4.なんか思ってた責任の取り方と違う
「仮面で顔を隠しているってことは相当見た目に自信がないんですねぇ。可哀そ。ねえねえ、ブサイクに生まれてくるってどんな気持ちですか~? ボク、可愛いから分かんなぁい。ひっく」
どうしてこうなった。
頬を赤らめたお嬢ちゃんに罵倒されながらお馬にさせられている。
しまいには頭を足でぐいぐい押されている。
「ざぁこ。ざぁこ」
「マムシってアルコール入ってたっけ!?」
「非モテのまま生きるのは可哀想すぎますから特別に、──ボクのスカートの中を見せてあげますよ?」
「ポリスメン! この娘、俺を犯罪者にしようとしてきます」
「一瞬だけ。今が貴方の人生のハイライトなのでしっかり脳内保管して下さいね。はーい、ざん──」
スカートをたくし上げようとする両手を全力で抑える。
お酒の席で淫乱モンスターに変わるタイプの人間だ。
大人になってもお酒は飲まないことをおすすめする。
「自分を大事に! スカートの中は大人になって
「もしかしてドーテーですか?」
「そ、そんなわけないだろ!」
最近の子はませているとは聞いていたが、ここまでは流石に想定していなかった。
どこからそんな知識拾ってきた。
俺の反応を確認して生意気そうな口元をへにゃっと開けて笑う。
『面白いオモチャ見付けた』と言わんばかりの顔である。
「へー、ふーん。そうなんですか。大人なのに?」
「黙秘する」
「試してみます?」
今度はスカートをちらりと上げる。
完全にからかわれている。
「残念だったな。俺の好みは悪の組織の女幹部だ。子供はお呼びじゃない」
「それはつまり露出高めのコスプレをしろと? どこまで
もうダメだ。
会話をするたびカオスに引き込まれていく。
ヘタしたら下ネタ大好き病み娘よりも厄介だぞ。
黙っていれば美少女だろうに。
「その弓矢は自分で作ったのか?」
話を変えるべく、武器に視線をやる。
俺の脳天を打ち抜こうとしたお手製の弓矢。
矢の作りは少し雑だが、弓は綺麗だ。
「一応。弓は、叔父……いや、叔母に作ってもらいました。ついこないだまでは一緒に逃げていたので。あの人、器用だったから」
……まずい。
事故を防ごうとして地雷を踏んだ。
寂しそうな顔をするものだから頭を撫でようしたがはたかれてしまった。
「ボクは家族を奪ったあの怪人を殺さないといけないんです。だからここから動くことは出来ない」
怪人。
──
ここはその復讐相手の出現場所なんだろう。
「そういう事なんでそろそろどこかに行ってください。ごちそうしてもらったのはありがたいですけど、貴方に出来ることはないです。さようなら」
「いや、だから一緒にいて君を守るってば」
「しつこいですね! スカートの中見せてあげますから消えてください」
「それご褒美ではないからな」
「はぁ? ボクこんなに可愛いんですよ。可愛いボクのスカートの中を見れるんだからなんでも言う事聞くに決まっているじゃないですか」
ない胸を突き出す。
「そもそもドーテーになにが守れるんですか?」
「──……ぐっ」
鼻で笑われてしまった。
おもに下半身を見ながら「ぷぷっ」と。
ガサッ。
落ち葉を踏む──足音を聞いた。
距離にして100メートル程先。
反射的にお嬢ちゃんを担ぎ、木の後ろに隠れた。
騒ごうとしていたため口元を手で覆う。
「……
群を作り、出口を見失ったゾンビ達のうちの1体だろう。
目的もなくのそのそと歩いている。
「ん-! んー!!」
「近くにゾンビがいる。あまり大きな声を出すなよ」
「……ん」
頷くのを確認して口元の手を外す。
お嬢ちゃんも状況を確認する。
それから弓矢を構えた。
近付いて来るのを待ち、糸を引く。
手を離すと音にもならない音を立てて矢が放たれた。
見事に
地面に倒れた。
「凄いな。この距離を当てるか」
「このくらい朝飯前です。出来ないんですか?」
「ああ。出来ない。すごい才能だ。尊敬する」
「ま、まあ。ボク天才で可愛い完璧超人なので」
自信満々な言葉だが、照れたのか顔を赤らめて目線をそらした。
「あらぁ、本当に凄いわ。流石はワタシが見込んだショタ。その生意気な顔と声がどんどん歪んでいくのを見たいわね」
背筋が凍った。
まるでネズミが大蛇に睨まれた時のような。
ふたりで声がした木の上に視線を向ける。
──まさに特撮、それも大人さえ身震いするような蛇モチーフの怪人がそこにいた。
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