4.恐怖!ゾンビはなかまをよんだ
「起きて。マコト」
久しぶりに誰かの声を聞いて目が覚めた。
……声と言うよりも、正しくは横っ腹をぐいっと蹴られたからなのだが。
「おはよう。少年」
「カケルだってば。名前くらい憶えてよ」
やだなぁ、憶えてるに決まっているじゃないですか。
こんな可愛らしいポニーテールショタの名前を忘れるなど恐れ多い。
あくまで太鼓の音撃戦士みたいに大人らしさを出したかっただけ。
「トイレ行きたくなったな」
起き上がろうとしたら胸元を踏まれて押し戻される。
軽いから痛くはない。
「だめ」
「……電気が使えなくなったから水が流れないとか? 小だから関係ない。それに〝アレ〟が溜まってても気にしないから」
「ち、違う! ──……そうじゃなくて」
恥ずかしかったのか顔を真っ赤にして否定された。
それから我に返ったのか口を手で押さえる。
目で合図された。
少年の右手には俺を襲った時に使った充電式のチェンソー。
まるで敵が襲ってきたかのような緊張感。
「ゾンビが、侵入してる」
俺たちが眠りに着いたのはコンビニのバックヤード。
飲み物コーナーの裏。
姿勢を低くと指示されたため棚の一番下、紙パックのオレンジジュースと麦茶の間から店内を確認する。
ちょうどレジあたり、のそのそと動く人影。
──司会のお姉さん。
つまりはゾンビ‐
どうして入ってこれた?
確かにこのコンビニの鍵は壊れていて閉めてあるだけの状態だったが知能がなくなったゾンビには横開きの扉を開けることは出来ないはず。
「さっき鹿が突撃してきて入り口を壊したんだ。すっごい音だったのにマコト全然起きなかった。ゾンビの世界でよくそんなに熟睡出来るね」
「それほどでも」
「褒めてないから。寝てる大人を背負って逃げられないから次はちゃんと起きて」
「ごめんなさい。気をつけます」
自分は襲われないし、他の人と行動するのも最近は無くなっていたから気が抜けていた。
良くないな、今の俺にはこの少年がいる。
守ると誓ったのだから警戒を怠るべきではない。
入り口には血まみれに倒れた鹿と割れたガラス扉。
流石ジャングル化した日本。
鹿が拠点を襲うこともあるのか。
「でも相手は
「いや、違う。マコトはほんとなにも知らないな」
「というと?」
「
その言葉はつまり、条件が合えば
「アイツ等は言っちゃえば追跡隊なんだよ。──
「──……」
そんな役割とは知らなかった。
言われてみればゾンビウイルスが日本を終わらせてから少年を見た事がないかもしれない。
「どうしてゾンビたちは
そもそもショタってなんだよ。
どこからどこまでがショタに含まれるのか。
年齢か、それとも見た目か。
なにをもって〝ショタ〟と定義するのかまったくわからん。
こればかりはそちらに精通している変態紳士淑女たちに聞かないと。
「理由なんて知らない。でもゾンビは僕たちを探すことに躍起になっている」
「
ゾンビウイルスが
〝どうして生存した少年をほとんど見ないのか〟。
「本当に怖いのは
言葉の途中だったが俺は少年を引き寄せ、バックヤードのはじに寄る。
小山座りのような姿勢で足の間に少年を入れる。
ゾンビに黒目はない。
見えているのか、俺には確認しようもない。
視覚か、嗅覚か、聴覚か、または電波的ななにかか。
どれに引っかかって存在を悟られるのか。
「大丈夫だ。俺がついてる」
少年が恐れで震えていたから肩をさすって落ち着かせようとする。
ゾンビはペタペタとコンビニの店内を巡回する。
探している物はここにはないと諦めたのか外に出て行った。
「ぷはぁ、緊張した」
安堵した少年は立ち上がる。
緊迫した空気に疲れていたのか足がガクガクと震えていて体勢を崩す。
飲み物の商品棚に寄りかかった事により一番上の棚にあったエナジードリンクの缶が地面に落ちる。
〝カランコロン〟と音を立てて。
「気をつけろよ。よしゾンビは去ったことだし、まずは入り口を塞ごう。久々に新鮮な肉が食べられるぞ。しかも鹿肉──……」
目が合った。
相手に黒目はないが確かに、司会のお姉さんゾンビと少年の目が合った。
そしてゾンビはヒーローショーでも聞いたことないほどの大きな声で叫び始める。
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