●第二話● ぶち込まれた先は、全寮制お嬢様女子高
桜が、無数の桜が、満開に咲き誇っている。
都心にでんと鎮座するこの
少し目を上げれば、広大な学校敷地の中央にそびえ立つ、超高層タワーが見える。
あれは、
カグヤ・タワーが見下ろす広大な学院内には、美しい最新鋭の教室棟に、歴史ある旧校舎、女子寮、
ここは、国内でも特別な学校だ。
けれど今は――、どこか神秘的でさえある不思議なこの風景すらも、虚しさに拍車をかけるばかりだった。
「……なんだって、こんなことに……」
ため息をついて、
何度確認しても結果は同じ。
上はついていて、下はついてない。
……が、制服の下は、女装じゃない。
妹に襲われかけたあの朝のまま、――女そのものなのだ。
「今頃
いまだにこれが現実とは思えない。
低血圧のせいかぼーっとする頭で、自分と同じ制服に身を包んだ長い髪の女がぞろぞろと歩いているのを
女、女、女。
どこを見まわしてみても女だらけ。
――まさに、女の園だ。
今日から、自分はこの世間から隔離された特別な全寮制高校の生徒となったのだ。
これでは、
地獄を歩いているような気分だった。
「……クソ。今すぐ死にてえ……」
○
あの朝――急いで着替えて一階の両親の元へ走ったが、勝負は始まる前から決まっていた。
「……だから何度も言ってるだろ⁉ 俺が
さんざっぱら喚いても、両親は聞く耳持たずに、呆れた表情を浮かべるばかりだった。
「もう、まだそんなこと言ってるの?
母が熱弁すると、父がすかさず横から参戦してきた。
「そうだぞ、
「だっ、だから違うんだって! 母さん、父さん‼ 俺が
なにが起きてんのかわかんないけど、朝起きたら急に体が
「おいおい、
おまえだって、
「お、お、おまえなっ……」
唾を飛ばして
「ほら、母さん父さん、あれ! あれ見てよ、あの底意地の悪いインケンな笑い方!
あんなの、
慌てて
ムカつくが、実に
「もう、なに言ってるのよ。
「そうだぞ。少し落ち着きなさい、
母と父に続いて、
「なぁ、
俺が保証する。だから楽しめって、清浄なる乙女の園をさ」
「
「だからそれはおまえだっての。
俺は、ハ、ル、ヤ」
勝ち誇ったようにそう言って、
その胸元は、女らしい膨らみが一切なく平べったい。
「皆と別れるのは寂しいけど、あんまり家に長居してても余計辛くなるだけだから、もう行くよ。
俺の留学を応援してくれてありがとう。父さん、母さん、
「待てっ、おい、マジで待てっ‼」
「頑張ってこいよ。
「違う、これはなにかの間違いだっ‼」
「ジャンクフードばかり食べちゃダメよ。それから車に気をつけてね」
「だから、俺の話を聞いてくれぇっ‼」
「それじゃあ皆も体には気をつけて。手紙書くよ」
「やめろぉぉっ! 行くのは俺だぁぁ‼」
「それじゃ、行ってきます」
「待てええええっっ‼」
玄関を出た
「っ……⁉」
耳元で、
「――それじゃね、我が愛しの兄よ。
ボクの身代わりになるついでに、
クソダサチキンなお兄でもチャンスがごろごろ転がっていることだろう。
ま、上手くやりな」
言い終わるなり、
「ふぎゃぁっ⁉」
「グッドラック、マイツインズ~♪」
陽気な鼻歌をハミングしながら、スキップを踏んで
……。
…………。
○
……ぶち込まれた先の私立
「……童貞切れったって、こんな体でどうしろっていうんだよ。チキショウ……」
いや、こんなトコロでそんないかがわしいこと、する気はないけども。
すると、ふいに誰かが――女の子が、
「……っ!?」
ぎょっと息を呑んだ
---------------------------------------------
第二話まで読んで頂き、本当に嬉しいです!
ありがとうございます。
第三話は一週間以内に更新の予定です。
作者の趣味に走った当作品ですが、次も読んでいただけたら、とても嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます