1.捜索!消えたスーツアクター
「アナン! なんでこんな変な奴を連れてきたのさ!?」
勢いよく2階奥の部屋の扉を開ける。
薄暗く、散らかっている部屋を進んでいくと沢山の
痩せ型で、どんなに寝なければこれだけ目のくまが濃くなるのか。
髪は紫の短髪。そしてたくさんのピアス。
こういった服装を〝病み系〟と言うらしい。
彼女の名前は
この温泉宿を営んでいた家族のひとりであり、部屋に飾ってあるポスターでも分かるように〝おにショタ〟というジャンルをこよなく愛する
「大声でずっと知らせてたっすよぉ。でもカケル君、貸した『
「うるさい。隣の部屋なんだから言いにくれば良いじゃんか」
「ここから動けないんすよ? この小さな箱が私の行動範囲っす」
また変な設定増やして。
言っておくけど、普通にこの部屋から出られる。
元々、宿泊施設だっただけにトイレやシャワー室が備え付けられているから食事以外はここで済ませることは可能だけど。
「くっさぁ。……なんか臭くないですか?」
敬語だけどほんと容赦ないな、こいつ。
鼻をつまんで、片手をぱたぱたとさせるレン。
確かににおうが僕はもう慣れてしまったようであまり感じない。
においの元は聞かなくても知っている。
「くふっ。メスガキセリフとかじゃない純粋な非難、効くぅ」
ゲーミングチェアから崩れ落ちそうになるアナンだったがなんとか耐える。
「仕方ないじゃないっすか。元々風呂嫌いってのもあるっすけど、マコトさんとの通信が切れてから急いで〝カ●ダバイク〟を作って、今の今までバイクを遠隔操作してレン君をここまで無事に連れて来たんすからー」
なんか僕の苗字が自主規制された気がする。
「おつかれさま」
「カケル君は天使っすね」
「どうでもいいんですけど、まーちゃんはどこに行ったわけ?」
「それがドローン数機で追ったんすけど、見失って。あの人、やっぱ化物っす。青いハリネズミと競争しても余裕で勝てちゃうんじゃないっすかね」
見失った。
ドローンでも追えない速さでどこに向かったのか。
「レンの話によると鳥を追いかけて行ったらしいけど、超人マコトよりその鳥を追えばよかったんじゃないの」
「その鳥、かなり頭いいのか。ドローンに気付いてて低空したり
「じゃあ、マコトを最後に確認出来た位置とかは分かる?」
「ドローンはそのまま待機させてるっすから、8番から10番の位置を見て欲しいっす」
1番から7番とメモが貼られた
8番からは森の上で空中待機しているドローンからの映像。
「確かにここまで森が深いと見失うのも分かりますね。中に入ろうにも枝が多いからドローンでは難しそうです」
「理解してくれて幸いっす」
「アナン、9番の映像」
「ん? なんすか」
「このあたりだけ木が違う。他は
ふたりから不思議そうな顔を向けられた。
ここの書庫を暇だからと漁っていたら、かじった程度の知識は備わったのだ。
「じゃ、試しにこの辺りを捜索……枝が多いっすねぇ。でも私の操作スキルなら──ほら、この通り。マコトさんを追ってなければ楽ちんなんすよ」
「小屋があるだけですね」
「昔この辺りに誰か住んでただけかな。ぼろいし」
この小屋を作る為に切った木の分、新しいものを植えただけだろう。
ゾンビ世界になってから植物の成長はたくましいものだから、単に異常に大きくなっただけなのかもしれない。
『おや、ドローン。こんな世界になってハイテクを扱える人間がいたとは驚きだ』
静かに囁くような声。
綺麗なのにその声を聞いた瞬間に背筋がぞっとした。
ドローンが落とされる。
9番の
「見ましたか? いまの」
「うん。映像は荒れてたし、一瞬だったけど……あれは確かに」
「はい、やめやめ! なにも見てないっす。考えてもいけないっすよ。ショタ共は温泉入って、ご飯食べて、早く寝るっす。これからここはお姉さんのオトナの時間(秘)ゾーンになるっすから入っちゃダメっすよー」
僕たちは部屋から追い出された。
あの慌てよう、アナンも確信しているのだ。
あれは間違いなく──ショタコンゾンビの怪人【
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