3章 クソガキVTuberと炎上騒ぎ

第25話 甘梨あめだま

それでは、皆さん

今日も1日頑張っていきましょう

私も応援してますよ

いってらっしゃい


画面の中の、こと様に見送られつつ、パソコンの電源を切る


パンパンッ!


「今日も一日一善!

行っていきます!」


オレは祭壇の中央に飾ってある

 ひまちゃんのアクスタ

 ひまちゃんのサイン入りカード

 こと様のサイン入りカード

に手を合わせて気合を入れる


2人に貰った家宝は、アクリルケースにいれて埃がつかないように飾り、LEDテープでライトアップしていた


今日も素晴らしい祭壇である



「おはようございます!」


「おはよう、あっくん」


「おはよう!」


のんちゃんと課長が挨拶を返してくれる


ディメコネとのコラボが決まってから、オレたちは何度もディメコネと打合せを繰り返した


どのような形でのコラボになったか説明しよう


まず、ゲームの内容


これはマインクラフトで決定した


ある程度長い期間コラボをしても尺が稼げるゲームだし、根強い人気もある

ディメコネのVTuberも全員がゲーム経験者だし、Kanonに教えてあげる、という形をとるのがいいだろうという話になった


もちろんだが、お菓子メーカーの企業イメージを崩さない平和なゲームであることも重要なポイントだ


そして、コラボの期間だが、4ヶ月ほどの期間を設けることになった


というのも、うちの会社は動画配信、投稿ともに初心者で、いきなり配信をはじめて炎上したりするのは危険

つまり、編集した動画を投稿する形式にしたい

しかし、初心者集団だから、動画編集に時間がかかるから2週間に1度の配信ペースでやっていこうということになったからだ


コラボ動画の収録は2週間ごとに行い、合計10回に分けてやることになった


次の撮影までに動画編集をして投稿していく形になる


10回の撮影で何本の動画になるのかは、まだ未定だ

10本かもしれないし、倍の20本になるかもしれない

そのあたりは、編集しながら決めていこう、ということになった


そして、ディメコネからの技術指導だが、当初はうちの会社にディメコネの動画編集者が出張する形を考えていたのだが、人員を確保できず、

技術マニュアルの提供と、編集済み動画の監修、という形で落ち着いた

そのため、かなり費用も下げてくれた


うちとしても上層部から予算を工面する苦労が減って助かるところだが、

同時に動画のクオリティに不安が出てきた


まぁそこはオレたちの頑張りでカバーしたい


そして、今日はコラボ第一弾の撮影日だ


撮影は、うちの会社のスタジオでやることになっている


「よ、よし!

そろそろお出迎えの準備しようか!」


「課長、、ディメコネの方がくるのに、まだ30分近くあります、、」

のんちゃんが答える


「そ、そうかい!

じゃあもうちょっと待とうかな!」


課長が今朝からずっとソワソワしてる


オレも今日は今朝からワクワクだ


予定の5分前


「もういいかな!?」


「まぁ、、到着したら守衛から電話が来ますけど、落ち着かないなら先にエレベーターホールで待っててください」


のんちゃんは冷静だ


「うん!わかった!先に行ってるね!」


課長は手鏡で身だしなみをチェックしてから、そそくさと部屋を出ていった


「課長楽しそうだね」


「あれは、楽しそうなん?

あっくんもあぁなるもんなん?」


「そりゃそうだよ

すごい気持ちはわかる」


「そっかぁー、アイドルは人を狂わすなぁ」


のんちゃんと会話していると内線の電話が鳴る

ディメコネの方が正門から社内に入ったようだ

もうすぐうちの部署まで到着するだろう


オレとのんちゃんもエレベーターホールにお迎えに向かうことにした

エレベーターホールに向かうと課長がそわそわと立っていた


「課長、守衛から電話がきたので、そろそろいらっしゃいます」


「う、うん!」


オレはそれ以上声をかけられず、隣に立つ


オレにとっても今回のコラボは夢のようだが、課長にとっては今日それ以上の価値があるものになるだろう


みんなでエレベーターを見ていると上の階から、こちらに降りてくるランプが点灯し始めた

ほどなくして、扉が開いた


女性が2人おりてくる


1人は、キャリアウーマンという感じのスーツ姿の女性で

もう1人は、小柄で、この場に似つかわしくないロリータ系の服を着たツインテ少女だ



「夢味製菓の結木です!

本日はご足労ありがとうございます!

お待ちしておりました!」


「ディメンションコネクトから参りました佐々木です

甘梨あめだまのマネージャーをしております

本日は、宜しくお願い致します

、、ほら、甘梨さん」


「、、ちゅぱっ

ディメコネ所属、甘梨あめだまっす〜

よろしくおねがいしまっす」


甘梨あめだま、その人であった

ディメコネ3期生、登録者数70万人、ひまちゃんの後輩であるその人がそこにいた

その名の通り、いつもあめを舐めていることから、あめちゃん、ちゅぱちゃんなんて呼ばれている

ちなみにリスナーネームは、ちゅぱかぶら、である


そして、うちの結木課長は、熱狂的な ちゅぱかぶらだ


「お会いできて光栄です!」


課長はかなり大きく頭を下げている


「あ、今日はありがとうございます

夢味製菓の新井と」


「Kanonをやっております。鈴村です」


「それでは、スタジオの方にご案内しますので、こちらにどうぞ」


オレが2人を案内しようとするが、

課長は、頭を下げて固まっている


「、、、」


そんな課長に、あめちゃんが近づいた


「あなたが、あたしのリスナーなんすよね?」


「そ!そうです!

ずっと前から見させていただいています!」


まだ顔を上げない


「自分の推しと仕事したいからコラボ持ってくるなんて、公私混同っすよ

ダメな大人っすね」


「ちょ!甘梨!おまっ!

す、すすす、すみません!

コイツが!」


佐々木さんはすぐに、あめちゃんに近づき頭を掴んで下げさせる


「佐々木っち、やめるっす〜

いたいっす〜」


「あぁ!あめちゃんの罵り!

ご馳走様です!

もっとお願いします!」


「、、、」


「、、だから、うちのリスナーは変態しかいないから大丈夫だって言ったんすよ」


佐々木さんは何も言わなくなった


「でも、あたしもここのお菓子は好きなんで、今回のコラボは嬉しかったっす

だから、お礼にこれあげるっすよ」


あめちゃんは、ポッケからチュッパチャプスを取り出して課長に渡す


「あわわわわ」


課長は震えながら両手でそれを受け取る


「家宝にします!」


「、、キモイっす

今食べないなら没収するっす」


「はい!今食べます!」

そして、課長はチュッパチャプスをしゃぶりだす


その様子をみてから、あめちゃんがこちらにやってくる


正面に立ってジーっと見られる


「あ、あの?」


「あなたが、ひま先輩のリスナーっすか」


「そ、そうです」


「ふーん、、

お名前は?」


「新井です

新井新人(あらい あらと)と申します」


「なるほど

じゃあ、あらあらパイセンすっね」


「あらあらパイセン!?」


「そうっす

イヤっすか?」


「い、いや〜ってことはないですが?」


「なら決まりっすね

じゃあ、案内お願いします」


あめちゃんは、オレに謎のあだ名を付けてからスタジオへの案内を希望する


「こ!こひらへろうぞ!」


課長が飴を舐めながら案内を始めた


この人、今日はダメかもしれない

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