2.ちょろインではないッ!
ヒーロー番組の撮影やヒーローショーでも警戒する子は確かにいた。
「スーツの下はどうせ○○さん(俳優)じゃなくておっさんなんでしょ」と、サンタクロースの正体を知っていると言わんばかりにませた態度を取られた。
でもまあ、子供というのはやはり純粋な存在で、目線を合わせて対等な関係を持とうとすれば警戒心は解けて笑いかけてくれる。
「ちょっとなに登って来てるんですか!? 拒否ってるのわかりませんかね」
「え、だって登らないと目線を合わせられないから」
「いや意味わからないこと平然と言われましても!」
木の上にいる青すぎるお嬢ちゃんは登ろうとしている俺に焦り、またしても弓矢を構える。
木にしがみついているために両手は使えない。
また眉間を目掛けて矢を放たれたら避けるしかないだろう。
「そんなカッコしてるくらいだから貴方は人助けをしたくてしょうがない
「じゃあ俺を傍に置いてくれ」
「日本語通じないんですか? バカなんですか?」
「今は困ってなくてもいつかは自分ひとりじゃ解決出来ない問題は絶対に起こる。その時、頼って欲しい。それまでは置物だとでも思っていればいいさ」
「──……なんですか、それ」
不機嫌そうな顔が余計にムスッとする。
当分はこの警戒は解けそうにないな。
木登りはやめて地面に降りる。
「そういえばこの辺りでショ──少年を見なかったか? ゾンビの集団に追われていたはずなんだ」
「さあ、知らな……さっきあっちに走っていった影を見たような、(見てないような)。ケガしていたような走り方だったので早く見つけてあげないと死んじゃうかも~?(ま、嘘ですけど)」
「そうか! ありがとう。見付けてくる。そしたらふたりまとめて安全な場所まで送るから。なにかあったら大声で助けを呼んでくれ」
良かった。
ゾンビに追われていたショタはまだ生きている
教えてくれたお嬢ちゃんに深く頭を下げてから走り出す。
もう周りは暗い。
早く見付けてあげなければ、寂しさのあまり孤独に泣いているかもしれない。
「ばいば~い。一生探しといてくださいね」
──────………………。
「どうしよう! 見付らなかった。 やはり俺には困っている人を救う才能はないのかもしれない!!」
朝まで探し回ったが全く成果はない。
心が折れかけ、うずくまる。
「──はきゃ!?」
木の上で寝ていたお嬢ちゃんはその声に驚き飛び跳ね落ちてしまう。
どう考えても俺のせいだ、急いでキャッチする。
お姫様抱っこである。
しかし全身激硬な
ヘタしたら地面に落ちるよりも痛かったかもしれない。
「すまない。驚かせてしまったな。大丈夫か?」
「はう」
なんか変な声が空気と一緒に出てきた。
痛みに我慢しているのか顔を真っ赤にさせている。
「お、下ろしてください。汚らわしい」
……け、汚らわしい。
まあ、確かにずっと少年を探し回って泥まみれだけども。
「なんで帰って来たんですか。見付らなかったなら見付けるまで探していてくださいよ。……は~ん。ボクの可愛さが恋しくなって帰って来ちゃったんですね。それなら仕方ありません。なんせボクって可愛いですから!」
可愛いってことにかなり自信があるようだ。
たしかに可愛らしい。
それを分かっているところがはなにつくが。
スカートをギリギリまでたくし上げ、生意気な笑顔で挑発してくる。
「君が心配だったってことには変わりないから、そう思ってくれて構わないぞ」
「──きゅ」
「きゅ?」
「なんでもないです。でも帰って来たからってボクが喜ぶとでも。いい加減、ジャマだってことに気付いてくれます?」
「お腹がすいたと思って」
俺も夜中走り回って腹がすいた。
──しかしマスクが取れないから食事が出来ないんだが!?
少なくともお嬢ちゃんだけでもと思い、少年探しも兼ねて食材集めをしていた。
「山菜に茸。そしてこいつら!!」
なんと6匹もいた。
その辺にあった川で下準備を済ませてあるからウナギにしか見えないかもしれない。
「なんですか、それ」
「マムシ。一緒に食べよう」
「やだやだやだやだやだやだ」
高速で首を振られた。
しかし腹が減ってはなんとやら。
「意外に口に合うかもしれないぞ」
「可愛くない物は全部キライッ!!」
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