幕間 ショタコンゾンビ!いや、蜘蛛の怪人?
「呼ばれて来たよ! ぱんぱかぱーん!! …………あっれー。誰もいない」
見た目では想像出来ないほど可愛らしい声が廃墟化したコンビニで響いた。
声の主は化物の容姿をしている。
まさしく〝蜘蛛怪人〟だった。
青い八つの瞳。骨っぽい質感で、全身が禍々しい。
手と足は刃の様に鋭く、肩には手足が引きちぎられた巨大な蜘蛛が盾のように着いている。
間違いない。蜘蛛怪人だ。
誰がどう言おうとスーパーヒーロータイムの敵役だ。
そんな非日常がゾンビの群れをかき分けて鼻歌まじりのスキップしながらこのコンビニまでやってきた。
「鳴いたのどの子ー? ここらの
これまた恐ろしい容姿には似合わない手振りで周りのゾンビを呼ぶ。
……しかし誰も集まらない。
「これだから知能も死んでる下級ゾンビって使えない。吠えるか食べるかの二択って。まあ、いいわ。自分で探すから。ぷい」
入り口で倒れている鹿を避けてコンビニの中へと入っていく。
足が異形だからがカチリカチリと鳴った。
まずはお菓子コーナーに向かってチョコレートを手に取り、銀紙を破き食べる。
刃のような指で使いづらそうだが器用なものである。
「んっまぁ。ゾンビになってもお菓子が食べられるなんて幸運よねー。本当にショタコンでよかった。ポリスメンは許さずとも神はそれを良しとした。ああ、ハレルヤ」
神がどうこう言っているがこの蜘蛛怪人に信仰はたぶんない。
母親のお腹の中に置いてきた。
それは彼女の在り方が証明している。
【
世に出ていない情報で確かではないがとある科学者によると『〝ショタコン(悪)〟のみが至る超越存在』とのこと。
性癖に善悪があるかは謎だが。
「はてさて、ショタはどこかな。怖くないよー。お姉さんとキャッキャウフフな薄い本みたいな生活が待ってます。大丈夫。年齢差なんて関係ないよ。だってほら、世界なんてとっくに終わってるんだからさ!」
怖くない、わけがない。
異形の蜘蛛怪人が徘徊する姿はホラー以外の何物でもない。
幸いなことにそのコンビニは無人だった。
「……なにこれ」
バックヤードに入った瞬間に目を丸めた。
ゾンビの山が出来ていた。しかも行動不能になった。
「ショットガン? それにしては傷が綺麗だし、火薬の臭いもしない」
ゾンビウイルスに感染すると生前よりも体が頑丈になる。
確かに腐敗はしていくけれど、トラックで
即死させるためには破壊力の高い銃でヘッドショットさせるくらいだが、当然のことながらこの日本にそんなものが簡単に手に入るわけはない。
「これが超未来的SF武器の仕業じゃないのなら、間違いなく同族よねー……。あちゃあ、出遅れた。血の臭いもしないから食べるタイプの
状況から見るにコンビニに隠れていたショタを
そいつの拠点にでも連れて行かれたのだろう。
「まあ、
蜘蛛怪人は落ちている毛布を拾って鼻元に持っていく。
すんすんすん、す────────。随分と長い吸いである。
「こ、この匂いは!? あの学校で逃がしたSSRランク。ずっと追い求めてきた褐色ポニーテールのショタ君!」
感動のあまり身体と声が震え出す。
その匂いには憶えがあった。
かつて、避難所となっていた学校を襲撃した際にもっとも自分の物にしたいと思っていたショタが逃げたのだ。
どんなに嘆いたか。どんなに落胆したか。
そのショタが先程までこのコンビニにいた。
しかも
そう思うと身体は動いていた。
「すぐに助けにいくよ。待っててねー!」
異形の蜘蛛怪人は見た目通りの人外的速度で走っていく。
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