだろうね」
それから標的を変えて走り出すライオン。
すぐに僕たちが乗っているバイクと
「ガルルル……」
「なに考えてるか分からないけど、やめて。僕たち食べても美味しくないから」
「そーですか?
「お前、ちょっとは空気読めって!! ──うわっ!?」
ライオンがバイクに突進してくる。
車体が斜めに傾く。
なんとかバランスと整えるけどすぐに次の突進。
「元凶ッ! この状況なんとかしてよ!!」
「ゲンキョウってボクのことですか?」
「他に誰がいるのさ。僕だけだったらこんなパニック映画みたいな状況になってない。全部、お前が目立ちたがり屋なせいじゃないか!」
「ゾンビやライオンに追われている程度でキャンキャンと。ほら大きな猫ちゃん、これあげるからボクたちを見逃してくださいね」
レンがポッケから出したのは〝干し肉〟。
それを茂みに放り投げるとライオンは僕たちに興味を無くして去っていく。
「……まだ残ってる?」
「
「な、なにしてくれたんだ! 貴重なお肉を~……食べたかった」
口を膨らせる。
「餌にならなかったんですから、感謝してくださいよ」
「最近野菜しか食べられてないんだぞ。マコトが狩りに行くって言ってたのに連れて帰って来たのは
「知りませんよ。そんな事より、このバイクのガソリンはどれくらい持つんでしょう? 今のところゾンビとの距離は縮まってないですけど止まったら速攻アウトですよ」
「アナンが言うには太陽エネルギーで動いてるんだって。日の下で1時間置いておけば4時間は走るらしい」
抜け出してきたわけで、現在深夜である。
太陽エネルギーは補充されない為、貯めこんでいたエネルギーが肝になるわけだが……つい数時間前までマコトとレンを乗せて走らせていたから。
「でも残り持って、数十分」
「なんで充電してから出発しなかったんですか」
「時間がなかったからに決まってるじゃん。それに僕はゾンビのいない道を選ぼうと」
「はいはい、どうせボクのせいですよーだ。仕方ないから責任取って、ゾンビ退治してあげましょう」
レンは後部座席で立ち上がる。
「危ないだろ! 座りなって」
注意しようと視線を後ろに向けたらレンのスカートが風邪でめくれた。
目に映ったのはストッキングとその境界線の肉のふくらみ、そして水色の
なんでコイツ、オトコノコなのにジョシパンツ履いてんの……???
一瞬、頭の中が真っ白になった。
道の岩を踏みがったんと車体が飛んで我に返った僕はハンドルを強く握って前に集中した。
弓を力いっぱい引く音が微かに聞こえた。
そして放たれ見事に命中したのかレンが「ふん」と生意気な吐息を漏らす。
「弓矢なんて持ってきてたっけ?」
「凄いんですよ、一回変身したらなんか弓矢も変身後アイテムってことにされちゃって、普段持ちする必要がなくなりました」
「ちょっとなに言ってるのか分からない。矢の数は大丈夫そう?」
「はい。なんか減らないんですよね。すごい便利です」
後ろが気になり過ぎてバイクのミラーを覗くけどちょうど映らない位置にいるのかレンの様子が確認出来ない。
「とりあえず後ろのゾンビは全部
そんなの無理だろ。
とも思ったが後ろではゾンビの言葉にならない断末魔が連鎖していた。
……もしかしてレンってすごいやつ?
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