15.可愛いと美しいは共存できない
突如として現れた美女は金色の長髪をふわっと持ち上げる。
ラベンダーの香りがした。
胸周りは色っぽい事に変わりないのだけど……。
──遅れて気が付く、〝男性〟である。
美青年、病み娘から教えてもらった知識で表現するのなら『メスお兄さん』なのだろう。(意味は未だによく分かってはいないけど)
「私も自己紹介しておこうかしら。
「ほんと、自覚している奴は駄目だ。どうして私の周りはそんなのばかりなのか」
力尽きて地面に伏していた
「それで、答えを聞かせてくれる? 私の可愛い
メスお兄さんは30
視線の先はレン。
弓矢を構え、いつでも撃てるようにしている。
「
レンの口が動いた。
「ちょっと大声で話すかこっちに来なさいよ! なにを言っているのか聞こえないじゃない」
「俺は聞こえるが?」
「私も」
「聴力化物じゃない!
どうやら聞こえないのはメスお兄さんだけである。
確かに全身を覆っている
「わかった、じゃあアンタ等が通訳しなさい」
「聞こえるが、あっちに声を届かせるのはどうするんだ?」
「それは私がしよう、声の波を変えれば届くであろう」
「なんで会話するだけでこんな面倒なことしなくちゃいけないのよ」
「君が危険人物なのが悪い」
俺がレンの声を聞き、メスお兄さんに伝える。
そして
「まずは利点を言うと。私みたいな美の結晶といればいつでも目の保養になるじゃない?」
「
「それに色んな
「
「もうっ、わがままな娘。分かったわ。週に一度くらいなら
「
レンの目に籠る殺意。
弓をこれ以上ないくらいにしならせ、引く。
「
ちょっと、レンちゃん?
言葉が過激すぎるって。
放たれた矢、メスお兄さん──
しかし、頬をかすっただけだった。
血が輪郭をそって流れていく。
「私の、美しい顔に、傷を」
まずい、これはまずい。
すぐさま俺は走り出す。
殴っても止めなくてはいけない。
でなければこいつはレンの命を奪う。
ショタコンとか以前に自分の顔を傷付けた者を許さない。
「邪魔よッ!!」
瞳が光る。
──油断した。
【人間態】でも〝石化の目〟を使えるのかよ。
俺の両足が徐々に石へと変わっていく。
その石化は腰で止まったがもう、動けそうにない。
動くのは胴、左腕、顔首のみ。
「約束したじゃないか! レンの答えを聞いたら文句ひとつ言わず帰ると」
「ほんっと、おバカね。『私の良心』に誓ったのよ。そんなものあるわけないでしょう」
「良心のない人間なんているもんか!」
「私たち
相手は俺を置いて全速力で走り出す。
【人間態】から【怪人態】へ再び変わり、レンに向かって。
──俺が怪人の良心を信じたせいで、レンが死ぬ。
──俺の安っぽい正義感が、レンを殺す。
そんなのは許されない。
守ると誓ったのなら、死ぬ気で守れ。
「動けよ俺の脚! レンが危険なんだぞ!? こんな大事な時に動けなくてどうするんだ!!」
しかし、びくともしない。
どうにかしてレンだけでも逃げてくれ。
しかし、当の本人は
相当の恨みがあるのだろう。
逃げるという選択肢はない。
「……やめろ」
奴等は、
信用に値しない悪だった。
それでも信じようとした俺への罰か。
「
叱咤を受けた。
透明化はしていない、してしまったら
胸が熱くなった。
昔憧れた存在と
石化させられた程度で、なに弱気になっているんだ。
石が割れる音がした。
「
砕けても構わない。
石の両足で走り出す。
ここでレンを守れず砕ける脚なら、そんなのはいらない。
「なんで石化した足で走れんのよ!? 化物はアンタじゃない」
「マ、マコトさん!?」
「──それでこそ」
もう痛みで倒れてしまいそうだが、なんとかしてレンの元に駆け寄り左腕に抱きかかえる。
「ありがとう。心が折れかけていたけど君のおかげで──」
「約束を憶えているか?」
「……ああ、忘れるはずもない」
「籍入れてもらうワ」
「そっちは約束出来ないよ。本人が決めることだ」
そうして最後に残った顔すら石に変わる。
──悲しむ暇もなく蛇の尻尾によってその誇り高い石像は砕かれた。
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