●第三十六話● 人魂達を、操りし者?
「あなたたち二人で――、仲良く並んで跪いて、あたしの足の裏でもお舐めなさいな」
その肉感的な女
「……はあ⁉」
すると、岩子さんはニタリと笑った。
「ふふん。人に物を頼む時の態度としては相場だと思うけど?
やらないの? ハルは」
ぎょっとしたまま、つい晴矢が
(マ、マジかよ……)
「あの、わたし一人でどちらの足も舐めますから。
ハルちゃんは、何もしなくていいですよ」
「そういうわけにはいかないわ。
あなたたち二人に舐めてもらいたいの、あたしは」
……ぐうの音も出なかった。
というか、深羽はこの岩子さんとかいう《人類の敵》に何か訊く度にこんな変態プレイを強要されてるのだろうか。
そう訊くと、深羽はきょとんと首を傾げた。
「いいえ、今回が初めてですけど……?」
――この箱入りお嬢様め!
(……なら、もっとこの要求を疑問に思えってーの! 完全に、足下見られてんじゃねえか)
……けれど、煩悶して抵抗していた
(糞……っ。何だって《人類の敵》相手にこんな真似をせにゃならんのだ……)
そうは思ったが、晴矢は、無心になって、岩子さんの足を取った。
彼女の濡れた素足は、ちょっとひんやりとして、向こう側が透き通って見えるけど、普通に触れることができた。
紛れもない、女の柔肌だ。それも、大人の女の……。
そのまま、晴矢は、
「あぁんっ、そう、そこ……、いい感じよ……。
本当に美しい友情ね。深羽、ハル」
悩ましげに、晴矢の額の先で岩子さんが身悶えている。
油断してちょっとでも目を上げると、岩子さんのむっちりとした二つの太腿とその間が見えてしまいそうになるので、晴矢は必死に爪先だけに意識を集中させた。
……ちなみに、無味である。
それが生身じゃないからなのか、シャワーを浴びたばかりだからなのかは不明だ。
「――こんなもんで、いいんじゃないですかねえ」
爪先を持ったまま晴矢が言うと、満足した様子のビッチな女幽霊が熱い吐息を零した。
「あぁ、よかったわ……。生前、
「感想とかいいんで、早く教えてください」
「ええと……、どんな質問だったかしら?」
「〈
「ああ、そうだったわね。
……いい? よく聞きなさい。
並の
「個人の恨みつらみってことですか」
「そう」
「それじゃ、あなたの場合は……」
「あたしの話はいいの。
――あのね。人魂どもの目的は、己が胸に抱いた強い憎しみと向き合い、それを解消することよ。
だから、まわりの皆と息を合わせて頑張りましょう、なんてわけにはいかないの」
「でも、――今回はなぜかそれが可能となった」
「ふふん。あたしが思うに、その原因は二通り考えられるわ。
まず一つ目は、小物の人魂どもを従えるほどの力を持つ高位の《人類の敵》が召喚された可能性ね」
「なるほど」
昨夜の禍々しいほどの数の人魂達の暴れっぷりを考えれば、あり得ないともいえない。
とすると、いわゆる神話や伝説に現れるようなヤバい怪物が、すでにこの
そういう能力を持つ
「もう一つは、人間の口寄せ術士、死人使い、あるいはネクロマンサーの介入ね」
「は……?」
というと、その何たらとかいう、いわゆる人間の超能力者が、現実のこの世界に存在するということだろうか。ペテン師の類ではなく?
思わず、晴矢は
「人間のネクロマンサー……って、そんなの迷信でしょ。〈イン・ジ・アイ〉の技術が進化すれば、未来はどうなるか知りませんけど」
「ふふん、ジュール・ベルヌね? 人間が想像できることは、人間が必ず実現できる、と言いたいの?
……いいえ、違うわ。
あなたたち
人類の、壮大な歴史の中で」
「……」
「高位霊かネクロマンサーの干渉があったとすれば、集まった人魂どもの行動に統制が見られたのは当然よ。今桜ノ宮女学院に喚び寄せられた人魂どもは、操られているということだから」
「じゃ、高位霊かネクロマンサーを探し出して倒せば、集まってきた人魂の統制もなくなって、〈
晴矢は、深羽を見た。
深羽も強く頷き、立ち上がった。
ケタケタと笑いながら――、
「すべてはあなたたち次第というわけね――人生と一緒よ。
頑張りなさい。深羽とその騎士さん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます