16.絶体絶命!託されたのは…防犯ブザー!?
満足そうな微笑みを浮かべて
とっさにレンの目を
気付いてはいないかもしれないが、これはレンに見せるべきではない光景だから。
……いや、薄々ながら
「はあ。二度もアンタを殺すことになるとはね」
「彼──彼女とは、友達だったんじゃないのか?」
「ヒーローの鎧で正体を隠してる大きな子供には分からないでしょうけど、友情には色んな形があるのよ。それに私は友人を手にかけたことで一段階上の〝悪〟になれたわ。悪役はヒーローの大切な物を奪うことで、ヒーローの特別になれるの。私はアンタの特別になれた? ……なによ、その
俺へ向けた言葉じゃない。
ほぼ全身が石化した俺は眼中になく、レンに向けられている。
「まさか、自分の正体を言わずに逝ったのかしら。あの男ババァ。でもそうよね、あんな醜い姿になってまで生きているなんて恥だったでしょう。愛しいアンタの記憶には美しいままで残りたかったんじゃない? まあ、元から醜かったってのは置いておくとして。──なら、私からネタバレ。あの
「それ以上、口を開くな」
石化して動きが鈍くなった足で飛び跳ね、唯一残っている左腕を振る。
しかし今の俺の攻撃は簡単に受け止められてしまう。
「いい加減ジャマなのよ」
「──がっ!?」
右腕の蛇たちが巻き付き、思いっきり地面に叩きつけられた。
「なんで砕けないわけ? ……当分は動けないでしょうから、そこで大人しく見ていなさいな。アンタが守ろうとしたショタが石に変わっていく姿を」
「レンの命を奪うのが、目的なのか」
「私の〝石化の目〟は殺す為の物じゃないの。いや、確かに砕けば簡単に死ぬけど。要は捕獲や保存よ。重くはなるけど巣に持って行く時に暴れられずに済むし、逃げる心配もない。欲しくなったら石化を解いて味わえば良い」
「させる、か……」
「ヒーローごっこも
「──く! や、やめっ。ひゃっ!?」
蛇の触手がレンの身体を縛りあげる。
服の中をまさぐり、口に入り込み
抵抗するが虚しく、持ち上げられ
「石化させて持って帰る前に、ハジメテはここで散らせましょうか。保護者が見てる前でって興奮するでしょう?」
「うぅ……ぁ、お゛ッ」
次第に綺麗な肌があらわに──。
「あ、痛ッ!?」
なんというかプラスチック製品が石に当たるような音がした。
「今度はなによ。どう考えたって重要な場面じゃない!? ベ●セルク的名シーンの誕生じゃない! ──へ?」
青色の防犯ブザーが浮いていた。
市販でよく見るなんの変哲もないタイプ。
違う点と言えば中心の丸い部品にコウモリのマークが付いているくらい。
なにを言っているのか分からないと思うが、俺も目の前で起こっている事の理解が追い付いていない。
ただ確かなのは、あの防犯ブザーが
俺には分かる。
なんとなく、希望的観測なのだが、ヒーローオタクの俺には分かる。
あれは絶対、おそらく、間違いなしに。
「へ、変身アイテムだ!!」
「そんなファンタジーの産物があるわけないでしょうが!」
まるで意思を持っているかのようにそれは暴れ、敵を
「かー!ムカつく、なんなのよこれ!?」
コバエのように周りを飛ぶ。
防犯ブザーに注意がそれたことで触手に囚われていたレンの両手が自由になった。
その瞬間にレンの手に納まる防犯ブザー。
「レン! 変身だ。頭に思い浮かんだポーズをしながらその防犯ブザーの紐を引いて高々に『変身!!』と叫ぶんだ! それから後世に残るカッコいい決め台詞を」
「なんですかその恥ずかしい注文は!?」
レンも理解できていないご様子。
もうこんなのはヤケだ。
なにも起こらなくたって、やったもん勝ちである。
「~~~……へんしん」
「なにを恥ずかしがってる。 君のハジメテなんだぞ! 見てるから! 俺ちゃんと見てるから! 君の、変身っ!」
「もうっ! うるさいですね」
──力いっぱい紐を引いた。
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