8.透明の怪人!鏡の墓場
「下を向くなよ」
「あ、──もうっ! そんなこと言うから無意識に見ちゃったじゃないですか。早く登り切ってくださいよ」
只今、滝の真横で
もちろん命綱はない。
しかも右腕は石化。
レンは頑丈そうな木の
高所が苦手のようで甲高い悲鳴をあげていた。
滝から落ちてきた
ブラム・ストーカーの小説のように全身の血液を奪われ絶命していた。
間違いなく、【
ここを登り切ってか、または川の道筋にそいつはいる。
俺たちは今からそいつに会って、蛇の
やろうとしているのは怪獣大決戦だ。
ゴジ●かキ●グコ●グか知らないが、危険な存在には変わりないのだから。
「まずいです、これは」
後ろから微かな声が漏れた。
それと同時にレンの身体に巻きついていた木の
レンは悲鳴もあげれず目を丸めながら、空中に放り投げられた。
スカートが嵐の時の傘のようにめくれて、下着があらわになる。
水色の
気のせいか、中央にふくら──そんなのは後だ。
このまま下の湖に落下するか? ダメだ、水は深くないし衝撃が強すぎる。
──……天の助けか。
「悪い。痛みは一瞬だ」
「ピギャア!?」
鷹の身体を踏み台にし岩壁に戻る。
──しかし右腕は石化、口は仮面で塞がっているし……瞬時に判断してレンを俺の両足で
そして左手ひとつで壁を登る。
左腕をバネにして、次の岩のくぼみへ飛んだ。
「ありがとう鷹さん。この恩は決して忘れない」
「キュェェエエエ!
めちゃくちゃ睨まれた。
しかも物騒な捨て台詞を言われたような気がする。
あの鷹、中指立ててなかった?
「一命は取り留めましたけど、余計絶望的状況なんですけど。しかもさっきより安定性がない! 上に登るために飛ぶたびに足がぶらんぶらんするから生きた心地がしないのですが!?」
「もう少しだ。もう少しで、登り切る──ぞっと!」
「うわっ」
左腕に力を込めて飛ぶ、棒高跳びのような綺麗な曲線を描いて崖上に辿り着いた。
やりきった感。
感動のあまり寝そべり、太陽に向かって左拳を掲げる。
といっても日はそろそろ落ちそうだ。
「死ぬかと思いました……」
「はは、ホントにな」
「笑い事じゃないですよ! 片手で
相当怖かったのだろう、涙目で顔を踏まれる。
ストッキングの布と鉄がすれる音、微かに汗の匂いがした。
太陽が山に隠れていく、最後に刺す光がどこかに反射して俺の目に届いた。
眩しさを憶え、身体を起こす。
例えるのなら、ここは〝鏡の墓場〟。
鏡と呼ばれるものならと、統一感なく地面に刺して立たせている。
割れている物や、反射するなら同じだとガラスもある。
昨日走り回って、遠くから見えたのはここで間違いはないだろう。
「なんだここは、どうしてこんなにも鏡が」
「大変です、マコトさん!!」
「どうした!?」
また緊急事態か。
レンの声がする方へ視線を向ける。
「ボクが可愛すぎてツライ。えー、なんでこんなに可愛いわけ? もう罪じゃないですか。鏡に聞かなくてもこの世で一番可愛いのがボクって分かっちゃいます」
「……あ。うん」
自分の顔を見てにまにましている。
こんな世界になってから、鏡を見れる機会が少なかったのだろう。
可愛さを再認識しているようだ。
小さな折り畳みの鏡をスカートのポッケに入れた。
「この鏡の山は蛇の怪人対策ですかね。それとも、会いに行く怪人の〝超常的能力〟に関係しているんでしょうか」
「その両方、だな」
──────!?
突然に真後ろから声がした。
だけど、振り向いても誰もいない。
「かはっ」
「マコトさん!?」
首を絞められ、持ち上げられるように地面から足が離れる。
でもやっぱり、なにもいない。
確かに首を絞めつける手の感触はあるのに、なにも見えない。
「よく言うだろ。『吸血鬼は鏡には映らない』と」
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