第八章 隣人の話
近所に、お喋りな、おばさんがいましてね。
毎日のように、あの人は、どうじゃ〜、あの人の家は、ああじゃ〜と話してまして、最初の方は、笑って聞いていたんですがね、もう会う度、会う度、人の事ばかり言うものだから、次第に、うんざりしましてね。
今では、半分聞いて、半分聞き流している感じです。
今日も、買い物をしようと外に出ると、おばさんに引き止められた。
「ちょっとちょっと!大変なのよ!」
あまりにも、血相を変えて、おばさんが声を上げるものだから、つい足を止めた。
おばさんは、目を見開いて、
「さっき、お隣のドアの前を通ったら、悲鳴が聞こえてさ。」
と言う。
「夫婦喧嘩でもしてたんじゃない?」
半分、呆れ顔で言うと、おばさんは、腕を組み、こう言った。
「いや〜、あれは、ただの喧嘩じゃないよ。ほらっ、ドラマとかで刺されたら、声が出るじゃない?ウッ!!とかさ〜。そんな声だったもの〜。」
なんて事を話してたら、隣の家のドアが開いて、隣人が出て来た。
バツが悪そうに、へへへと笑って、そこを去ろうとした、おばさんを隣人が止めた。
「〇〇さん。昨日、うちの旦那が会社から貰ってきた、お菓子があるのよ。ちょっと、家に寄らない?」
「えっ?そうなの?なら、ちょっと、寄ろうかしら?」
よせばいいのに、余程、お隣の事が気になったのか、おばさんは、隣人宅へ消えて行った。
それっきりなんだよね、おばさんも、お隣の旦那さんも見なくなったのは。
隣の家に、何やら、工事があってね。
壁が古くなったから、塗り替えるなんて、隣の奥さんは言ってたけれど。
どうかしらね……。
隣人の事が気になっても、深入りしてはいけない……らしい話。
ー第八章 隣人の話【完】ー
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