10.誰も寝てはならぬ
レンは大きな鏡を見付けると必ずといっていいくらい立ち止まり、自分の可愛さに見惚れている。
その行動に呆れたのか
「置いていくぞ」
「どうぞ、ご勝手に」
「この辺にもゾンビは出る。しかも夜は
「下級ゾンビくらいボクひとりで倒せますのでご心配なく」
「そんなに矢を持ってないだろ。変な意地張ってないで行くぞ」
「ふぎゃ!?」
鏡にデレデレしているレンを左腕で抱きかかえる。
ジタバタと暴れるががっしり固定したため落ちる心配はない。
君が可愛いのはよく分かった。
そんなに確認しなくても衰えることはないだろう。
「その右腕の石化、
「うん。まあ、ドジったね」
「そういえばボク、石化した身体はコウモリのう●ちで治せるってなにかのアニメで見たことがあります」
「出来るとしても嫌なんだけど!!」
やはり顔は恐ろしいし、なにを考えているのか分からない。
とりあえず全力で首を振る。
「安心しろ。
「ほんとやめて。一生のトラウマになるから」
「ドーテーのマコトさんには早すぎるプレイですね」
「早い遅いじゃないと思うぞ」
いたずらっ子のようににやにやするレン。
他人事と思って、随分なまいきである。
「マコト。それはお前の本名で良いのか」
「ん? もちろん。偽名を使う必要なんかない」
「いや、そうなんだが。全身
「確かに。俺が『藤岡 ●、』さんを名乗っても、──この世界の法がどうこう以前にそれはリスペクトじゃないな。やめておこう」
「その人をよく知らないボクでも偽名って分かりそうですからね」
「同姓同名とか」
「そんな格好して、名乗ったら愉快犯に決まってるじゃないですか」
「……ごもっとも」
俺たちの会話を眺めてなにか思ったのか
威圧感で息を飲む。
「苗字は?」
「
「──……そうか。ふふ、そうかそうか」
なにがツボにはまったのか分からないが、大笑いしだす。
俺とレンはなにが起こっているのか顔を見合わせる。
「いやぁ、すまない。お前があまりにも私の友人に似ていたものでな。正義の具現化のような馬鹿正直な男だった」
「それは褒めているのか?」
「もちろんだとも」
「なら良い。ありがとう」
先ほどまでの威圧感は薄れ、上機嫌になる
それから洞窟を指さして。
「あそこが私の根城だ。住み心地は悪いだろうが、睡眠は取れる。私が辺りを警戒しておく」
「睡眠って……お前みたいな怪人がすぐ傍にいるのに安心して眠れるわけが──ふわぁ」
「大きなあくび。綺麗な2コマ落ちだな」
「う、うるさいですよ!」
なんだか『美女と野獣』のような光景、微笑ましく思える。
もちろん相手はショタコン(悪)だけが至るゾンビの上位種
でも、確かに古い付き合いの友人のような心を許せる雰囲気がある。
お互いに未だ素顔を見せていないけども。
ヒーロー番組にだって必ず善玉怪人はいるのだ。
──レンは速攻眠りに落ちた。
寝心地なんてあったもんじゃない、岩の上で。
しかも怪人がすぐそこにいるっていうのにぐっすりすやすやと。
寝言でも分かるように夢の中ではお菓子の城で楽しく暮らしているようだ。
その横にある岩に俺も寝転ぶ。
よくよく考えたら全身
昨日はずっと走り回っていたから正直眠い。
眠いのだけど……。
「そこにいられると、気になって眠れないんだが」
天井にぶら下がって俺たちを眺めている
「夜は
「だからって天井に吊るされて俺たちを監視しなくても」
「いやなに、少し試したいことがあってな」
「う●こか!? 俺が眠っている間に自分のう●こで石化が解けるか試したいのか!!」
絶対眠るわけにはいかなくなってしまった。
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