1.青スカート!可愛いの狩人
ゾンビが場を埋め尽くしている。
群衆が協力して獲物を取ろうとしているわけではない。
この場所は木々が多く、入り組んだ迷路のよう。
その為、出て行こうにも知恵を失ったゾンビはぐるぐると徘徊してしまうのだろう。
かなりの距離を落下し、爆音ともいえる着地をしたというのに、ゾンビはやはり俺には全く興味をみせない。
こいつらゾンビはどういうわけだかショタに執着しているが、他を襲わないわけではない。(
成人した者だろうと唾液をまき散らしながら食らい付いてくる。
完全に食料として跡形もなくなる場合もあれば、運悪く食い残されればゾンビの仲間入りさせられる。
だからこうやってゾンビの横を素通りするのなんて不可能なのだ。
ゾンビ臭が付いてしまって仲間と思われているのか、そもそもまずそうと思われているのか。
「それにしても数が多いな。しかもほとんどが
その人物はちゃんと逃げられただろうか。
もうすでにこの中に──いや、少なくともここにはいない。
「
他のゾンビとは違い空腹で止まる事のない
ショタを見付けると悲鳴を上げて他のゾンビを呼び込むのだ。
だからゾンビ仲間だろうと叩き潰してショタを強奪するはずだ。
しかしここにゾンビの肉片がひとつもないところを見るに、追われていたショタが好みではなかったか、そもそも
「とりあえず俺がやることはそのショタ……少年を見つけ出して安全確保だ」
その逃走劇がいつ起こった事かは分からない。
随分と前の出来事でもう安全地帯に逃げ込んでいるかもしれない。
だったら良い。
けれど今でもひとりぼっちで逃げ続けているのなら、すぐに見付けて『大丈夫だ』と一言掛けなければ。
俺はその周辺を探し回る。
2時間ほどそれを続けて、日も落ちかけていた。
──見つからないな。
無事に逃げきってくれたと願おう。
「──────っ!?」
少しの不安を落ち着かせる為に深呼吸をしている最中、それは起こった。
無意識というか、反射的というか、とにかく俺はそれをキャッチして止めた。
──脳天目掛けて弓から放たれた矢。
手作りなのか作りは荒いものの肉体を貫く鋭さがある。
「あ、あっぶね」
「今の不意打ちの一撃に反応しますか……。やっぱり見た目も変ですし、あの怪人たちの仲間ですね。なにが目的か知らないですけどボクの前から消えてくれます?」
ちょっと感情を逆なでするハスキーな声がした。
声の先に視線を向けると、木の上で弓矢を構えている子供。
生意気そうな顔に、八重歯。
青色の短めなツインテールの髪。
青いセーラー服。
青色のロングストッキンググローブに太ももストッキング。
ところどころにハート形や星形のアクセサリーが付いている。
見るからにショタというよりロリだった。
そして青すぎて目がチカチカする。
「大丈夫だ。安心してくれ。敵じゃない、君の味方だ」
「黒い鉄っぽい物をフル装備な変人に言われても説得力がないんですけど。むしろ貴方が脅威と言っても良い」
ああ、そっか。
ヒーローマスクも取らず、素顔を晒さない奴を信用してくれなんて難しいかもしれない。
「悪い。今、マスクを──……」
「……取れないんですか?」
「うん。落下の衝撃のせいだわ」
完全に部品が引っかかってしまった。
無理に外そうとすれば首が取れるかもしれない。
「とりあえず、俺は
「変質者に名前を教えるわけないじゃないですか」
ふむ、確かに!
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