14.そのおぞましき皮の下には麗しの
横に、透明で姿は確認出来ないが
「だから無駄だと言ってるでしょうがッ!!」
相手は長い尻尾のような下半身を鞭のように扱い、俺の真横に叩きつける。
「見えているというのは、〝ブラフ〟だったようだな!」
外したようだ。
避けたわけではない、確かに外した。
蛇にはピット器官という赤外線受容器官が備わっている。
しかし、目と鼻の間にあるそれの能力はせいぜい50m《センチメートル》先そこらだった気がする。
十数
「次はこちらの番だ」
透明化した状態で
吸われた所が変色していく。
ゾンビウイルスかなにかだろう、とりあえず身体に悪い物なのは間違いなく、
「汚ねぇ唾液を付けんな! 狂犬病になったらどうしてくれんのよ!?」
「もうすでに頭の病気は手遅れだろうが──ぐっ!」
相手が尻尾を振り回したことによって俺たちは吹き飛ばされた。
鏡にぶつかり、透明化が解けた。
それを相手は見過ごさず尻尾を
「本当に
「……笑えるな。本当に、私は友人だと思っていたんだが」
「今でも友人よ。ひとりぼっちだと思っていた私にとって大学時代のアンタとの友情は心地が良かった。だからあのショタを共有しようと申し出たのに、アンタは断った。裏切ったのはアンタが先よ。自分だけ普通の人間になったような面して、その姿を見なさいよ。どうあがいたって私たちの根っこは変えようがない」
グググッと首の巻き付きが強くなっていく。
次第に
「思い出に浸っているところ悪いけど、彼を放してもらおうか」
いないものとされていた俺は静かに
首を掴む。
少しでも抵抗したら意識を飛ばせるように。
「い、いくらアンタが眼中になかったからって肩車するまで私がこの鉄の塊に気が付かなかったって言うの!?」
人を『鉄の塊』と表現するのはどうかと思う。
【
そうでなきゃ困る、ただでさえ
「俺もそれなりに
「そんな訓練受けてる奴は普通じゃないわ! アンタ何者よ!?」
「出会ったときに自己紹介は済ませている。
「いや、はじめて名前聞いたけど」
「……あれ?」
あー……、確かに。
『
「さっさと降りなさいよ!」
振り落とそうと身体を全力で揺らしだす。
絶対に落ちたりするもんか。
抵抗する毎に首への左腕ロックを強くしていく。
「わ、分かったわ。放す! 放せば良いんでしょ!? ──はい、放した。さっさと降りなさいよ」
しかしかなり消耗してしまったようで、地面に倒れこんだ。
……息はしている。
「そして、このまま何事もなかったように立ち去ってくれないか。レンの事は諦めて、戦う必要なんてないじゃないか」
「なに注文増やしてくれてんのよ!!」
「でなければ、君の首を抜く。大根のように。すっぽりと」
もちろん冗談だ。
そんな怖い事はしない。
「……それがヒーローのやることかしら」
「俺は正義の味方じゃない。レンの味方だからな」
それから両手を挙げた。
「降参。なんかアンタ、戦いだと常識通用しない気がするし。──話し合いはどうかしら」
「話し合い?」
そんな必要はない。
どんな条件を出されてもレンを渡すつもりはないのだから。
正直、無意味だ。
「そう。本人に決めてもらうのよ。アンタたちと一緒にいるか。私の物になるか」
「その答えを聞いたら、文句ひとつ言わず帰ってくれるんだな」
「ええ、私の良心に誓うわ」
「分かった」
俺がそう言うと
後ろに飛んで距離を取った。
尻尾も入れたらかなりの大きさがあった怪人が徐々に小さくなっていく。
これはあれだ! 【人間態】への
思ってたよりグネグネ動いて気持ち悪いぞ。
「ふう。久々にこの姿に戻った。あら、指一本蛇のままだわ」
「──な」
現れたのは〝美女〟だった。
脚は細長く、モデル体型、長い金髪、蛇柄の革ジャン。
違和感と言えば、パツパツの黒い皮ズボンの大事なところが不思議と膨らんでいるような気がする。
ただ、紛れもなく〝美女〟だった。
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