エピロ-グ
まさに〝魔王城〟というのが適切だった。
景色に溶け込んでいないから異世界的で、
門には白い石像の雄牛が置かれていた。
その城に忍び込んだひとりの
白い短髪。
緑の和服を着ている。
「やはり、ここは悪の巣窟。あの白い雄牛の
『ショタの売り買い、歳を取ってしまったら子供を作る為に利用する。永遠にショタに困らない
和服ショタが首にぶら下げている緑色の防犯ブザーから声がする。
その声はとても渋く、威厳のあるものだ。
言っていることは残念そのものだが。
「これを悪と呼ばず、なんと言うのじゃ。無垢なる者をまるで物かのように扱い、消費し続けておる。
『これ、ショウちゃん。いくらジジィだからって見た目が超絶プリティなショタである君が『
「
ショウと呼ばれた
しかも軽く還暦越えとはこれ如何に。
「幼馴染で親友が〝
「相変わらず、なにを言っておるのか分からん」
この防犯ブザーの変態性は今に始まった事ではないし、『信頼を勝ち得たショタ』にしか欲情しないため基本的には無害である。
その為、ショウは魔王城に意識を集中出来る。
買うために必要なものはお金ではない、そもそもゾンビウイルス以降お金に価値なんてない。
それを取り仕切っているのが、オークション会場の中心で趣味の悪い王座に腰掛けた白い雄牛の
「この場で成敗してやらねば」
『なにをおっしゃる! あの
「正義の為に死ぬならば、それは
『それは正義ではない、救えない善意は愚者の行いですぞ。君のようなえっち展開可能の
相変わらず防犯ブザーの言葉を理解するのは難しいが、今回ばかりは正しかった。
あの群れに飛び込めば、間違いなく命はない。
腕っぷしには自信があるが、それは対人間だ。
ここは、引くしかないのか。
ショウはオークション会場を眺める。
自分が救う事の出来なかったショタたちの顔を忘れない為に。
「そこでなにをしている?」
「──っ!?」
見つかった。
完全に息を殺し、存在を悟られないようにしていたのに。
振り返る。
黒いショタ。
全身黒コーデ、黒髪、紫色の瞳がこちらを睨む。
「
「逃げるべきはぬしじゃ。ほれ、手を取れ」
ショウが黒いショタに近づく。
このショタもオークションに出される、連れ出さなければ。
〝スンスン〟。
数歩近づくと黒いショタの鼻がピクピクと動いた。
それから相手は眉間にしわを寄せ。
ポッケから黒い──防犯ブザーを取り出し紐を抜いた。
(──こやつ、魔法少年か!?)
服装がなんともいかがわしいものに変わり、突然と現れた
「なんでお前から、スーツアクターさんの匂いがする? しかもかなり濃い」
「な、なにを言っておるんじゃ」
こんな世界になってから話の通じない者が多すぎる。
相手の激昂具合を見て会話の余地はないと悟ったショウはすぐさま走り出した。
「逃がすかよ」
走ったはずだ。
槍が届かないほどの距離まで、しかし黒いショタが槍を振るうと時計のエフェクトのような斬撃が現れ──気が付いたら、目の前に戻っていた。
「スーツアクターさんには俺だけいれば良い」
──やられる!
『そうはいきませんぞ!!』
「頼むのじゃ、
ショウも緑色の防犯ブザーの紐を引く。
木の葉が巻い、風が吹いた。
まぶたを強く閉じ、呼吸を整える。
心音が落ち着くとそっとまぶたを開く。
場所はどこかの森の中。
見渡しても周りにあの魔王城はない。
『逃げれましたな。一時はどうなることかと──ショウ君!?』
「無念。一撃食らってしまったのじゃ」
ショウの脇腹から血が流れる。
和服ににじんでいく。
呼吸が荒れ、立つ力も失って木にもたれかかった。
『ああ!、こんな時どうしたら。肉体があれば介抱出来たものの! ワンチャン弱ったショウ君を好き勝手出来たものの!!』
ショウは震える手で親指と人差し指を口に咥え。
ぴゅーっと口笛を吹いた。
どこからともなく
右腕にとまった。
「ラルゲユ。
『いやいや、その前に冷たくなっちゃうでしょうに!』
「大丈夫じゃ。奴なら風にでも乗って来てくれるじゃろう。頼んだぞ」
ショウは小さく微笑み、腕を振った。
小さくなっていく
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