第九章 てるてる坊主


みなさん、ご存知であろう。

今回は、てるてる坊主の……らしい話。


小学一年生の女の子が初めての遠足があるっていうんで、大変、喜んでね。


明日の遠足は、必ず晴れにして下さいって、てるてる坊主を沢山、作って軒下に下げに行った。


両手に沢山の、てるてる坊主を抱えて、軒下へ行くとね。


そこに、お母さんがぶら下がっていた。


それをじーっと見つめていた女の子がケラケラと声を上げ笑い出した。


「てるてる坊主を下げようと、紐をぶら下げていたのに、お母さんがぶら下がってるー。お母さん、てるてる坊主の真似、上手〜。」


パチパチと手を叩いて、喜んでる女の子の側に、お父さんが近付いて来た。


「何をそんなに笑っているんだい?」


女の子に近付こうとした、お父さんは、床に零れていた水で足を滑らせた。


おっとっとと、体制を立て直そうとした、お父さんの首に紐が引っかかって、グルグルと首に巻きついた。


しばらく、お父さんは、もがいていたけれど、やがて動かなくなってね。


呆然と見ていた女の子だったけれど、またケラケラと笑い声を上げた。


「お父さんも、てるてる坊主になっちゃったー。」


泣き笑いで、女の子の顔は、ぐしゃぐしゃ。



次の日は、大雨でね。遠足は、中止になったんだ。


女の子は、ぶら下がった、お母さんとお父さんの紐をハサミで切ったんだ。


「…ダメだ、この、てるてる坊主。役に立たない。」




人間がてるてる坊主の真似をしても、晴れない……らしい話。






ー第九章 てるてる坊主【完】ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る