9.まるでゴシック映画の合作
姿を見せないそれは〝
そもそも
しかもやっていることは
能力はこの鏡の墓場を見るに、【鏡に映る位置にいる限り透明化出来る】ようなものだろうか。
「誰だか知らないが、その
「──……?」
「お前はその資格があるのかな」
首を絞めつけている力が強くなる。
ありがたい事に身体が丈夫な為、首の骨も折られずなんとか意識は保っている。
ぶら下がって両足に力を入れて腕があるであろう場所に巻き付けた。
それから回転を加える。
「はにゃん!?」
相手は重心をずらされ倒れた。
首から手が外れ、自由になる。
倒れているであろう透明の敵に左腕で殴りつける。
──かすった。
避けられたという方が正確か。
「な、なかなか。ただの人間がそこまで動けるとは驚き──」
落ちている石を数個広い上げ、デコピンの容量で飛ばす。
標的は見えない敵ではなく、そいつがいるであろう場所を映せる鏡。
石が当たるとパリンッと綺麗な音を立てて破裂する。
予想は当たった。
次第に姿が見えてくる。
見た目の恐ろしさだけで言えばモンスターパニック映画の看板怪人になれる。
顔はコウモリが逆さまになったような、羽が角のように見える。
への字の口、ぎょろっとした目。
身体はかなりやせ細っていて、骨が浮き出している。
両肩にはコウモリを象った装甲。
手は長く、爪は鋭く、脇から手にかけてボロボロな羽。
「見たな。このおぞましい姿を……」
「個人的には好きだ。まさに悪役って見た目で痺れるね」
「──な。……はっ、変わった奴め」
俺の言葉に戸惑いを見せたが、呆れたように笑い両手をあげる。
「話を聞こう。そこの子供も矢を下ろしてもらおうか」
「イヤですね。お前みたいな化物はなにをするのか分からない。それに醜い物はキライですから」
「正しい感性だ。だがその気高さは時に自分の命を危険にさらす物だと知れ。私が気分を害して殺してしまっても文句は言えまいよ」
より強く弓の糸を引くレン。
「大丈夫だ。なにか起こる前に俺が責任をとってこの
「マコトさんは甘ちゃんです」
むすっとした顔で弓矢を下に向けた。
「それで、なんの用かな? 蛇の怪人を倒せなかったから、私だけでも倒そうとやって来たのか勇者気取りの数少ない生存者たち。甘く見られたものだな」
「違う。……違うんだけど、良ければ〝人間態〟でお話したい。レンが怖がってしまって話に集中出来ないから」
「こ、怖がってませんよ!」
視界が泳いで、足が震えているじゃないか。
「そうしてやりたいのは山々なんだが、出来ない。人間の形に戻る方法を知らないんだ」
「そんな相手、信用出来ませんね」
「なら私に頼ることもなかろう。諦めて消えたまえ。お前たちを追ったりはせん」
「そうですね、マコトさんなんかに倒されるような〝ざこ〟には用はありません。さようなら。行きますよ」
俺の手を取り、立ち去ろうとするレン。
しかしその手を握り返して立ち止まる。
「自制出来ているのかな?」
「なにがだ」
「レンを見ても襲わないし、そういう目で見てるとも思えない。君たち
レンの性別が分からないだけかもしれないが。
しかし蝙蝠の
「自分が可愛いって自覚している奴は駄目だ。もっとこう、無自覚に周りをむらむらさせるような、純粋無垢えっちが良い」
あ、
「とにかくそいつは駄目だ。性癖許容範囲外にもほどがある」
「は? なんでこんな化物に勝手にチェンジ宣言されてるんですか」
バチバチっと火花が飛んだ。
どうしてレンが腹を立てる必要がある、怪人に追われるより百倍マシじゃないか。
可愛いって言われなきゃ気が済まないんだろうなぁ。
「無理を承知でお願いするんだが。蛇の
「わかった。協力する」
「……そんなあっさり」
「
蝙蝠の
見返りはないと言ったが、なにかとてつもなく重い物を背負わされそう。
悪魔との契約、そんな言葉が思い浮かんだ。
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