第2話 怨霊も転生してきた
夢の中だろうか。
さっきまで俺を抱きかかえてくれた姉や母が鼻歌をうたいながら腕の中で揺らしてくれている。
これが俺の新しい家族――なんて素敵な人達なんだ。
しかし、まさかテレビから出てきた怨霊に襲われて異世界転生するとは。
神様もビックリしていたっけ。
トラックとかに
まぁ、神様にお願いして、除霊してもらったし、これからの人生は夢と希望でいっぱいだ。
それにしても、身体が重い。
たぶん毛布をかけているからだろう。
でも、何でだろう。
嫌な気配がする。
なんか、以前に感じたことがあるような気配だ。
ゆっくり眼を開けてみる。
目の前に、血のように赤い
もう一度瞼を閉じて、開けてみた。
今度は輪郭がハッキリしていて、頬まで裂けた口とサメみたいに鋭い歯がビッシリと並んだ顔が目の前にあった。
どういうことだ、神様。
俺は確かに『転生する前に見たビデオの呪いは絶対に取り除いてくれ』と懇願したはずだ。
なのに、どうして目の前にいる。
怨霊とにらめっこしていると、おでこに何か貼られているのが見えた。
目を凝らすと、小さな文字でこう書かれていた。
『ごめん、無理だった☆
神より』
あの野郎。
もしまた会う時が来たら、あのモジャモジャの髭をもぎ取ってやる。
そんな復讐を心に誓ったが、現在進行形で早くも人生の終わりを迎えそうだった。
神にも勝った怨霊は、大きな口を開けて俺を飲み込もうとしていた。
俺は誰かに助けを呼ぼうと、赤ちゃんの特性を活かして、大声で泣いた。
「
誰でもいい。
早く俺を抱きかかえて、この部屋から出してくれ。
その願いが通じたのか、ガチャリとドアが開いた。
「どうしたの?」
寝ぼけた声は、黒髪のロングヘアの女の子、モナだと分かった。
モナは姉達の中では一番年下(青髪の子は下から二番目だった)で、この時間帯はぐっすり寝ているはずなのだが、恐らくトイレに行きたくなって用を済ませた後、部屋に帰る途中で俺の泣き声を聞いて、やってきたのだろう。
そう考察していると、目の前にいた怨霊がいつの間にか消えていた。
代わりに、モナの眠たそうな顔が姿を現して、「お腹空いたの?」と抱きかかえた。
「ごめん。私じゃ、全然ミルクが出ないから、これで許してね」
モナはそう言うと、自分の指を俺の口に咥えさせられた。
幼女の指を舐める趣味を持ち合わせていないが、ご厚意を背けるような事はしたくないと思い、甘えるようにチュパチュパと音を鳴らしながらしゃぶった。
「へへへへへ! お姉ちゃんの指、おいちい?」
モナは俺の反応に嬉しいのか、ニコニコとした顔でジッと見つめてきた。
俺は彼女の人間らしい双眸と、怨霊が消えた事による安心感が重なって、眠くなってしまった。
また目を空けたら奴が姿を現さないか心配だったが、そんな気持ちも夢の中へ連れて行ってしまった。
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