11.あらすじはどこか思い出と似ていた

 前回までのあらすじ。


 巨大なイノシシに突進され吹き飛ばされた俺は、ゾンビたちの大集合を目撃した。

 そいつらの標的はショタ──のはずなのだが、出会ったのは全身青色のセーラー服な小悪魔系少女(?)であった。

 名前は〝レン〟。


 レンを狙うゾンビの上位種歪曲者パバードはタイプ〝ヘビ〟。

 見た物を石化してしまうという恐ろしい能力の持ち主である。

 右腕を石化させられ、追い詰められた俺はレンと一緒に逃げることを決意した。


 勝つ方法を模索もさくしているとレンがもう一体の歪曲者パバードの存在を思い出す。

 『バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!』の精神である。


 そうして見つけ出した歪曲者パバードはタイプ〝蝙蝠コウモリ〟。

 〝鏡〟に映る位置にいる限り透明化出来るという能力の持ち主。

 彼(人間態は確認していないから性別は確実ではないけど)は他の歪曲者パバードとは違い、ショタへの歪んだ欲望を自制出来ているように思う。


 そんな蝙蝠コウモリ歪曲者パバードだが、出会い頭に自分の事を『吸血鬼』と表現した。

 吸血鬼と言えば【ドラキュラ伯爵】ではないだろうか。

 名前の由来は『〝ドラゴン〟の息子』。


 〝ドラゴン〟〝蝙蝠コウモリ〟〝ヘビ〟〝ミラー〟。

 ──この話の流れはもはや。


「戦わなければ、生き残れない。てか」


「急になに言ってるんですか?」


「俺の戦闘服ヒーロースーツは『黒鉄くろがねオックスマン』だ。言わずともモデルは〝牛〟。──ハッ! 今すぐ緑色に塗装した方が良いんだろうか?」


「ほんと分かりません。日本語話してください。それか黙っていてください」


 寝起きで機嫌が悪いのかレンの冷ややかな視線が突き刺さる。


 いやでも、こじつけにしてもすごい偶然じゃないか?


 専用武器も銃系に変えるべきでは──いや、それだけはダメだ。

 俺のヒーロー像は拳で戦うものだし、観ていて燃えるのは剣や銃じゃなくて殴り合い。

 ラスボス怪人とは雪山での殴り合いで勝敗を決したいものである。


「まあ、やっぱりフィクションと現実は違うってわけで。怪人を倒して契約したら変身アイテムになるとかはないんだよなぁ」


「あるわけないじゃないですか、アニメじゃあるまいし。それに、怪人と契約自体可愛くないですよ。もっと、こう。妖精みたいなぬいぐるみさんみたいな生き物と契約してとか」


「魔法少女は大変だぞ。応援するけど」


「な、なりたいとは言ってませんよ。どっちかというとですっ!」


「でも確かに、レンは仮面ヒーローって言うより魔法少女の方が似合ってるな。うん、可愛いと思う」


「──~~~っ! まあ、可愛いですからボクっ。それを分かっているマコトさんは偉いです。褒めてあげます。よしよーし」


「そりゃどうも」


 背伸びしているから頭を下ろすとなでなでされた。


「あまり甘やかすでない。その手の類は、甘やかすと『可愛い』って1日に3回以上言ってないだけでヘソを曲げ始めるぞ」


「げっ、出ましたね。ブスの怪人」


 蝙蝠コウモリ歪曲者パバード


「誰がブスの怪人だ。少しは見た目だけは良いようだが老いれば化物こっちの仲間入りだ。すぐだぞ。日々の手入れをおこたれば明日にでも現実になる」


「ざんねんでした~! ボクの可愛さに消費期限はございません。可愛いの無限増幅系ヒロインなのでご心配なく。明日のボクは今日のボクより可愛いんです。ね、マコトさん」


「うん。(ちょいウザ)可愛い」


「にょほほほ。ざまぁ~。多数決でこっちの勝ち。ざぁこ」


「マコト。そういうところ本当に良くないと思うのだが」


「……?」


 呆れた視線を蝙蝠コウモリ歪曲者パバードから向けられた。

 聞かれたことを正直に答えただけなのに……。


 それにしてもふたりバチバチである。

 論争は白熱していく。


「もう相手してられん。これでも喰って静かにしていろ」


 蝙蝠コウモリ歪曲者パバードはぽいっと赤い塊をこちらに投げる。

 ──生肉だ。


「これは?」


仔羊のラム肉だ。勝手に調理してふたりで分けろ。私は洞窟の奥でひとりで食事する。絶対に覗くなよ」


仔羊のラム肉はクセが強い。臭いを消すためにニンニクが欲しいけど、あるかな?」


「そんな便利な物はない。私が調理するように見えるか? 調味料は自分で調達してこい。言ったはずだ、甘やかさないと」


「あ、そうか。吸血鬼だもんな。ニンニクはダメか」


「あれは、言葉のあやだぞ。ニンニクも陽の光、もちろん十字架では死なん」


「そうか」


「ああ、そうだ」


「そうなのか」


「……なぜ、がっかりしている」


 どうやら『〝ドラゴン〟の息子』というこじつけは出来なくなってしまった。

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