17.そんな装備で著作権は大丈夫か?
俺が『
その輝きの中に
「妹……蜘蛛の怪人は怪我をすると脱皮するみたいに鎧が外れる。と言ってもほとんどの武器はかすり傷も負わせることが出来ないほどに硬いんすけど」
(マコトって、素手でぶっ飛ばしてなかった?)
病み娘の説明を理解するよりも早く少年が耳打ちする。
その光景を見てまたしても病み娘の鼻息が荒くなりそうだったが、今はそういう場面ではないと自分を律して真面目な面持ちに変わった。
「脱皮で捨てられた鎧を回収して、私は奴を倒せる武器を作ったんす」
「回収。──この部屋から出たのか?」
「いいや。機械の操作が得意なもので、
そう言いながらパソコンのキーボードを起用に叩くと、床に転がっていたラジコンのような物が彼女の周りを飛行する。
その数4機。
どんなもんだい、といった
「それで、武器というのは?」
殴ったことがあるから、よく知っている。
ゾンビ共通の弱点『脳みその破壊』だってショットガン3発は頭に当てないと叶わないだろう。
しかし同じ硬さの武器であるなら最短に弱点の破壊に成功するだろう。
剣か槍か、それとも銃弾か。
「マコトさんの仕事着。〝
勢いよく押し入れの扉が開いた。
そこにはまさにヒーロー番組を作る為には必要不可欠な舞台衣装。
黒い雄牛がモチーフにされており黒い全身に黄色い複眼。
所々に赤い線が入っている。
名前には
その
熱く拳を握った。
「しかもS.I.Cアレンジのようなデザインの美しさ、造形技術の巧みさ」
カッコいいにもほどがある。
「ふふん。天才
「……でも著作権的に大丈夫なんだろうか?」
「著作権は親告罪の対象だから著作権所有者がいなくなったこの世界にはなんの意味もないっすよ」
「すっごい不謹慎! そもそもモラルの話じゃないのか」
「じゃあなんすか、着ないんすか?」
「着るに決まってるだろ」
こんなカッコいい
著作権で怒られた時は誠心誠意謝ろう。
「でもすごく重そう。そんなの着てマコトは動けるの? むしろ生身の方が強いと思うんだけど」
「カケル君。人の身じゃ、あの怪人を倒すことは不可能っす。デコピンひとつでお
「……」
いや、生身で行けるよね? という顔を向けられた。
どうだろう。たぶん行けるけど、
とりあえず着てみる。
撮影用のものとは違い、なんだか時代劇の甲冑のような着方。
そしてなにより、実物のものより5倍は重い。
フォームチェンジのスピード全捨てパワー重視みたいな重量。
「ふ、ふ、ふん」
とりあえず右左ストレート、アッパーは成功。
「よっと」
後方宙返りも重心のズレはあるものの成功。
「うん。戦える」
「──……」
口をあんぐり開けているふたり。
まるで今見た出来事が現実とは信じられないかのような驚き方。
「なんでそんなに軽快に動けるんすか? 私はてっきり下にいる怪人を重量で押し潰す作戦を考えていたんすけど」
「こんなカッコいい
本当に心から驚いているのだろう、鯉みたく口をパクパクさせている。
それから数度の深呼吸。
考え込み、こちらに視線を送る。
「……倒せるっすか? あの化物を」
「分からない。でも、こんな上等な物までもらったんだ。なら『
「ありがとうございます。おふたりには関係のない厄介事っすのに」
「正義の味方ならそうした。それだけで理由はある。それに少年の因縁の相手でもあるんだ、どうにかしてやらんといかんでしょ」
自分だって辛いだろうに彼女は深く頭を下げた。
少年と視線を合わせると同じ気持ちなのか、頷く。
いやぁ、それにしてもカッコいい。
鏡に映った
シリアスな場面だろうに決めポーズをしてみたり。
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